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誰が入院させてと言った!?ー遠距離介護記録2

 救急当番医は、大学病院ではこの年齢の慢性硬膜下血腫の手術をしてくれない、地域基幹病院の名をあげ、そちらの方がいいからと紹介状を書いてくれた。鎮痛剤ももらい、迎えの妹の車で帰った。

 夜間も自分の状況を分かっていない父は、よろよろと布団から起き上がりトイレへ行く。転倒リスクは高い。前立腺癌は緩解しているが、ずっと頻尿だ。

 そのたびに横で寝ている母、あるいは隣室で扉を開けて寝ている私が、付き添う。この状態はしばらく続くことになる。
 急に来てもらった妹も泊まった。

 次の日は月曜日。電話連絡の上で、妹と地域基幹病院に父を連れて行った。

 激しく混んでいる。1時時間近く待ってMRI撮影。さらに待ってやっと呼ばれた。

 若い脳外科の医師は「慢性硬膜下血腫ですが、今の状態がこれによる脳の圧迫のせいかどうかはわかりません。手術の適応でもありません。まあ、老衰です。入院はできませんよ」

 私は一瞬頭に血が上った。心の中で、「はあ!だれが入院させてくれと言った!そんなつもりなかったよ」と毒づいた後、それとも、そんな雰囲気をだしていたのか?私は。それとも、あんたは老衰の親を入院させてくれと連れてくる家族に倦んでいるのか?と思考は続く。

 しかし、医師に対する期待が高過ぎることを自覚しているので、すぐ気持ちは冷める。

 あきらめとともに口をつぐんだ私と妹にその医師は「水分の排出を促す漢方、五苓散(ゴレイサン)と鎮痛剤を出しますので、1か月後来てください」と予約は取った。診察室を出る時、看護師にいたわられている気がした。

 漢方って効くのか?結局、時間薬ってことか?

 ただ、老衰ととらえるのは悪くはないのかも…食が進まなくなっていた父の状態を見ていて、それが事実であるとどこか納得もしていた。
 老衰であれば人間の自然な姿であり、構えすぎずに付き合えるのかもしれない、と思った。


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