デ・キリコ展行ってきました
キリコといえば。
私の中では、高校の時の美術の教科書に載ってた、アーチのある建物の陰から走り出てくる、輪を転がす女の子のシルエットの絵と、
そのモチーフが、ルパンとその敵が追いかけっこするシーンで脈絡なく出てくる、「ルパンvs複製人間」の映画の背景描写が印象に残っています。
今回の展示ではその絵はありませんでしたが、アーチのある建造物が登場する、独特な世界観の絵を見る事ができました。
撮影はできない展示でしたので、撮れるところだけ写真を撮ってきました。
久々の東京都美術館です。春陽会がかつて、東京都美術館で開催されていた頃は、毎年上野を訪れていましたが、最近めっきり行かなくなっていましたので、懐かしいのと、駅前がきれいになっているのに驚きました。東京の街は変化が激しいです。
実は楽しそう
キリコの絵は、強い輪郭線と一方向からの強い光、均一に塗られた色面が特徴です。初期の静物画には、既にその特徴が見えました。果物の輪郭に、はっきりとした黒い線が入っています。
今回、キリコの本物の絵を見て、イラスト的な表現と思っていた彼の絵が、絵の具の照りや筆跡から、これ絵画だな、と感じた次第です。
絵の内容からくる印象から、幻覚に惑わされて一種強迫的に描いているのかと思っていたのですが、その筆あとを見ると、そんな辛そうな感じではなく、実は楽しそうに描いてる様に思えました。鉛筆のデッサンがあったのですが、モチーフを慈しむように丁寧に描いている様子が見て取れて、その印象がもっと深まりました。
形而上絵画
「形而上絵画」では、空の色は青ではなく、オレンジや緑の、夢の中のような世界。
そこに何かを象徴するような塔や建物、彫刻、マネキン、三角定規などが配置されます。でも、画面に登場するものは脈絡がなく、全てに意味が付されている訳でも無いようにも思えます。
そもそも「形而上絵画」って何だろう。
学生の頃読んだ本では、難しいその言葉を何となく流してしまっていたけれど、
今回はnoteに書くんだから、ちゃんと調べよ。と
Wikipediaを見てみました。
難しそうな語句が並んでいましたが、
簡単に言うと、「形而上」って、実存するものを超えた世界、といった解釈でいいのかな。
サラミの絵
テーブルの上の白い皿に、サラミが5切れ載っていて、周辺にはナイフや水差しらしき物が配置されているという小さい絵がありまして、
これが妙に気に入りました。
ミュージアムショップに、この絵の絵はがきが売っていました。展示されているすべての作品を絵はがきにできるわけでもない中で、この絵が取り上げられているということは、私と同じでこの絵がなぜか好きな方が、企画されている方達の中にいらしたということでしょう。もちろん購入させていただきました。
キリコさん彫刻いいじゃない
あくまで自分の感想ですが、キリコさんの彫刻いいなって思いました。
絵画に登場するマネキン「マヌカン」などが立体に表現されています。
「マヌカン」の頭部は、ツルッツルに磨き上げられていて、ゴールドに光り輝いています。
この前見たばかりの、マティスの彫刻作品とつい比較してしまいます。マティスさんの彫刻は、量感半端ない、手の跡も残るゴツゴツした頭像。それはそれで良いのですが、彼と比較すると、
キリコさんは、とても丁寧な仕事をする方だったんだなと感じます。
そして、その彫刻作品達は、絵の裏側を見せてくれているようで面白かったです。これなら家に飾れそう。
思いっきり古典絵画に回帰してガラッと作風変えちゃった時期があった
若いころに確立して評価もされている作風から一転、横たわるヌードや静物画など、古典的な表現をしている時期があったんですね。
わかります。時代の風潮や、偶然の出会いから、今までの絵とは違う物を描きたくなる気持ち。自由でいいと思います。
今まで、キリコについて不勉強でしたが、今回の展示を見て、初めて生涯を通した制作活動の流れを知ることができました。
展示空間を工夫した学芸員さん達の気合いの入り方
展示用の壁に、キリコの絵に出てくるアーチが切ってあったり、壁の色がキリコ風になっていたり、アーチ窓から隣の展示室の人たちがのぞけたり。
説明用のパネルが、長方形でなく台形になっていて、キリコの絵にでてくる歪んだパースの雰囲気になっていたり。
展示空間自体が面白くて、作った方達の気合いを感じました。
ゆっくり楽しめた、ゴールデンウィークの午後でした。
※内容は個人の感想です。
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