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オレンジの絆(3)

ーー月曜日
「おはよう〜」

「おは〜」

楓ちゃんとさつきちゃんが挨拶しながら私の席にやってきた。

「祐希ちゃん金曜はごめんね。」と楓ちゃんが、眉毛をハの字にして近づいてきた。

「なにがあったの?」とさつきちゃん。

さつきちゃんは、橘くんとおばけ屋敷の設計図を書いているので、金曜は図書室にいた。

楓ちゃんがわけを話すとさつきちゃんは、

「ねぇ。祐希ちゃんって、相良くんのこと好きなの?」

と聞いてきた。

「う〜ん。わからないんだよね。実は…」

相良くんが山田中から推薦がきていることを2人に話した。

「えーーーーー!」

「しっ!静かにっ!」
と私は慌てて口の前で人差し指をたてて2人を静かにさせた。

「山田中って寮なんでしょ?」

と楓ちゃんが話始めた。楓ちゃんの親戚のお兄さんが通っているそうだ。携帯は決まった時間でないとみれないや、練習時間は朝から晩まででとてもハードだと教えてくれた。

「そう。寮生活になるから、もし、相良くんが山田中を選んだら一緒の中学にはいけないね。」
と私が言うと

「私たち相良くんと最高の思い出をこれから作らなくちゃねっ。」
とさつきちゃんはいつも私たちを元気にさせてくれる。

「私、相良くんに推薦受けるのか聞きたくて…放課後に聞いてみる。」
と私は2人に決意表明をして放課後を迎えた。

「さっ…相良くん。ちょっといい?」

と久しぶりに相良くんに話しかけるので、おどおどしていた。

「俺もお前に謝りたくて…ちょっとこっちきてくれる?」

と人通りの少ない廊下で、1人分入れるくらいの距離をとって、お互い壁に背中をあてて、相良くんが話始めた。

「本当に、金曜は悪かった。無神経なこと言ったと思ってる。」

「あ、いいよいいよ。私もなんかびっくりして飛び出しちゃった。」

「あとさ、俺実は…推薦きててさ。俺嬉しすぎてさ。推薦うけようと思ってる。」

「そうなんだ。相良くん、おめでとう!!応援してる。」

「都内一強いところで自分の実力を試したいんだよな。俺、レギュラーなるから絶対、試合見にきてくれよ。」

「気早くない?」

「ハハハ。」

とそこには隔たりや気まずさはなくてバスケで話すいつも通りの空気だった。

「久しぶりにお前と話せてよかったわ。いや、引退試合もお前ボロボロだったし、バスケの話するの避けてたんだよね。」

「気遣いすぎだよ。そこまで私ヤワじゃない!」

むっとなって相良くんの肩を叩く。

「いってーーー!!」

そして、久しぶりに家まで一緒にバスケの話をして帰った。

(やっぱ相良くんと話するの楽しいな〜)
と布団の中で相良くんと話した内容を思い返してニヤニヤしていた。
(私相良くんのことやっぱり好きだ…明日、楓ちゃんに報告しよう。)

ーー次の日
「楓ちゃん、おはよう。ちょっといい?」
と私が楓ちゃんに話かけた

「おはよう。うん。どうした?」

「昨日、相良くんと話して、相良くんやっぱり山田中の推薦受けるんだって。」

楓ちゃんが泣きそうになっている。

「そうだよね。一緒の中学行きたかったけど、相良くんの気持ち考えたらそうだよね。」

「うん。あと……私も相良くんが好きだ。」

「祐希ちゃん、今更?私はずっと昔に気づいてたよ。」

「え?」
(楓ちゃん昔から気づいてた?どういうこと?)

気が動転してしまって、言葉が出てこなかった。頭から煙が出てきて体に力が入らなかった。

「え?祐希ちゃん?」

私はするすると廊下に膝をついてしまった。

「なんか拍子抜け〜」

「あはは!」

と楓ちゃんがお腹を抱えて笑っている。

(さっき泣きそうな顔していたのに、よかった。)
と心の中で思いながら

「教室もどろっ!」

と私が楓ちゃんに声をかけて立ち上がると、楓ちゃんが私の腕を掴んで

「正直に話してくれてありがとうね。さぁ〜相良ファンクラブ発足だ〜!」
と私の腕を上げて教室へ走って戻った。

教室へ戻るとさつきちゃんがニヤニヤしていた。

「あ、二人戻ってきた!じゃ〜ん!お化け屋敷の設計図出来ました〜!」

と設計図を見せてくれた。

「え、もう?!はやっ!」

と騒いでいたら、森下くんと相良くん、橘くんが寄ってきた。

「俺たちにも見せろよな〜。ダンボールどんだけ毎日運んでるのかお前ら知ってるのか?」

と森下くんはあれから毎日、近所のスーパーやサッカーチームの友達からダンボールをたくさんもらってきてくれた。お陰で私たちは一度もダンボールを運ばずに済んだのだ。

「森下くん、本当にありがとう!感謝!」

と私が、頭をさげたら森下くんは

「まぁ〜まぁ〜わかればいいんだよ。」

といって、満足気だった。

設計図は思ったより複雑で、これ当日までにできるか?とみんなで話した。

「今日、放課後残れるやつは、早速取り掛かるぞ!」
と森下くん筆頭に、クラスメイトにも声をかけて16人ほど放課後で作業することとなった。

集まったのが森下くんのファンクラブ8人と男子2人の10人と私たち文化祭委員の6人。

「女子ばっかりだな〜おい、男子どこ行ったんだよ?」

と少しキレ気味な森下くん。

「他のメンバーは今日、塾があるとかで帰ったよ。」

「はぁ?まじかよ。ま、いっか。じゃあ女子はダンボール切ってくれる?」

とイラつきながらもちゃんと指示をする森下くん。

(さすが。クラスで人気者なだけある)

森下くんのファンクラブの女子たちは「もりちゃんめっちゃかっこい〜!」と森下くんのファンクラブの中だけで呼ばれている森下くんのあだ名、通称”もりちゃん”。もりちゃんは、ツンデレだから普段ファンクラブの女子たちは彼を陰から見ていることが多い。

女子が切ったダンボールの組み立てを男子がして、その組み立てる指示を設計図を作成したさつきちゃんがしていた。

「さつきちゃん、威勢がいいね。」

と私がいうと、

「威勢がよくないと男子はまとめられないよ!ね。橘くん。」

と、横にさつきちゃんの警備員のように立っているだけの橘くん。橘くんは、いつもおとなしくて休み時間も音楽室にいることも多いので、男子との接点も薄い。今回委員に入ったのもじゃんけんに負けたからだった。

「…う、うん。」

少し一歩ひきながら、さつきちゃんを見守っている。

みんなコツコツとやること2時間…

「よ〜し、今日はここまでにしよう!」

と森下くんが号令をかけて今日は終わった。

「祐希ちゃんお疲れさま〜」

楓ちゃんとさつきちゃんが片付けしている私に声をかけてきた。

「結構進んだね〜。」

「男子が珍しく真面目に働いていたね。」

と楓ちゃんとさつきちゃんが口々に言ってきた。

「さっ。帰ろう!」

と片付けを終えて3人で帰っているときに橘くんが一人でポツポツ前方を歩いている。

「あ、橘くん」

と私がいうと、さつきちゃんが

「私ちょっと声かけてくるね。2人で帰ってて!」

とさつきちゃんが橘くんに「橘くん〜お疲れさま〜」と後ろから大きな声を出しながら走っていった。

「さつきちゃんって、橘くんのどこが好きか聞いたことある?」

と楓ちゃんが私に聞いてきた。

「ううん、そういえば聞いたことないな〜。」

「今度聞いてみて。橘くんの見方が変わるからっ!」

(橘くん、どんな人なのかな〜あんまり話したことがないからよく知らないな〜)
「うん。聞いてみるね。」

ーー文化祭まで後1週間
今日も放課後にみんなで集まって作業をしていた。

「おっ、だんだんお化け屋敷らしくなってきたじゃねーかー!」と森下くんがガッツポーズをしている。

「もりちゃん、男前〜キャ〜〜〜!!」
とファンクラブのみんなの目がハートになっている。

色塗りも始めてみんな服を真っ黒、真っ赤にしてすごいことになっている。

「あと、最後のトンネルのところを塗れば完成だ〜!」
と、相良くんが叫んだ。

「明日、お化け屋敷のおばけ役の人は自分の担当の位置について実践していこう。」
と森下くんと相良くん筆頭にクラスをまとめてくれるので私たちはとても安心していられた。楓ちゃんは、さらに相良くんの株が上がっていた。

「やっぱり相良くんかっこいいよね〜。」

「………。」

ーー文化祭前日

おばけ役は、実行委員の6人と驚かせたいと悪ノリしている男子5人の11人でやることとなった。女子は私たち3人で髪の長いカツラを被せられて理科の先生から借りてきた白衣をきて赤い口紅を口裂け女の画像を参考に左右引っ張れるだけ書いた。

「見て。」

さつきちゃんが顔を見せてきた。

「ハハハハハ!!」

と私が豪快に爆笑していると楓ちゃんもきて

「アハハ」と上品に笑った。

男子はボロボロの白黒の汚れたTシャツをきてバケツをかぶっていたり、ゾンビの被り物を買ってきてそれを楽しそうにふざけて遊んでいる。

「男子ってやっぱり子どもよね〜。」

とさつきちゃんが遠目から腕組みして蔑んでいた。

「さぁ、じゃあ3人ずつ並んで。」
と先生がおばけ以外の生徒を並ばせている。

「さっ、俺らも準備すっぞ。」

森下くんがいうと

「ちょっと待って。みんなで円陣組まない?」

相良くんが言い出した。

「お〜いいね〜!」

森下くんがノリノリで

「おばけのみんな〜集まって〜!」と私たちを集めた。

「え〜今日は、壊したらまた修繕しないといけないので、あまり激しくやらないようにしよう(笑)」
とすごく冷静なことを言い出すので、私たちは吹き出した。

「じゃっいくぞ〜!」

「お〜〜〜!」

と、みんなで円陣を組み、拳を上げて、持ち場についた。

私は、なんと相良くんとななめ横の場所となってしまった。
おばけの配置を決める際に、入り口からおばけの配置を1番〜ゴール前の最後のおばけを11番として、誰がどこの持ち場にするかを決めた。おばけのみんなで適当にひいたので本当に運といえば運なんだけど、私は楓ちゃんの視線が痛い…。ちなみに楓ちゃんは入り口すぐそばの3番の場所、私と相良くんは8,9番だった。

「おい、高坂〜!楽しみだな。」

と真っ黒の顔をした相良くんこっちをみて話しかけてきた。

「そうだね。」

愛想悪く返すと

「なんだよ。お前楽しむのが大事だぞ。」

とこちらの都合も分からず呑気に返してくる。

「わかってる。」

ちょっとイラッとしながら返していると、入り口側では、もうクラスメイトのお客が入場しているようだ
「きゃーーーー!!!」と騒いでいる声がしている。

「な〜、高坂!今日さ、夜ミニバスいかね?」

「…考えとく。」

「お前まじでノリ悪いぞ。」

といっていると先頭集団がこっちにきた

「バーーーーーっ!」

とライトを照らしてクラスメイトを驚かせる。

「きゃーーーーー!!!」

その後に相良おばけも

「わぁーーーっ!!」

と大きな声を出してバケツを叩いてカンカン音を鳴らす。

「きゃーーー!こわーーい!」
とクラスメイトが半泣きになってゴールへ向かっていった。

「俺らまじでおばけ向いてるかもしれないな。将来はバスケット選手じゃなくておばけになろうかな。」

「意味わからない…。」

と特にたわいもない会話をして私たちのおばけの仕事はクラスメイトに大繁盛で終わった。森下くんも満足そうにこの日は学校を後にした。

「祐希ちゃん〜帰ろう!」
と嫉妬心もれもれの楓ちゃんが私のところにやってきた。

(うわぁ〜めんどくさ〜。相良くんとは、何も話してないよ〜!)と心の中で言いながら

「相良くんとは何も話してないよー!」

と楓ちゃんに言うと

「そんなことないでしょ?話し声めっちゃ聞こえてたっ!」

と腕をひっぱって私を教室から引っ張り出す。

「きゃーー!助けて〜〜。」

と冗談ぽくいっていると、相良くんが真剣に

「おい、佐倉!やめとけよ。お前。」

と止めに入ってきた。

「はっ?あんたっ…」と私が言いかけると

「なによ!なによ!私だけめっちゃ惨めじゃないっ!二人は両思いなのに。早く、くっつきなさいよ!!」

と怒って泣きながら帰っていってしまった。

「あ、楓ちゃん…相良くん、楓ちゃんの気持ち知ってるでしょ?少しはそっちの気持ちも考えてよね。」

「はっ?俺はお前が嫌がってるから止めただけだ。」

「もういいっ!今日はミニバスいかない!!」

「もう女子、めんどくせー!」

と相良くんがめんどくさがる気持ちもわかる。私もめんどくさい。でも、楓ちゃんは大事な友達だ。泣いている楓ちゃんの後を追っかけた。

「楓ちゃん〜待って〜〜」

と楓ちゃんの後を追うと楓ちゃんは、三角座りして靴箱の入り口のところで泣いていた。

「ぐっすぐっす。私は結ばれないの?どうしたら相良くんに好かれるの?」

「…それは私は相良くんじゃないからわからない。」

「祐希ちゃんは相良くんに好かれているからいいじゃん。私、祐希ちゃんになりたい。」

「………。」
何も言えなかった。このまま変わってあげたいとも思った。私は相良くんが好きだけど楓ちゃんに対する相良くんの気持ちは私の気持ちの何100倍もあるから。そう感じると少し虚しくなった。

「あれ?二人まだ帰ってなかったんだ。」

とさつきちゃんが靴を履いて出てきた。

「さつきちゃ〜ん。」

と楓ちゃんがさつきちゃんに抱きつく。楓ちゃんはさっきのことをさつきちゃんに話した。

「なるほどね。相良くんは色々勘違いしたみたいね。でも、楓ちゃん、人生ってそううまくいくもんじゃないのよ。特に恋愛なんてもんは人と人の繋がりだからお互い好きになるなんてほんと難しいことなのよ。」

「私どうしたらいい?」

と楓ちゃんがさつきちゃんにいう。

「どうもこうも楓ちゃんが大人になればいい話。相良くんのことが好きなら相良くんを応援してあげて。中学校にいったら他の小学校とも合併するんだからいい人と巡り合えるよ。それまで待ってよ。」

さつきちゃんは、本当大人だ。いつもしっかりしている。不満や愚痴をほとんど聞いたことがない。プラス思考で姉御肌で尊敬している。

「まっ。今日は3人仲良く手繋いで帰ろう。」

とさつきちゃんが私と楓ちゃんの手を握らす。

「うん。ごめんね。祐希ちゃん。」

「ううん。私も何もできなくてごめん。」

3人で手を繋いで校門をでた。

(ミニバスは行かない…相良くんのことも見たくない…明日嫌だな…)と思いながら眠りについた。

ーー文化祭当日

「今日は待ちに待った文化祭だー!いい日にするぞー!」
と森下くんの円陣によって文化祭が始まった。

お化け屋敷は1日中していたら回れないので、学校の規則で前半に出し物をするクラスと後半に出し物をするクラスと分かれている。

私たちのクラスは前半は自由行動で、後半はお化けの役割が待っている。

昨日の出来事があって相良くんとは目も合わせられない。

自由行動は楓ちゃんとさつきちゃんの3人で回ることになっている。

お化け屋敷は私たちのクラスともう2クラスやる予定となっているのでそちらも回ってみようと3人で話していた。

「楽しみだね〜5年生のお化け屋敷。」

とさつきちゃんが話だした。

「うん。私たちより迫力があったらなんかメンツが立たないね。」

と私がいうと

「そうだね。でも楽しみ!」

と3人で5年生のお化け屋敷にむかっているとすでに森下くんと相良くんが並んでいた。

「おはよう。お前らも下見か?」

と森下くんが今日も素敵な笑顔で話しかけてくれる。森下くんの後ろにはファンクラブの女子がたくさん列をなしている。

「うん。やっぱりライバルの下見は大事よね。」

とさつきちゃんが返すと

「早く並ぼう。すごい行列だよ。」

と楓ちゃんは気まづいので早くいきたいといって最後列に並んだ。

(相良くん一回もこっち見なかったな〜。楓ちゃんも気持ち整理できたのかな?)

少し心配になりながらも私たちはもりちゃんファンクラブの行列の後ろに並んだ。

私たちの番になり、お化け屋敷に入る。

私たちのお化け屋敷のテーマはゾンビなんだが、5年生のテーマが「病院」だったので、保健室のベットやら理科室のガイコツ模型など置いてある。

「きゃーーーーー!」

とさつきちゃんが少し歩くとすごい大きな声で出して私はその声にびっくりした。

「…さつきちゃん声でかすぎるよ。どうしたの?」

「橘くん!!!!!」

「え???」

ライトを照らすと保健室のガイコツ模型の横に橘くんがいた。

「あ、ごめんね。僕お化けじゃないよ。」

「いや、わかってるよ!何してるの?」

とさつきちゃんが嬉しいのとびっくりしたのと混じってテンションがおかしくなっている。

「このガイコツ模型すごいなぁって思って。理科室にあるやつちゃんと見たことなかったから見てるんだ。」

(やっぱり橘くん変わってる…)

「じゃ、私たちはいくね。」

「うん。また後で。」
と橘くんはまじまじとガイコツ模型見ている。

「ほんと橘くんは行動が読めないからいいのよね。」

とさつきちゃんはすごく嬉しそうだ。さつきちゃんにいつか橘くんのどこが好きなのか聞いてみよう。と思った。

それにしても、上手に創られている。ガイコツは理科室のものだが、看護師さんだったりお医者さんが人もあればカカシで作られていて、私たちのクラスとまた違ったよさがある。

もりちゃんのファンクラブのうちのクラスの女子たちは、もりちゃんの背中右肩、左肩につかまれるだけ掴んでいる。

「おい、お前ら暑い。やめろ。」

「だって〜怖いだもん。」

と普段陰から見ているが、暗いのをいいことにみんなが森下くんにくっついている。相良くんがほぼノーマークだ。なので、相良くんがスピードダウンして、私たちのグループに近づいてきた。

(早く言ってよ…気まづいよ〜〜)

「きゃっ!!!」

私は前を見ずにうわべの空だったので下にある骨に気づかずつまずいてしまった。ドタっ!!

「え?祐希ちゃん?」

と2人が私のことをライトで照らしている。

「いった〜〜〜〜い!」

と私は試合で捻った足をまたやってしまった…。

立てるが歩こうと思ったら痛すぎて、前に進めない…

「大丈夫?」

と2人が声をかけてくれた。

「うん、大丈夫。」

と話していると相良くんが

「ん。」

といってまた華奢な背中を見せてくれる。

「いいよ。悪いよ。」

というと

「後ろのやつらに迷惑だろ?」

何も言えず、背中に乗った。

「きゃーーー!!!」

と楓ちゃんとさつきちゃんが黄色い声で私たちをライトで照らしてくる。

「やめて〜〜!」

と私は恥ずかしくて嬉しくて痛くていろんな気持ちが混じって叫ぶしかなかった。

相良くんは私を背負ってお化け屋敷を後にして、保健室へ連れていってくれた。

「お前なぁ前みて歩けよな。どんくさいな。」

と昨日のことはなかったかのようにいつも通り話かけてくれる。

「ごめん。ありがとう。」

保健室の先生も文化祭を巡回しているので誰もいなかった。

「テーピングあったかな〜。あ、あるじゃん。」

といって、相良くんがテーピングを巻いてくれる。

「相良くん、テーピング巻けたんだ。」

「まぁな。メンバーが捻挫したりすることもあるから覚えた。」

「相良くんはすごいね。」

「なにが?」

「だって、バスケも上手で、テーピングも巻けて…」
と話していたら涙が出てきた。

「え。俺なんかした?」

「昨日は、ごめん。相良くんの優しさを無下にした。」

「あ〜いいよ。女子ってめんどくさいよな〜。俺まじであ〜いうの無理だわ。」

「……。楓ちゃんが相良くんのこと好きじゃん?私が相良くんと話すと楓ちゃんの目が気になるの。仲良くしたいし。でも、私も相良くんと前みたいに話したい。」

相良くんがうすトマトになっている。

「おっ、おう。そうだったんだ。鈍感で悪かったな。じゃあお前と話すときは、佐倉がいないところで話すわ。だからミニバスも来いよな。俺、推薦もらってるから冬休みから山田中に練習に行くんだ。その前に身体鈍って1番下手だったら嫌だからさ。ミニバス今まで通り練習いってるんだわ。」

「え?そうだったの?でも、私がいったときいなかった…」

「あ〜、そんときは、たまたま休んでたんだわ。」

といっていつも通りに会話できることに嬉しかったし、気を遣ってくれる相良くんの優しさが本当に大好き。

「相良くん…ありがとね。」

「きっ、急になんだよ。お前は俺の大事な同士だからな。なんかあったらすぐ言えよ。あと、お前その足じゃゾンビ不可!誰かに変わってもらえ。」

「そうだね。誰か行けそうな人に代わってもらう。」

といってヒエラルキー3位の松本くんに代わってもらった。

クラスのお化けが大繁盛している中、私は椅子に座って相良くんとの会話を思い返していた。

クラスのお化け屋敷は大成功で、美術賞をもらった。帰りは保健室で借りた杖をついて引きずって帰っていった。





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