見出し画像

[小説]惹き付けるもの

  僕が小学生の頃、まだ女子にあまり抵抗がなくボディタッチなどをしていた時の話だ。席替えがあって隣の席が明子になった。明子は普通の顔立ちと言うのがその時の僕のイメージだった。
  席替えしてお互いが色々喋れるようになった頃に明子は、僕の机の汚さを指摘した。特に机の引出しである。昼休みや五分休みになると毎回僕を止めては机の整理整頓をする。僕は、そんな状況に苛立っていた。仲のいい友達から、からかわれる。でも、相手もユーモアを混ぜて汚いことを指摘してくるのでそこまで嫌な時間ではなかったと記憶している。
  いつものように整理整頓をしているとお互いの匂いや雰囲気を悟ってしまうようになっていく。明子の匂いは、特殊だった。他の女子にはない匂いでいつも僕を喜ばせ困らせた。いい匂いとも言い切れないが悪い匂いでも無いなと思った。しかし、嗅いでくうちにいい匂いだなと思うようになっていた。そして、この匂いが好きになった頃、僕の机が綺麗に片付いた。
  中学校に進級し、二年になったとき明子は同じクラスになった。僕はその時は、女子と喋ることすら抵抗がある時代だった。明子と僕は一切会話をしなくなっていた。

そんな時だ。

明子が明るく喋っている男がいた。その男は嫌われものという扱いを受けていたがとにかく対女関係は強かった。
僕とその男が話すタイミングになった時、明子のことについて少し聞いてみた。
「お前、明子と仲良くね?」
「えっ!君は仲良くないの?あんなに話しやすい人なのに」
「いや、そういうことじゃないけど、なんかお似合いだなと思って」と言うと男は笑って背中の辺りを平手打ちしてきた。照れてるとビンタする習性があるようだ。
「いや、明子はなんか嫌だよ」
「どうして?」
「なんか臭いじゃん」
「いや、あの匂い俺、好きだけど」
「えっ!マジ。お前こそお似合いじゃん」
「あの匂いどこから出るんだろうね?」
「んー、分かったタバコの匂いだ」と、この瞬間二人の謎が溶け合った瞬間だった。そうだった。あの匂いはタバコから来る匂いだった。僕は、授業も集中して受けれないほどショックだった…

タバコには気を付けたいと思った。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?