11, 救世主

そんな暗闇で不安ながらも気丈にふるまう長女を見てここでも頭の下がる思いであった。
子供を助けなければならない大人が逆に子供に助けられる場面がこの富士登山では何度もあった。そんな中、後方にいる妻から微弱な電波を拾って電話が入った。なんと!?途中で出会った人たちに助けてもらって私と長女の後方すぐ近くまで来ているとの事。
少しルートを引き返すとヘッドライトをつけた7~8人の集団が見えた。その中に妻と下の子もいて私たち家族は無事再開することが出来た。長女は安堵からか泣き出してしまい、それを見て不安だったのにいままで気丈にふるまっていたことにやっと気づかされた。親が思うよりも成長していることはうれしかったが、それ以上に気を使わせていたこと不安にさせてしまったことを申し訳なく思った。

その合流した集団の中の4,5人はがっちりとした成人男性で、聞くと娘を背負って斜面を降りてきてくれたという。これほどありがたいと思ったのも人生1番か2番かもしれない。命の恩人とはこのことだと思った。6合目まで何とか送り届けてもらい、そのまま徒歩で駐車場まで下山するとの事だったので、お別れをした。
6合目から5合目は比較的平坦な道であることはわかっていたので、スマホのライトを頼りに5合目までたどり着くことが出来た。時刻は午後11時ごろだったと思う。当然、バスも終わっていたのでタクシーを呼ぼうかと思ったが、肝心の富士スバルラインが朝までしまっているとの事。どうしようもないので待合室の椅子に座って朝を待つことにした。子供たちは疲れてかたいタイルの上にリュックを枕代わりに爆睡していた。普段家では蚊が飛んでいるだけで大騒ぎの子供たちが、大人の手のひらほどある蛾がいてもお構いなしに熟睡する姿はたくましく見えた。

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