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私はよくかわいいといわれる〈60〉

 3月になった。昼休み屋上同盟も今日で最後かもしれない。今日は美樹もいる。いつものように金井君と舞香は通信機器で将棋をやって、絵美里は小説を読み、美樹はブランケットに包んで寝、森本君と鈴音は私の両サイドで話をしている。

 「来年は受験か…彼女でもいたら一緒に乗り越えられるんだけどな」と森本君が言った。

 「あんた彼女作る気あったの?」と鈴音が意外そうに言ってなぜかニヤニヤしている。

 受験の一年は受験に集中する派と受験のストレスを恋愛で緩和する派がいるのかもなと私はなんとなく思っていると森本君が

 「まあだれでもいいってことはないけど…」と言った。ほう…そうなのか。

 とそこで森本君と鈴音の会話のラリーが止まった。まったく森本も難しいやつだな、こいつにも金井とは別の意味の気難しさがあるんだな、思っていると、急に美樹がガバっと上半身を起こして

 「あんたまだわからないの?」と言った。

 

 私は何が起こったのか一瞬わからず誰に言ったのかもわからないでいると、美樹は私を見ている。どうやら私に向かって言っているらしいということは、あんたとは私のことらしい。そして金井君と舞香はいつしか将棋をやめ、絵美里も小説をひざにのせ、鈴音も体をこちらに向けてみんな一斉に私を見ている。

 森本君だけは空を見てこちらを向いていない…

 

 なんだ?どうした?

 

 誰も何もしゃべらず今までで体験したことのない気まずさがこみあげてくる。

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