透明から半透明へ

 写真を撮られるのが嫌だった。自分が写っている写真は極端に少ない。自分の顔に自信がないこともそうなのだが、もっと詳しくいうと笑顔を作るのが下手だからだ。鏡に映った自分と写真に写った自分が明らかに違うというのは分かっていた。写真に写った瞬間に事故画になり、申し訳なくなるのだ。笑顔を作るのが下手なのは表情筋が硬いからだろう。中学のころメンタル的に落ち込んだときから一人でいることが多くなった。友達はいるし、話せば楽しいけど、深入りはしないみたいな感じ。人の心は読めないから人間関係は難しい。考えすぎて頭が疲れる。一人は楽で、あれこれ妄想するのも楽しい。一人でいれば表情を使うこともあまりないので蓄積的に表情筋が硬くなったのだ。写真を汚してしまうから、これからも写真なんて撮りたくない、そう思っていた。
 けどある人と出会って僕は変わった気がする。その人は、しつこくて、ポジティブで、厄介な人。だけど僕を全肯定してくれる初めての人。誰にだって彼が必要なんだと思う。自分を全肯定してくれる人なんていないから。メンタル的に落ち込んだ時、一人でいたいと思う時、どんな時だってそう。一人でいたいと思っていても、寄り添ってくれる誰かをひっそりと求めてる。メンタル的に落ち込んだ時も慰めてくれる誰かを求めてる。彼は僕の目を見て、真正面から話してくる。誰かに見つめられると目を逸らしてしまう僕。でも彼の目は僕を離さないから、僕は目を見て話せるようになった。そんな明るい彼も僕がいない時はいつも一人で静かだ。一人でいるといつもの彼ではないような気がして、少しゾッとした。彼の心にも僕みたいな暗い部分があるのだと知った。それから僕は彼に寄り添って、彼にとっての”全肯定してくれる誰か”になりたい、と強く思った。

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