見出し画像

欧州のリピーター創業者のアドバンテージはどの程度か?

欧州のVCディールメイキングにおいて、連続起業家と初回創業者の実績を比較したPitchbook社による分析を取り上げる。要点をまとめると、欧州のVC市場は厳しい状況にありつつも、連続起業家はリピートの経験と専門性によって依然として有利な立場にあるようだ。VCバブルの影響も考慮しつつ、リピーター創業者は今後も初回創業者よりも多くの資金を早期に調達し続ける可能性が高い。詳しいデータについては以下を参照していただきたい。


VCのディールメーキングが減速する中、欧州の創業者にとって資金調達はより困難なプロセスとなっている。

投資家はリスク回避志向を強めている。実績のあるシリアルアントレプレナー(連続起業家)は、初めて資金調達を行う起業家よりも明らかに有利である。

しかし、過去の成功体験はどの程度までVCラウンドの増加や規模拡大につながるのだろうか?

過去10年間における欧州の創業者のVCディールメーキングデータを調査し、初回創業者とシリアルアントレプレナー(すでに2社以上の会社を立ち上げ、エグジットに成功している起業家)の間の溝を測定した。

2022年から2023年にかけてのシリアルアントレプレナーによる資金調達ラウンド数の減少は、初心者のそれよりもわずかに低く、それぞれ37.3%対40%であった。同期間のディール金額では、初回創業者が調達した総資本が55%減少したのに対し、シリアルアントレプレナーは45.5%減少している。

これは、リピーター創業者は、少なくとも1つの会社をすでに設立し、成功裏にエグジットすることで専門性を証明しているため、投資家により安心感を与えるためと考えられる。

さらに、欧州のVCエコシステムが成熟したため欧州の連続創業者の数は過去10年間で増加した。より多くの新興企業が規模を拡大し撤退するにつれて、新規事業を立ち上げる事業者も増加している。

欧州創業者のVCディールサイズ世界中央値

連続創業者が2023年に調達する金額の中央値は470万ユーロ(約507万ドル)で、初回起業家の190万ユーロを大幅に上回っている。

投資家は、資金調達と会社運営の実績から、リピーター創業者に大きな賭けをすることを厭わないのかもしれない。また、連続起業家は、投資家とのネットワークが深く、以前このプロセスを経験しているため、ピッチングスキルも優れている傾向がある。

欧州人創業者による新興企業のVCプレマネー評価額の世界中央値

より大きなディールサイズと共に、シリアルアントレプレナーはより高いバリュエーションを得ている。これもまた、投資家がリピーターの創業者の経験に安心感を抱いているためであろう。

興味深いことに、連続創業者のプレマネーバリュエーション中央値は今年減少している一方で、初回創業者のバリュエーション中央値は上昇している。

VCバブルの影響で、連続起業家が設立した新興企業の評価額が、初回起業家のそれと比べてより膨らんだ可能性がある。不況下では、市場が再調整するにつれて、前者のバリュエーションはより深い調整に見舞われた可能性がある。

欧州の起業家による創業から最初の資金調達までの期間の中央値

新規創業者と連続創業者の最初の資金調達にかかる時間の差は、今年大幅に拡大した。

新規創業者は2.2年かかり、連続創業者は1.2年かかる。リピーター起業家は、スタートアップを立ち上げなければならない期間がはるかに短く、事業を成長させる際にスタートダッシュを切ることができる。

現在、ベンチャー企業の資金調達は以前よりもかなり難しくなっているが、連続起業家が大きなアドバンテージを持っていることはデータから明らかである。不況が2024年まで続くとすれば、欧州のリピーター創業者は、初回創業者よりもより多くの資金を、より早いペースで調達し続ける可能性が高い。


https://pitchbook.com/news/articles/europe-vc-serial-entrepreneurs-first-time-founders


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?