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誰かに話すまでもないことを

noteをやってみたらいい、と家人からすすめられた。
あるサイトで「司書の片思い」という不定期連載を書かせていただいているが、こんな立派なところで書くほどもないようなことが、ふだん心に浮かんでいる。そんな些末なことを、よそゆきでない言葉で書いてみたいな、と感じた。
それでnoteをはじめることにしたが、手引きとして一冊の本を買ってみた。
津村記久子『苦手から始める作文教室(ちくまQブックス)』(筑摩書房,2022)は、書くことへの凝り固まった考えを解放してくれる。第一章を読んだだけで、ありがとうございます、これでした、と握手したくなる。

友達に言いたいことがあれば作文は書ける、と書きましたが、それを一段下げて、友達に言いたいけれどもしょうもないので言うか言わないか迷っていること、を作文に書くのも良いと思います。

津村記久子『苦手から始める作文教室(ちくまQブックス)』p.16

今の私は、「言うか言わないか迷っていること」だらけなのである。
たとえば、好きな作家さんの小説について。あまりに好きすぎて、同僚の司書たちに毎日のように話してしまう時期があった。どんな出来事が起こってもそちらに寄せてしまうので、さすがに気持ち悪いと思われてしまうな、と思い最近は自重しているのだが、やはり言いたい。
また、大好きなラジオ番組が近々終わってしまうとか、「週刊読書人」は「どくしょじん」か「どくしょにん」かどちらなのかとか、誰かに話すまでもなく、何らかの反応がほしいわけでもないような出来事を書きたい。

津村さんのエッセイで、「最近になってようやくトイレのあとに下着を順序よく重ねて着直すことができるようになった、33歳で早逝した中島敦だったら無理だった」というようなくだりがあったと思う。トイレの個室でごそごそすることが中島敦の生涯とつながるなんて、すごいセンス……。
何より、津村さんはきっと下着を上下交互に重ねながら、ほんとうにこう思ったんだろうな、という現実味があるからおもしろい。

まずは『作文教室』の教えに素直にしたがって書いてみたい。未来の自分がこれを読んで、「しょうもないな」とおもしろがれるといい。

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