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今日の読書5/16

今日読んだのは、一木けいさんの「9月9日9時9分」です。
一言で伝えると心が揺さぶられました。

図書館で借りました

タイ、バンコクの帰国子女の漣は、両親と姉と暮らす女子高生です。

家族の愛を充分に受け(見た人からしたら過保護なくらい)家族を大切にしています。その理由はそのあとわかるのですが、内気で本人は日本の生活にうまく馴染めていないと感じています。

電車で痴漢に合ってもどうしとらよいかわからず悩んでいます。
警察に行ってもまともに対応してくれない、自分で立ち向かうのは怖い。家族は心配してくれのですが、心配をかけすぎないようにと遠慮してしまうのです。
過保護な家族に少し窮屈さを感じているものありますが、姉のことを思ってのことでもありました。
漣のお姉さんは一度結婚したのですが、夫のDVで精神的に追い詰められ離婚してしばらくしても、まだそのトラウマに悩まされています。

そんな漣は同じ学校の男子上級生を一目見て心を惹かれます。
勇気を出して声をかけると、最初は敵対視するような態度だった彼、朋温でしたが、痴漢に襲われている漣を救ってくれたのでした。

実は朋温は、大切な姉にDVを奮った男の実弟だったのです。

互いを大切に思う2人。最初は朋温と付き合っていることを家族に知られないようにしますが、ばれてしまい…

家族に大切に愛され守られてきた漣は真剣に悩みます。

漣の原点として、子どものころ育ったタイがあります。
弱い人子どもを大切にし、困っている人がいたら当然のように手を差し伸べる心優しい国タイは、漣の生き方の本質となっています。

あなたの生き方は薄っぺらい、あなたの笑顔は嘘くさい…そんなことを言われて傷つきながらも、漣は姉のために恋人のために何ができるのかを悩みながらも、逃げないで真正面から考えていきます。
大切な姉を傷つけたもと夫のことも受け入れようとします。

「私は、応援どころか姉の足を引っ張ってるだけかもしれません。いくら調べても何が正しい選択なのかわからないし、少しずつでも自分の頭で考えて進もうと思っているけど、何かやってみるたびに不安で胸が潰れそうに痛くなります。私は自分のエゴで周りを巻き込んで引っ掻き回してるだけなんじゃないかって、怖くて仕方がないんです」

そんな漣の不安に、ある罪を背負った人が答えます。
「悩んで迷って、自分で考えて、選んだ道は、不正解じゃありません。もしかしたらこうなりますようにっていま願っている結果の通りには、ならないかもしれない。でも、間違いではないです」

優しい言葉でした。
誰かのためにどうしたらいいかを悩んでいる漣は、どんなに救われたでしょう。

この小説はかなり公平でした。
漣も朋温も、2人の関係を否定する両親、また心を病んでしまう姉も、みんなが誰かのために誠実に生きようとしていました。

大切な人のため、愛する人のため、取り返しのつかないような失敗をした人のため、消してしまいたいような過去を抱えた人のため、絶望してしまった人のため、そして自分自身のために何をできるか、真剣に悩み立ち向かう漣や登場人物の姿に心を打たれました。

恋愛小説としても、家族小説としても大満足の一冊でした。
そしてまだ行ったことのタイに行ってみたいと思いました。



 



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