#2 非日常を求めた日
前回投稿した「#1 非日常を求めた日」の続きです。
前回は只見駅に到着したところまで書きましたので、今回はその続きです。
到着
念願の只見駅到着である。
当時はまだ全線開通していなかったため、乗客は目的地に関わらず一旦下車する。とは言っても、乗客は私含めて2人しかいなかったが。
ワクワクしながらホームに降り立つと、四方を山に囲まれていながらホームの周りはいくつも線路が敷かれていて開放感さえ感じた。
鳥の鳴き声、木々のざわめき、そこに加わる気動車のディーゼル音。
相対する音のようではあるが、そこに違和感はなかった。
一通り写真を撮って満足していると、小出へ向かう折り返しの発車時刻となった。
このとき、次に気動車に乗れるのがいつなのか分からなかったため、只見⇔小出の往復切符を買ってもう一往復しようか直前まで迷っていた。
帰りの新幹線の関係上、この折り返し列車を逃すと、私にとっての終電は次発の列車になってしまうため、乗車を優先するか観光を優先するかかなり悩んだ。
なかなかに狂っていたと思う。
しかし、実際に只見に降り立ってみて、只見の空気に触れて、私の只見そのものに対する興味が大きく膨らんだ。
駅舎の向こうに一体景色が広がっているのか気になった。
気づくと私は発車する列車を駅員と共に見送っていた。
駅舎へ向かう。
簡単な検札を終えて、駅舎の中を見渡すとなかなかに趣のある建物である。
木を基調としていて温かみ、やさしさを感じた。
これは後々只見駅周辺を観光しても思ったことだが、只見駅周辺は自然と調和した構造物が多かった。
田舎特有の現象かと当時は思っていたが、地方の大学に来てからもあれほど自然と調和した地域には未だ出会えていない。
駅舎の中には観光案内所も併設されていた。
事前調査でレンタルサイクルを借りれるという情報を得ていたので、早速レンタルサイクルを借りた。
たしか500円程で借りれたと思う。
レンタルサイクルを借りると、只見駅のオリジナル付箋、マスキングテープを貰えた。500円で自転車を借りたら、明らかにそれ以上のプレゼント、思わぬサプライズを受けた。
自転車も手に入れ、いよいよ只見での探検が始まる。
探検
観光案内所で地図を手に入れ、目的地を決める。
帰りの列車までは十分に時間があったため、只見駅から13kmほどの「深沢温泉 むら湯」へ行くことにした。
金山町のかねやまふれあい公園で大志集落と只見線の写真を撮ろうかとも思っていたが、ママチャリでは遠すぎたため断念した。
只見駅を出発するとすぐに国道252号と国道289号の交差点があり、どうやら只見の街はこの交差点を中心に機能しているようだった。
交差点を抜けて国道289号線を走り始める。
伊南川に沿ってひたすらにまっすぐ走る。
道中、人とはほとんどすれちがわなかったが、それでも人間の生活の痕跡が多くあった。
さらに走り続ける
廃墟のようなスーパーがあった。
「只見ショッピングセンター」と消えかかっていた文字は、閉店からの時間経過を物語っていた。
ある日、忽然と人間だけが消えたような空間だった。
生活の基盤だったであろう時代の物陰がただ一人広い駐車場にいつまでもたたずんでいた。
さらに進むと温泉が見えてきた。
ここまで川に沿ってアップダウンの少ない緩やかな道を漕いでいたのに、最後の最後で上り坂が。
温泉に入って汗を流すんだと自分に言い聞かせながらなんとか温泉に到着!
来た道を振り返ると、そこに只見駅の面影はなかった。
ふと、全く縁もゆかりもない地に立っている実感が湧いてきた。
感傷に浸るのもつかの間、高くなる太陽に合わせて上昇する気温
6月にしてはなかなかに暑い日だった。
温泉もなかなかによかった
鉄分を含んだ特徴的な茶褐色のお湯で、源泉かけ流し。
露天風呂はないものの、ガラス張りになっているため雄大な自然を見下ろすことが出来る気持ちの良いお湯だった。
汗を流して体で自然を体感した後はやはり味覚である。
会津の名物の一つに「ソースかつ丼」があるらしく、いままでかつ丼しか食べたことがなかった私は楽しみだった。
只見駅のすぐ近くにレストランが開いていたのを思い出した私は次の目的地をそこに設定した。
のんびりと来た道を戻っていると、往路では気づかなかった祠や沢を多く見つけた。
駅前まで戻ってくると和風レストラン「まほろば」がまだ開いていた。
ソース煮込みかつ重をいただいた。
朝早く家を出て、自転車をたくさん漕いだため、ペコペコのおなかには十分な量だった。
普通のかつ重と違い、ソースで煮込まれているため、味が濃くてとてもおいしかった。
帰りの列車までもう少し時間があったため、もう少し駅の周りをまわってみよう。
今回はここまで。
最後まで読んでいただきありがとうございます。
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