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【プロが教える】ダイビングのスキル基礎講座(初級者編)

1.はじめに

スキューバダイビングは、
シリンダー(タンク・ボンベともいう)を背負うことで、
水中という空気のない空間で、
未開拓の世界をのぞくことがでるマリンレジャーです。
そこには映像でしか見ることのできなかった、
・竜宮城のような世界
・大型の魚が群れを成す大迫力の世界
を、実際に見ることができるのです。

そんなスキューバダイビングですが、
入門してまず初めに、学習する事があります。
それは、
・器材のセッティング
・水中でのトラブルの対処法
になります。
ダイビングはルールさえ守れば誰でも安全に楽しめるのですが、
同時に命にかかわるレジャーでもあるのです。
この様にある意味、危険と隣り合わせのダイビングを安全に楽しむために、
必要なスキルをしっかりとマスターして頂くのです。

今回は、そんなスキューバダイビングを安全に楽しんで頂くために必要な
基本的なダイビングスキルを、
BSACの動画とともにご説明していきたいと思います。
これから入門される方も、既に入門されている方は復習として
ぜひ参考にして頂ければと思います。

2.ダイビング器材のセッティング

ダイバーは、海に入る前にまず何をするのでしょうか。
それは器材のセッティングです。
これが出来ないと、肝心なダイビングをする事ができません。
それなのに、ライセンスを取得した後のファンダイビングで
器材のセッティングができないダイバーの方が多くいらっしゃいます。

第三者にセッティングをしてもらって有事の事態が起こってしまい、
『あの時ご自身でセッティングしていれば』
と後悔しても遅いのです。
器材はご自身の命を預けるはものなので、
セッティングは他人に任せることなくご自身の責任で行うべきなのです。

そこでまず、器材のセッティングにつてご説明したいと思います。

ただし、セッティング方法は、
BCDやレギュレーターの種類、指導団体、
又それぞれのダイバー方のお考えによって異なってきます。
ご自分が教えてもらった手順と照らし合わせながら実践してみて下さい。

2.1 シリンダーを確認しましょう

(1)シリンダーの確認
 セッティングを行う前に、まずシリンダーの外観を確認して下さい。
 刻印で、点検が実施されているか否か、
 ・シリンダーの種類(アルミ、スチール)
 ・Oリング(オーリング)
 を確認しましょう。
 また、ウェイトや潜水時間に関係のある刻印、
 ・容量(V)
 ・重さ(W)
 も併せて確認しておきましょう。

(2)エアーの確認
 次に、まずシリンダー内のエアーが
 「無臭・無味・無着色」
 である事を確認して下さい。
 シリンダー内の空気は、空気を圧縮したものなので無臭のはずです。
 油っぽい匂いやガスっぽい匂いがするようであれば、
 充てん設備の不良や、不適切な充てん作業が原因であると考えられます。
 この様な場合は、必ずインストラクターやショップの方に伝えて下さい。

2.2 BCDを取付けましょう

(1)BCDの取付方法
 まずシリンダーのバルブが右側にがくるよう置いて下さい。
 そして、BCDを向こう側にして、
 ・固定するベルト(シリンダーサポート)
 ・高さを調節する細いベルト
 を通します。
 この時、シリンダーのバルブの頂点と、
 BCDの背中の頂点を同じ高さにし、バルブとBCDは平行にして下さい。

(2)BCDの固定方法
 次に、BCDを固定します。
 まず外側の穴にベルトを差し込む前に力を入れてベルトを締めます。
 次にバックル部分を立てながら一番外側の穴にベルトを差し込み、
 テコの原理で倒してマジックテープを止めます。
 最後に、BCDをゆすってシリンダーが外れなければ、取付け完了です。

2.3 レギュレーターを取付けましょう

(1)レギュレーターの持ち方 
 レギュレーターはヨークスクリューをおへそに向け、
 ご自身が吸うセカンドステージを右側に
 残圧計などのゲージ類を左側にして持って下さい。

(2)レギュレーターの取付方法
 次にヨークスクリューを反時計に回すとダストキャップがとれます。
 ヨークスクリューの先端が見えるか見えないかぐらいまで、
 反時計周りに回して、
 そのままシリンダーのOリングに合うようにセットします。
 ヨークスクリューを時計周りにまわし、締めてセット完了です。

(3)中圧ホースの確認
 ファーストステージから左側に1本のホースが伸びてます。
 場合によっては右側にもう1本伸びています。
 コレは中圧ホースと呼ばれるもので、
 左側のホースはBCDのパワーインフレーターに接続します。
 右側のホースはドライスーツの着用する場合に
 吸気用として接続することになります。

(4)中圧ホースを接続 
 レギュレーターの左側のホースを、
 BCDの左肩から伸びているパワーインフレーターに接続します。
 中圧ホースは、カプラーと呼ばれる金属の部分を手前に引きながら、
 パワーインフレーターの出張っている部分に差込んで下さい。
 この時、カプラーが「カチッ」と音が鳴れば安心です。

2.4 バルブを開けましょう

(1)バルブの開放
 最後にバルブを開けます。
 バルブは手前に回すと開放され、奥(BCD側)に回すと閉じていきます。
 開ける場合は、ごく稀に残圧計にひびが入っていたりなどすると、
 残圧計のガラスが破裂することがあり危険なので、
 残圧計を裏に向けながら回して下さい。
 手前にバルブを回し切ったら、
 BCD側に半回転回戻し”あそび”をつけて下さい。

(2)最後の確認
 最後に、
 ・セカンドステージで呼吸ができるか
 ・パージボタンに不備がないか
 を確認しましょう。
 セカンドステージは、ご自身でくわえて呼吸をして下さい。
 パージボタンは、押した後に問題なく戻る事を確認します。
 ここで問題が発生した場合は、
 そのままでダイビングを行うのは危険な行為です。
 必ずインストラクターやショップの方に伝えて下さい。

3.様々なトラブルの対処方法

水中では、いろいろなトラブルが発生する可能性があります。
・マスクが曇った
・レギュレータが外れてしまった
・エアーが無くなってしまった
いかなる理由があったにせよ、それぞれご自身で対処する必要があります。そのために、
それぞれの対処方法を入門時に練習し習得してもらう事になるのです。

ここからは、それぞれの対処方法の目的とコツをお伝えしたいと思います。
その対処方法は以下の通りです。
・マスククリア、脱着
・レギュレーターリカバリー、クリア
・BCD脱着
・ウェイトベルト脱着
など

初めての方は、これから行う講習にむけて、
ダイバーの方は復習として参考にして下さい。

3.1 マスクのトラブル対処

マスククリアとは、
『ダイビング中にマスクの中に入った(入れた)海水をマスクの外に出す』
ダイバーにとってとても重要なスキルの一つです。
マスクが曇って視界の妨げとなってしまった場合に
ご自身でマスクの中にお水を流し込んで、
曇りを除去したりできるのです。

(1)マスククリア
 マスクの上の部分から水を流し込んで、上を向きながら鼻で息をだして
 マスクの中の水を外へ逃がします。
 口から吸った空気は、勢いよく短めに吐くよりも、
 3秒ほどかけて優しく長めに吐き出して下さい。

 しかし、マスクを顔にセットした状態で、
 鼻から息を出すことがどうしても苦手な方がいます。
 そんな方はまず、顔にマスクを着けていない状態で、
 口から息を吸って鼻から優しく3秒かけて息を吐く練習を数回繰り返し、
 鼻から息を吐く事に慣れることから始めましょう。

(2)マスク脱着
 水中でマスクが取れてしまった場合を想定して、
 マスクを付け直してマスクの中の海水を出すまでのスキルになります。
 海水を出すところは、マスククリアと同様の手順になります。

 緊張や怖さから目をつぶっていたり呼吸を止めている方が、
 多くいらっしゃいます。
 ですが、呼吸さえできていれば、何も心配することはありません。
 目を開けていれば、何があっても対処できます。
 脱着時は、決して目をつぶらない事、
 そして呼吸を止めない事が大切です。

2.3 レギュレーターのトラブル対処

レギュレーターとはダイビング中に口にくわえて呼吸する、
メインの呼吸器のことで、くわえる部分をセカンドステージと呼びます。
このセカンドステージが
・岩やバディの手が引っかかって口から外れてしまった
・口元が緩んでレギュレーターの中に水が入ってきてしまった
時に、セカンドステージを探し咥え直したり、
呼吸を再開させるためのスキルです。
・アームスイーブ法
・リーチ法
という2種類の方法があります。

(1)アームスイープ法でのリカバリー 
 これは、右側にあるレギュレーターを、
 右腕を大きく回して探し出す方法です。 
 セカンドステージには重みがあるので、
 右肩を下げる事でホースごと大きく垂れます。
 これを肘を曲げずに右腕を伸ばしたまま、
 クロールをするように右腕を回転させます。
 右腕にかかったホースは左手で右腕全体をなぞりながら探します。

(2)リーチ法でのリカバリー 
 これは、ホースの根本からホース自体をなぞって、
 セカンドステージを探しだす方法です。
 セカンドステージのホースは、
 ダイバーの後頭部右側から伸びていているのですが、
 体の硬い方などは手が届きにくいのです。
 その為、左手でシリンダーの底を上に持ち上げながら、
 ホースを掴むようにして下さい。

(3)レギュレータークリアの方法
 上記2種類の方法は、咥え直すまでの手順で次に呼吸を開始します。
 しかし、咥え直した状態では、
 セカンドステージの中には海水が入っており、
 このまま呼吸を始めるとお水を飲んでしまいます。
 そのため、セカンドステージの中の水を外に出す必要があります。
 このスキルがレギュレータークリアです。
 この方法にも2種類あり
 ・ご自身の息を勢いよく吹いて出す方法(ブラスト法) 
 ・パージボタンを押して強制的に出す方法(パージ法)
 があります。
 
(4)ブラスト法でのクリア
 ブラスト法は、
 セカンドステージを咥えなしたら勢いよく息を吐きだすだけの方法です。
 女性などで吐く息が弱すぎて少し水が残ってしまっても、
 熱いお茶をすするように息を吸ってからもう一度繰り返しましょう。 
 二回やれば、水は完全に出るはずです。 

(5)パージ法でのクリア
 パージ法は、パージボタンを押してエアーの勢いでお水を出す方法です。
 この方法は、
 普通にしていると勢いよく喉の奥まで水が入ってきてしまうので、 
 舌を上顎の前歯の裏辺りあてながら強く短く押す様にして下さい。

 どちらの方法をご使用になるかの判断は、
 ご自身の呼吸の苦しさで使い分ける様にして下さい。

2.4 BCDのトラブル対処

水中でタンクが外れた時などに、
万が一近くにバディがいない場合のはご自身で付け直す必要があります。
このような時に、一度ご自身でBCDをぬいでまた着直す必要があります。
この様にBCDの脱ぎ着をするスキルをBCD脱着といいます。

(1)Bエアー必ず抜く
 脱着は、BCDの中に空気が残っていると、
 外した時にBCDが浮上して行ってしまうので、 
 パワーインフレーターでしっかりと空気を抜いてから始めます。
 BCDによっては、いろいろな種類がありますが、
 次には、胸元のバックルやカマーバンドをしっかり外して下さい。
 さらにショルダーストラップのタイプ場合は、
 ストラップを緩めましょう。

(2)BCDの着脱の方法
 BCDを脱ぐ場合は、
 レギュレータはえたままですのでそのホースが首に絡まない様に
 必ず左手から抜く様にして下さい。
 そして、着る場合は逆に右手から着る様にします。
 また、先に留め具類(バックルやマジックテープ)を留めてしまうと、
 ホースの挟み込みやねじれを直すのが大変になります。
 留め具を留める前にねじれなどを確認して下さい。
 なお、胸元のバックルやカマーバンドの留め忘れが多いので、
 忘れない様にしましょう。

2.5 ウェイトベルトのトラブル対処

お水の中でベルトが外れてしまう事があります。
この時の為に、ご自身でベルトを付け直すスキルになります。
ウエイトベルトの装着の仕方には、2種類あります。

(1)体を回転させて付け直す
 一つ目の方法は、
 水底であおむけになり、バックルのついていない側を右手で持って、
 ベルトをしっかりと腰に当ながら左側へ身体を回転させる方法です。
 回転して水底を向くとウエイトベルトが腰に乗っかっていますので、
 ずり上げるようにしてタンクの下へたくしこみます。
 ウエイトがウエストに均等に位置に乗るようにして、
 ベルトがねじれてないかを確認してからバックルを締めて下さい。

(2)腕を後ろに回して付け直す
 二つ目の方法は、
 片手でベルトの両端を持ってベルトがループ状になるようにて、
 ベルトを腰の後ろ側へ持って行きます。
 次に、 あいている方の手を後ろに回して、
 両手でベルトのそれぞれの端をつかむようにします。
 左手はバックル側を持ち右手はその反対側を持ち、
 うつ伏せになってベルトを腰に乗せて、バックルを締めて下さい。 

腕を後ろに回す方法は、ウェイトが重いとかなりの力が必要となります。
女子などは、回転してつける方法をおススメします。

2.6 エアー切れの対処

指導団体により諸説ありますが、大きく4種類になります。
・オクトパスブリージングアセント
・緊急スイミングアセント
・バディブリージングアセント
・緊急浮力浮上(ポジティブボイヤントアセント)
下に行くほど緊急度が上がります。
BSACでは安全を考慮したうえで、2種類をスキルとして実施します。

(1)オクトパスブリージングアセント
 ご自身またはバディがエアー切れをおこした時に、
 バディのオクトパスでエアーを吸いながら浮上するスキルです。
 ハンドシグナルでバディにエアがないことを伝え、
 確認後にご自身のオクトパスをバディにわたします。
 わたすときはレオクトパスのパージボタンを塞がないように、
 ホースの根元を持って、
 バディはそのホースの根元を持っている腕を掴みます。
 あとはオクトパスで呼吸を確保してから、ゆっくりと浮上をして下さい。

(2)緊急スイミングアセント
 エアー切れの際にバディが近くにおらず、
 やむおえずお一人で緊急浮上する時のスキルです。
 浮上時に注意するこがたくさんあり、
 ・上部に障害物がないかどうか確認しながら浮上する
 ・レギュレーターを咥えたまま一呼吸で息を吐き続けながら浮上する
 ・ウエイトは捨てない
 ・左手で持っているインフレ―ターは水面に上がっても離さない。
 など、浮上スピードを守りながら浮上していきます。
 
 浮上の際は、右手は上に上げて上部の安全確認を行います。
 左手はインフレーターを持ち、
 BCD内の膨張した空気を抜くために排気ボタンを操作して、
 浮上速度をコントロールします。
 水面まで浮上したら、
 フィンキックをしながらオーラル給気でBCDに空気を吹き込んで下さい。
 この時、吹き込みは顔を水中に入れて、
 息継ぎは水面から出して行うと比較的楽に行えます。

3.まとめ

いかがでしたでしょうか。
これがはじめにプールや海洋自習で実際にやって頂く、
基本的なダイビングスキルになります。
言葉で説明すると難しいので、
今回はBSACにもご協力頂いて動画も併せております。

これから入門される方は準備として、
既に入門されている方は復習として、
ぜひ参考にして頂ければと思います。

最後に、
ダイビングはルールさえ守れば誰でも安全に楽しめるレジャーです。
そのダイビングを安全に楽しむためにも、
今回ご紹介したスキルをマスターして下さい。

『備えあれば憂いなし』
備えを持つことで安心してダイビングができるのです。
ぜひとも、
『ライセンスを取得するためだから』
『面倒くさい』
とか思わずに、
『安全の為』
と思って真剣に取り組んで頂きたいと思います。


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