見出し画像

「変身」カフカ(読書感想部)

前書き

図書館で新刊コーナーにあったのをたまたま手に取りました。読んでみると率直に面白かったです。また、著者であるフランツ・カフカさんのことは何も知らず、カフカ=海辺のカフカ、といった状態だったので調べてみました。結論、他の著書も読んでみたいなと思います。

著者:フランツ・カフカについて

この方は1883年チェコのプラハでユダヤ人家庭で生まれました。
法律を学んだのち、銀行員として勤める傍ら、執筆活動をします。
実存主義(=人間の存在を自分の視点から哲学すること)の作家として活躍し、今回読んだ「変身」もまさにその1つです。他にも、恋人に充てた手紙を小説としてまとめられています。
カフカ氏は恋人フェリーツェと、交際している間、結婚に話が進むと、怖くなって逃げてしまい、のちに家族立ち合いの元婚約。しかしほどなくして破棄。半年後また婚約しますが、カフカ氏の肺結核が判明し、再び破棄し、とうとう別れることになります。この気が弱い様も「変身」から感じ取れます。
ちなみにフェリーツェさんはカフカ氏と顔がそっくりでした。当時珍しい会社で働く自立した女性だったそうで、男性に引けを取らないたくましい方だったのでしょうか。

読書感想 ネタばれあり

物語はとある男が朝、働きに行こうと目を覚ますと、昆虫になっていたところから始まります。
「変身」ってそういう意味だったのか。驚かされました。
虫になっていては、部屋から出ることができません。心配した家族や挙句の果てに勤め先の人間までもが心配して様子をうかがいにやってきます。押し問答の末、部屋の戸が開いて皆絶句。そこから男への態度が変わっていきます。
虫になった当人は、意外にもこの状況に適応していくのですが、家族は全くだめ。このあたりから、物語が特に寂しさや孤独を描いていると思いました。虫になった直後は、男は中身は今までのままなのに、表面的な部分が変わってしまっただけで、周りから拒絶されます。見た目の変化でなくても、こういうことって自分にもありますね。一度人から誤解を受けたら、それだけで今までと接し方が一変してしまうこと。
そして、そういった関係性のまま時間がたってしまうと、どんどん元に戻ることが難しくなっていき、「人から自分はどうみられているか」をそのまま「自分の姿」として自己評価するようになっていく。
男は元の姿に戻ろうとしたり、虫のままでも自分の気持ちを表現することなく、まるで諦めたままで、後半に一度虫になったけど良かったこともある(妹のバイオリンの演奏が、音の振動を空気や床から人であったときよりもダイレクトに感じられること)と感動しますが、それだけで、最後には干からびて死んでゆきます。
この部分からも、男を通した著者の生き方だったり、人生の受け入れ方を感じられます。総じて暗いです。苦難にあらがおうとせず、絶望=自分として受け取っているかと思います。私個人的には、どちらかというとそっち側の考え方なのですが、共感はできませんでした。

変身という単語から、全く情報がなかった時点では、何か人や物事が好転していく話を想像していました。まさか人が虫になるとは思いませんでした。(どちらかといえば、サナギが蝶にかわっていくイメージ。)
このストーリーの一番興味深いところは、「虫」の具体名がないことです。姿をイメージさせるような描写はあり、おそらく甲虫であろうと思われるのですが、カブトムシなのかゴキブリなのか、それ以外の生物なのかは読み手の想像次第です。
そこがこの話の一番良いところだと思いました。
読み手には、ぜひ自分を重ねながら読んでみてほしいと思います。

この記事が参加している募集

読書感想文

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?