では、なぜ今道徳が大事か

価値観の多様性が認められてきた現代では、物事の善悪の根拠が不明確になりやすい。具体例を出そう。例えば、なぜ、売春は駄目か。法律に抵触するから?それは確かにそうだが、ではその法律の根拠は何だろうか。社会の風俗を乱すから?では、どこの組織にも属していない女性の売春を否定する根拠は何か?つまるところ、モラル・倫理観など、曖昧なものだろう。だが、個人主義的で自己責任社会の現代においてモラル・倫理観は多様性のアンチテーゼとなりうるのではないだろうか。先ほどの例を用いるなら、売春は確かにモラルに反しているが、モラルは人それぞれだし、それで被害を被るのはその人の責任だから、否定できない、ということである。今、多様な物事の根拠は法律に依拠しがちだが、それは危険な状態ではなかろうか。多様性という考え方は、マイノリティを救済したが、同時に、社会規範の稀薄性を炙り出した。網目の大きい法律をすり抜けたときのセーフティネットとしてのモラル・倫理観の成熟を社会全体で行っていかなければならない。

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