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〈47〉席

 学校という場所は二つの席がある。

 それは授業中の席と休み時間の席である。

 休み時間、ワイワイガヤガヤしているようでみんなちゃんと休み時間の席に着いている。席と言っても細かく言えば場所のことである。机の上に座る子もいれば、友達の席の隣に立っている子もいる。もちろん授業中と休み時間の席が同じ子もたくさんいる。

 芦原君は西崎君の隣を死守している。そしてその周りに数人の男子が囲み、必ず人だかりになる。よく二人だけでしゃべっている男子も女子もたくさんいるが、芦原、西崎の周りは必ずそれ以外の人も来るのでこの二人にはそれなりの威光がある。

 この休み時間の席と言うのはそれなりの厳格さがある。もし私が芦原、西崎の人だかりに入って行って、芦原、西崎の間に割って入れば、必ず「どうしたの?」や「なんか用?」などと聞かれる。自分の席に座っていればそんなことは聞かれないので、つまり芦原、西崎の間には「席」は存在しないことになる。

 しかしそこに席が存在しないからこそ、存在しないという理由でそこに席を作ったらどうなるか考えてしまうのが私である。今度、芦原、西崎にこっそり連絡してある日急に私が当然のように二人の間にいるようになったらどうなるかやってみたいのでやってもいいか?と聞こうかしら。

 そしたら周りの男子はどんな顔をするだろうか?二人が何も言わない以上子分は「どうしたの?」や「なんでいるの?」なんて聞けないだろうか?

 おそらくまず二人の表情を伺うだろう。そして二人が当然という顔をすれば何も言わないだろうし、二人が迷惑そうな顔をすれば、二人は「優しいから何も言わない」と解釈して、子分はここは俺の役目とばかりに私に話しかけてくるだろうか?

 妃願望アホ女子と西崎と対等アピール女子は私にどんな反応するだろうか?女子なので微妙な探りを入れてくる感じであろうか?あるいは、露骨な嫌がらせでもされるだろうか?

 チャイムが鳴った。

 国語の期末考査が終わった。国語のテストはいつも15分で終わるので。また勝手に妄想が始まっていた。いつものことだ。

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