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2000年代 個人的洋楽ベスト30

1990年をスタートに2020年をゴールとして良さそうなアルバムを1枚聴いては感想を書き連ねていく洋楽マラソン。気づけば2009年まで走破。

せっかくの区切りなので2000年から2009年の10年間に発売されたアルバムを好きな順に並べてみました。コメントはTwitterに初掲載した時の内容をベースに手を加えたものになります。では早速どうぞ。


30位 Burial/Untrue(07)

ロンドン発ダブステップの代表的プレイヤー、ウィリアム・ビヴァンによるソロプロジェクトの2nd。その音楽は聴く者に「落ち着き」と「陶酔」と「静かな狂熱」を持たらす。在宅勤務ミュージックにもピッタリでいつまでも聴いていられるよ!


29位 Radiohead/Amnesiac(01)

KID Aと同時に録音されていた5th。ギターロックに回帰した”I Might Be Wrong”と”Knives Out”の印象が強いがアルバム通しで聴くとジャズコラボの”Life In A Glasshouse”やパーカッションとストリングスだけなのに凄い熱量の”Dollars And Cents”など自由演技の個性的な曲が林立していて混沌とした印象。混沌ゆえに聴けば聴くほど自分が本当に理解できてるのか不安になる不思議なアルバム。


28位 Keane/Hope And Fears(04)

英国初登場1位を記録した1st。ギターなしのピアノロックは息をのむほど美しい…軽々しく美メロって言葉使わないようにしてるけどここでは使うでしょ!エルトン・ジョンとかトラヴィスあたりのUK伝統の系譜でしょうか。聴き込みたくなる名曲集ですね。


27位 Coldplay/Parachutes (00)

900万枚のセールスを記録した1st。しっかりしたメロディライン。色気のあるファルセット、ベンズ・OKコン時代のレディオヘッドを彷彿とさせるザラついたオルタナ風味。しかも凄く整ってて完成度高い。僕は2022年4月が初聴きで本作にノスタルジーはないので純粋にいいと思った。
“Yellow”や“Trouble”なんてトラヴィスあたりに通じるメランコリックさもあり音作りもシンプルでこの辺までは90年代と地続き感あるんだね。


26位 Cajun Dance Party/The Colourful Life(08)

当時10代のメンバーで構成されたロンドンの5人組。本作のみで解散。その事実を知った上で聴くととても切ない。
”Amylase”→”The Fireworks”→”Buttercups”の流れは最高ですね!特に“Amylase”はフレーミング・リップスの名曲“Race For The Prize”のような趣きを感じます。主要メンバーが結成したヤックが2011年に発表したアルバムも然るべきタイミングで聴いてみたいと思います。


25位 The Streets/A Grand Don’t Come For(04)

UKヒップホップの先駆けとなったマイク・スキナーのプロジェクトThe Streetsの2nd。名曲“Dry Your Eyes”の♪Dry your eyes, mate♪というリリックに英国を感じる。”Fit But You Know It”はゼロ年代の“Lust For Life”のよう。失った1,000ポンドを主人公が取り戻そうとするコンセプトアルバムというがカジュアルに聴けてしまうのもいいですね!(てかコンセプトがゆるくない?😅)


24位 Bell And Sebastian/Dear Catastrophe Waitress(03)

ラフトレードに移籍しプロデューサーにトレヴァー・ホーンを起用。一大転機となった6th。ホーン、ストリングス、全編を貫く弾んだムード・・時系列に聴いてきた僕はこの変化にビックリしました!スラップスティックなコミカルさを纏うほどの極上ポップアルバムですね!プロデューサーでこんなに変わるもの?内省的な初期を好む方も多いんだろうなとは思うけど僕はこれぐらいの方が好きかな。いい曲ばかりだけど“I’m A Cuckoo”と” Wrapped Up In Books’”が特に好きです。


23位 Paul Weller/Illumination (02)

ソロ名義での6th。全英1位。最初聴いたとき魅力的な曲が多くて思わずニヤついてしまった。モッド・ファーザーとしてオーシャン・カラー・シーンやノエル・ギャラガーら当時の「若い衆」を多数起用。


22位  Prince/The Rainbow Children (01)

ゼロ年代のプリンスによる通算24作目。80年代に栄華を極めた殿下の作品にしてまさかの全米最高109位!メディアの評価も低かったがR&B系のディスクガイドから辿り着いて聴いてみたら死ぬほど良かった!ディアンジェロの”Voodoo”発売の翌年、殿下がネオソウルやってみたらこうなります的な不意打ちの傑作だと思って聴くべき作品と理解。グルービーなリズム隊にファルセットの多重録音・・90年代後半にデヴィッド・ボウイが当時勢いのあったナイン・インチ・ネイルズやプロディジーに接近しようとしていた話があるけどそれのSOUL/R&B版なんだろうなぁ。


21位 Prefuse 73/One Word Extinguisher(03)

様々な名を持つスコット・ヘレンの“プレフューズ73”名義作品。エレクトロニカの側からヒップホップに接近しラップを切り刻んで構築するボーカルチョップという手法を駆使・・難しい事はさておきカッコいい音楽だなぁ。


20位 Super Furry Animals/Hey Venus!(07)

今回、書き下ろしならぬ聴き下ろし。37分足らずの長さにぎゅぎゅっと凝縮された極上ポップチューン集でした。2001年の「Rings Around The World」と迷ったけど曲の揃ったこちらを。


19位 Manic Street Preachers/Send Away The Tigers(07)

このジャケをTLでよく見かける理由がわかった。いい曲ばっかりなんだ!その中でも“Autumnsong”は特別だ。「Remember, the best times are yet to come」という歌詞にウルっとくる。ただでさえ2007年はKasabianにThe EnemyにHard-Fiと「UK歌謡曲ロック」の豊作だっていうのにラスボス格のマニックスがこの充実っぷりか!“Your Love Alone Is Not Enough”でカーディガンズのニーナ・パーションと同じオクターブで歌っちゃうジェームスマジ最高!


18位 Wilco/Sky Blue Sky(07)

フォーク・カントリー色強めの6th。こんなにほっこり寄り添ってくる作品にはそうそう出会えない。優しい声に安定のアンサンブル。”Either Way” や “What Light”は歌詞も染みる。「アメリカの良心」なんてものがあるとしたらきっとこういうのを言うんでしょう。


17位 Red Hot Chili Peppers/Stadium Arcadium(06)

28曲約2時間の大作9th。意外にも初の全米1位。ジャケは宇宙がモチーフでDisc1が木星Disc2が火星。長いけどとてもポップですね〜。2022年にも実質3枚分のアルバム出したわけだしこの人たち月の満ち欠けのように周期的に創作意欲がパンッパンに膨れ上がるのでしょうか。感触的には最新作の”Return of the Dream Canteen”が長いけど聴きやすいという点でこれに近いのかな?


16位 Common/Like Water for Chocolate(00)

「腕利きソウルクエリアンズ」3部作の1つ。ロックリスナーにもリーチする生演奏グルーブの極み!多幸感溢れる一番の推し曲”The Light”で「It’s kinda fresh you listen to more than Hip-Hop」ってくだりが出てくるのは偶然か必然か?J Dillaが手掛けたこの曲はBobby Caldwellの”Open Your Eyes”を再構築したもの。他の推し曲はM4,6,12,14,15。聴けば聴くほどハマっていったアルバム。


15位 The Pains Of Being Pure At Heart/st (09)

「心底純粋であることの痛み」というこれ以上ないぐらい完璧な名前のNY出身インディーバンド。ライトなシューゲイザー+ギターポップ的音響と豊かなメロディーラインに加えて男女混合ボーカル。M1,2,4,7が特に好きです。


14位 Erykah Badu/Mama's Gun (00)

エリカ・バドゥの2nd。「ソウルクエリアンズ三部作」の1つ。ネオソウルの名作。UKソウルバンドMamas Gunの名は本作にちなんだもの。歌詞が内省的である事でも知られており、一子をもうけた間柄であるOutKastのアンドレ3000とのことを歌ったとされるM14”Green Eyes“は10分の長尺なのに圧巻の構成で歌詞見ながら聴くと一歩も動けなくなりました。他の推し曲M3,5,8,9,12。


13位  Boards Of Canada/The Campfire Headphase (05)

ボーズ・オブ・カナダの3rd。幽玄で暖かみのあるエレクトロニカは今回も健在。前作より「ぬめり気」が少なめでドライに感じるのは時たま織り混ぜられている弦楽器の音色から?アートワークは今回もクールですね。


12位 Bright Eyes/I'm Wide Awake It's Morning(05)

SSWコナー・オバーストの1人プロジェクト、ブライト・アイズの6th。心揺さぶられるフォーク・ロック!こんな音楽に感動できるうちは俺もまだ大丈夫だ!…などと意味不明にほくそ笑んだ事は内緒ですよ…


11位 Radiohead/In Rainbows(07)

ダウンロード販売が物議を醸した7th。
僕の初聴きは2020年。暴走機関車みたいな“Bodysnatchers”がお気に入りだった。今回聴き直してつくづくロックとエレクトロの匙加減が絶妙な作品だと思った。こういうのを10年代に2枚ぐらい出して欲しかったな…ようやくOKコン的要素とKIDA的要素が完全に消化されていい感じになったのに…などと思わなくもないが変化し続けるバンドだから仕方ない。
ちなみにボーナスディスクのDisc2も”Down Is the New Up"“Last Flowers”と名曲が入っていて大好きです!


10位 Madvillainy/Madvillain(04)

惜しくも2020年に亡くなった仮面ラッパーMF DOOMと敏腕アングラHIPHOPプロデューサーMadlib共作による名盤。ローファイなトラックと不敵なラップが紡ぎ出す禍々しく怪しい世界。22曲で46分。短めの1曲1曲がクールで全体でもクール!


9位 Outkast/Speakerboxxx/The Love Below(03)

前半はBig Boi担当でヒップホップ色の強い”Speakerboxxx” 後半はAndre3000担当でR&B/ソウル色の強い”The Love Below”という二枚組。40曲135分の長尺ながらとても濃密。大ヒット曲“Hey Ya!”の有名なPVは60年代の白人アイドルとファンをパロった内容。不真面目な事を大真面目にやってそんな自分達を俯瞰してるような雰囲気が最高!


8位 Maroon5/Songs About Jane(03)

発売から2年以上かけて全米TOP10入りし1000万枚売り上げた1st。ひょっとしたらロック好き界隈からはコールドプレイ的な捉え方をされているのかも知れないけどR&Bテイストが濃厚な曲とコクのあるおダシの効いた声が僕は大好きです。
🎵Sunday Morning〜🎵


7位 John Frusciante/Shadows Collide With People(04)

ジョン・フルシアンテ2004年6月〜翌年2月にかけての怒涛の6連続アルバムリリース第1弾。
…これはヤバい!曲が粒揃いすぎる。ある意味レッチリ以上にレッチリらしい佳曲がズラリ並ぶ中、実験的なエレクトロニカ曲が散りばめられてるのがソロ作品らしい。それにしてもジョンの歌声は味わい深い。だがそれ故に濃いので実験的な曲が丁度いいアクセントになって18曲最後まで聴き通せる…そんな所も気に入っています。

2022年9月時点でサブスクなかったのでCD買いました。2023年7月時点でも少なくともSpotifyにはないですね。

推曲:1,2,8,12,13✨


6位 N.E.R.D/Fly Or Die(04)

ネプチューンズ+1=N.E.R.Dの2nd。ヒップホップっぽいジャケだけどほぼ歌もののファンクロックでむしろレッチリあたりに近い。生演奏から生み出されるのはここではD’AngeloのVoodooのようなソウルグルーブというよりロックのダイナミズム…しかも捻りのあるポップな曲が揃ってるから手に負えない。“Drill Sergeant”はいつの時代のヒットチューン?“The Way She Dances”のタメはスティービーの”That Girl”?

ゼロ年代のロックやブラックミュージックを普段聴かない方にこそ聴いてみてほしいです。


5位 Radiohead/Hail To The Thief(03)

OKコン、KIDA、アムニに続く6th。大きな創作的冒険を経てミニマルな音作りに回帰しているせいなのか56分の長尺が長く感じない。2+2=5とThere,Thereもいいけど個人的には後半が盛り上がる。特に”A Wolf At the Door”は凛々しい吟遊詩人みたいで大好きです。


4位 J Dilla/Donuts(06)

死の3日前に発売された生前最後の作品。
インストヒップホップのクラシックとして今なお燦然と輝く。各1分程度の31曲がシームレスに繋がる43分、曲単位ではなく繋がりと揺らぎを楽しむべきものだと理解した。デトロイト・タイガースのキャップを被ったジャケット写真も好き。


3位 M.I.A./Kala(07)

何だかパワーアップしてる2nd。映画「RRR」を観た後の気分に寄り添ってくるような音楽。シングルカット曲M2,3,4,11のPVは凛々しさや怒りやコケティッシュさが同居していてどれも見とれてしまう。Rolling Stones誌の2007年年間1位ってのを初聴きした時にはちょっと不思議に感じたが今ならわかる。熱量が凄いんだな・・


2位 D’Angelo/Voodoo(00)

R&B/ネオソウルの金字塔。ねっとり感とスウィートネスと男臭さが絶妙なバランスで同居。なぜ本作からそれらが感じられるのか初聴きの時に調べた。
ねっとり感:ドラマーのクエストラブはDの要求で違和感を感じないギリギリまでタメてビートを刻んでおり独特のグルーブ感を生んでいる。
スウィートネス:何曲か2人の元恋人の事を情感込めて歌ってる。多重録音のボーカルが艶っぽい。
男臭さ:販売戦略で当時Dは肉体を鍛え上げていた。そういうのは多分滲み出る!
・・傑作は色んな偶然が積み重なって生まれるんだなあ🤔


1位 Fiona Apple/Extraordinary Machine(05)

難産だった3rd。レーベルと揉めてお蔵入りになっていたと思われていたが実はフィオナ自身が出来に納得いかなくて録り直ししていたもの。その甲斐あってか情念と親しみやすさと一捻りあるメロディのバランスが取れた傑作になっていると思う。この話を聞いて思い出したのは打ち込みを生演奏で録り直して傑作になった2002年のN.E.R.Dの「In Search Of・・」アーティストのこだわりがいい結果をもたらした例は他にも沢山ありそう…


いかがだったでしょうか?意外な1位だったかも知れませんがフィオナの3rd、好きなんですよね。何を聴こうか迷ったらこれ聴くって時期がありました。

以下は雑感ですが、ゼロ年代って個人的には結婚や転職や資格取得や激務やらで余裕がなくて殆どリアルタイムの音楽に向き合ってなかった時期なんですよね。だからこそその頃どんな音楽が鳴っていたのか興味があってちょっとゆったり丁寧めにマラソン聴きしました。

90年代では作らなかったランキングをゼロ年代では作った理由は3つあって、1つ目は多少知識の蓄積ができてアウトプットしたいと思えるようになってきたこと。2つ目はあまりゼロ年代のランキングを見かけないから自分で選んでみたくなったこと(レコード・コレクターズ誌の名盤特集が60,70,80,90年代ときてそこで終わってしまったのには愕然としました・・)。3つ目はこれをまとめないとテン年代に進めないなと思ったことです笑

やってみた感想としてはおそらく音楽に限らず色んな趣味が細分化した時期で誰が選んでも同じようにはならなくなってるだろうな、と。例えば70年代だったら10,000人の音楽好きが30枚選んだら全く同じ順位付けする人が1組や2組はできそうな気がするんですが、ゼロ年代だと1組もできないような気がするんですよね。

あとロックがもはや特別なジャンルではなくなっていてロックのヒット作が時代を代表するものではなくなっていることからロック系のメディアでランキング企画が組みにくいのではないかと思います。昨今この年代のランキングを殆ど見かけないのはひょっとしたらそんな背景があるのかなと思います。僕が知らないだけで本当はあるのかも知れませんが・・

では自分のランキングを眺めた感想はというとちょっとネオソウルとレディオヘッドに寄りすぎかな、という感じですが、現時点で誰にも忖度せずにやってみた結果です。レディヘに寄りすぎと言いながら個人的に微妙な「KID A」は入れてないとか一般的に人気の高そうなアクモンやストロークスやリバティーンズは入ってないとかそれなりの色は出てるんではないかと思います。数年後にやったらまた違う結果になるんだろうなあ・・

以上、最後までお読み頂きありがとうございました!

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