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[詩]たまにはため息でも吐いて

久し振りに故郷に帰ると

祝い花のような山桜がお出迎え

幾人かの笑顔も受けた

知らない花すら咲いていた

だけど、友達と遊んでいた公園

木を切られて、誰も居なくなっていた

淀んだ電柱に薄暗い雲

バス亭近くの君の家

更地になって蝶が舞っている

近づくとすぐに飛んでいった

仕方がないから

行く宛もなくベンチに座る

今日は一人、山の中の公園でも巡って

たまにはため息でも吐いて

都心に戻ると

更地はすぐに工事中

大きなマンションが立っている

お洒落な店に入る

誰も他人なんて気にしていない

友達なんて探しても

会えるはずもない

だけど、アスファルトの上

白い蝶々が止まっていて

君は何を感じるのか、そんな風に思う

花や人に囲まれていても

君はなぜそのままでいれるのか

ちょっと疲れた

珈琲でも沸かして

たまにはため息でも吐いて

「ありがとう」

誰かの声が漏れる雑踏

「こんにちは」

馴染みの公園

「道を教えてくれませんか」

広く見渡せる国道

「大丈夫ですか?」

人で渋滞してる中での声

「すみません」

忙しく動いてる仕事場

「じゃあね」

悲しい別れの夕暮れ

「危ない!」

踏切での勇気ある声

「あなたのお陰です」

他人同士を繋ぐ架け橋

冷たく見えても助け合って生きている

だから、たまにはため息でも吐いて

蝶々はそんなことで逃げたりしない

たまにはため息でも吐いて


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