満島ひかりに導かれ、推したい社歌にたどりついた男の哀歌|Liner-note
満島ひかり主演の映画『川の底からこんにちは』の真骨頂は、シジミ加工の「木村水産」の社歌を、白い防菌服を着た従業員全員が取り憑かれたように熱唱するシーンだ。
という具合のイカれた歌詞を、叩きつけるようなピアノの旋律にのせ、父から受け継いだ絶体絶命の工場の社歌を刷新した佐和子(満島ひかり)。みんな気だるそうに歌うふりだけしていた古い社歌のときとは大違いだ。
佐和子がどん底まで追い詰められた末に開き直り、腹をくくって逆境に立ち向かうのと歩調を合わせるかのように、会社の業績もおばちゃん従業員たちとの人間関係も上向きになっていく。
これぞ社歌の強さ・・・なんて視聴時はまったく思わなかったが、改めて検索してみると、世の中には社歌を持つ企業が意外と多いことに気がついた。その会社の理念や精神などを盛り込んだ歌を、社員が歌うことで労働意欲をあげようなんて、時代錯誤も甚だしいって思っていたら、そういう校歌調・軍歌調の社歌は減っているらしい。コーポレートアイデンティティやブランディングの効果を社歌に求めているのだそうだ。
歌詞を社内公募する事例が多いのも最近の傾向だ。バンドや吹奏楽部の経験者、パソコンソフトで作曲する趣味を持つ人、ダンスや映像編集の経験をもつ若手社員なども活躍できる。営業系や企画系、技術系など部門の垣根を越えて社員が集まると、異なる意見が議論を生み、会社の風通しもよくなるという寸法だ。
深い、深いぞ、社歌の世界! だからなのか、日経新聞社が毎年、全国社歌コンテストを開いているのは!
てなわけで、社歌を武器に「#推したい会社」に乗り込むぞ!
推したい社歌その1 株式会社ハイウェル
HR事業やプロモーション事業が事業内容で、「人と技術をつなぐ」ことを企業理念とする。本社は東京都港区赤坂。
90年代から活動を続けるトラックメーカー兼ラッパーのLIBROと餓鬼レンジャーのポチョムキンによるユニット“鶴亀サウンド”が斜め上を行く「社歌」をプロデュース!! とのこと。さすがに群を抜いて楽曲がいい。ラップらしいスピード感で、曲の長さもちょうどいい。社長が歌うバージョンもあるよ。
推したい社歌その2 株式会社一蘭
飲食店業・サービス業として「天然とんこつラーメン」を提供する、博多を、いや日本を代表する大手ラーメンチェーン。本社は福岡県福岡市博多区。
一蘭の社歌は3年の月日をかけ、作曲・作詞・撮影のすべてを従業員が担当してつくりあげた。「世界中にとんこつラーメンの美味しさを伝えたい」という想いを同じくし、離れていても互いに手を取りあい高め合っている社風を表現した、とのこと。アジアンのようなスコティッシュのようなアレンジで、坂道系アイドル歌謡風のメロディラインが嫌味なく心地よい。
推したい社歌その3 やしまグループ
中国地方(広島、島根、鳥取、山口、岡山)に12店舗を構える呉服店。本社は株式会社ナカスカコーポレーションといい、広島県広島市中区在。
「笑顔と笑顔の真ん中に~smile for you smile for me~」というタイトルがついている。社長か誰かが河合奈保子のファンだったのかな。ソフト演歌調の楽曲で、成人式をとおした家族の絆や振袖の華やかさを伝えたいという思いが詰まっている。振りが盆踊りみたくて、懐かしくもかわいい。
うん、社歌っていいかも。毎朝みんなで斉唱すると、なにかが変わりそうな予感・・・ 誰か弊社にティアーズ・フォー・フィアーズ(Tears for Fears)の「Shout」みたいな社歌をつくってくれませんか?