見出し画像

道立小黒内高校 3年イ組「約束の卒業式」

「約束の卒業式」

佐々木龍二は3年イ組の担任教師、外国語が堪能な化学担当教師だ。彼は今日もまた5人前のコンビニ弁当をたいらげた上に、ダイエット中の女子生徒の弁当の後始末もこなしていた。
そして、食後ついうっかり寝てしまった。



「先生?先生?」
その声に龍二は目覚めた。
目の前に音楽好きの田村花子がいた。大事な生徒だ。
「寝てしまったか。」と龍二が言うと、花子が妙な事を言い始めた。
「先生、卒業式も終わったし、約束のプロポーズお願いね。音楽のように美しく、愛を奏でて!」
そうだ、彼女とは教師と生徒の関係が終了したら、プロポーズする約束をしていたんだ。

それから二ヶ月半、6月頭に結婚をし、今日から新婚生活。新居の玄関を開けると、そこに花子が待っていた。
「先生?先生?」
「おい、夫婦になったんだぞ。先生はやめろよ。『あなた』がいいな。花子」



「先生?先生?」
その声に龍二は目覚めた。
目の前に成績優秀な山口梨乃がいた。大事な生徒だ。
「寝てしまったか。」と竜二が言うと、梨乃が妙な事を言い始めた。
「先生、卒業式も終わったし、約束のプロポーズお願いね。そのためにたくさん勉強したんだから。」
そうだ、彼女とは教師と生徒の関係が終了したら、プロポーズする約束をしていたんだ。

それから二ヶ月半、6月頭に結婚をし、今日から新婚生活。新居の玄関を開けると、そこに梨乃が待っていた。
「先生?先生?」
「おい、夫婦になったんだぞ。先生はやめろよ。『あなた』がいいな。梨乃」



「先生?先生?」
その声に竜二は目覚めた。
目の前に陸上部のスプリンター渡辺紗絵がいた。大事な生徒だ。
「寝てしまったか。」と竜二が言うと、紗絵が妙な事を言い始めた。
「先生、卒業式も終わったし、約束のプロポーズお願いね。ダッシュ、ダッシュ。人生はダッシュよ。」
そうだ、彼女とは教師と生徒の関係が終了したら、プロポーズする約束をしていたんだ。

それから二ヶ月半、6月頭に結婚をし、今日から新婚生活。新居の玄関を開けると、そこに紗絵が待っていた。
「先生?先生?」
「おい、夫婦になったんだぞ。先生はやめろよ。『あなた』がいいな。紗絵」



「先生?先生?」
その声に竜二は目覚めた。
目の前にサッカーチームのキャプテン佐々木美咲がいた。大事な生徒だ。
「寝てしまったか。」と竜二が言うと、美咲が妙な事を言い始めた。
「先生、卒業式も終わったし、約束のプロポーズお願いね。苗字は既に同じなんだから、手っ取り早いわよね。」
そうだ、彼女とは教師と生徒の関係が終了したら、プロポーズする約束をしていたんだ。

それから二ヶ月半、6月頭に結婚をし、今日から新婚生活。新居の玄関を開けると、そこに美咲が待っていた。
「先生?先生?」
「おい、夫婦になったんだぞ。先生はやめろよ。『あなた』がいいな。美咲」



「先生?先生?」
     ・
     ・
     ・

「禁断のプロポーズ」



「先生?佐々木先生?」
その声に龍二は目覚めた。
それにしても今回の連続夢は実に楽しい、そして背徳的だ。
大事な生徒達に対する愛は純粋なもののはず。そんな生徒達との禁断の関係へ。
教師にあるまじき、実に嬉しい夢だ。今度は誰だろう?
目の前に保健の森田桜子先生がいた。大事な同僚だ。うわ〜、桜子さんまでご出演か〜、くぅ〜たまんね〜。
「寝てしまったか。」と龍二は言ってみたが、桜子は妙な事を言わない。
「先生。いつまで寝てるんですか?」
龍二は、どうせ夢なのだから、何を言っても、いや何をやっても構わないと、桜子に本心を告げることにした上、彼女と楽しいスキンシップを、と考えた。
「桜子、俺と結婚しよう!、さぁ。さぁ、おいで。」
龍二は桜子の手を取り、ぐいとベッドに引き込もうとした。
桜子は、「何をするんですか?」と彼女からは想像できないような強い力で龍二をはねのけた。
そして、大谷ばりのフルスイングの平手打ち。利き手の左が、「轟」と音をたて、超音速行撃破が保健室の窓ガラスを一枚残らず割る。
「バチーン!」龍二の頬に爆発のような衝撃と激痛が走った。
「え?え?え?」龍二は痛む頬を抑えながら、夢のはずだと自分に言い聞かせようとした。
「ごめんなさい。でも、佐々木先生。あなたが悪いんですよ。」
桜子はその場を走って去っていった。

佐々木竜二よ、しばらくの間森田先生は、お前の姿を見たくないそうだ。