施設にいた話⑤

山の上にあるお城から降りていた時、後ろから私を呼ぶ声が聞こえてきました。

見つかった。
走り出し、必死に逃げましたが、何も食べていない体には限界があり
すぐにつかまりました。

そこから、施設にすぐに戻らされたわけではなく、児童相談所というところで話をしました。なぜ逃げだしたのか、どこにいたのか、心配したよ、など声をかけられました。

少しして、施設に戻ることになりました。
戻ってすぐに年配の職員さんに抱きしめられ、号泣しました。
 
いじめが辛かったこと、飛び出しても何もできなかったこと、誰にも頼ることをしなかったこと。
いろんな思いがこみ上げてきて泣きました。

あの時の私には世界のすべてが狭くて、施設にいる空間が一番だったのです。逃げ出すことがいいこととも言えないけどこの時の私は間違ってなかったなと思います。  

号泣した後、お風呂に入ってゆっくりしておいでと言われ、お風呂場に行く途中、Aさんと会いました。
私はびっくりして、怖くて、下を向いて素通りしようと思いました。

ですが、Aさんに声をかけられ、

「ごめんね。」

と、謝られました。
私の気にくわないところがあったかもしれない、でもいじめていい理由にはならない。怒りや悲しさ苦しい気持ちがこみ上げましたが、

「うん。」
それしか言えませんでした。

そこから私はAさんとかかわることはなくなり、いじめもなくなりました。
無視をしていた子たちも話しかけてくれるようになりました。

それからしばらくして、Aさんは施設を出て家に帰りました。


このいじめで私は一つ強くなり、相手の気持ちに敏感になりました。
人には好き嫌いがあります。
あって当たり前。

でも、いじめていい理由にはならない。

苦手だと思ったら、離れましょう。
逃げましょう。
程よい距離感で接しましょう。

自分を守るためです。
誰だって自分が一番かわいくって大事だから。




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