言霊封じ

 大学3年の秋、暇すぎてサークルの部室でゴロゴロしていると扉を開けて見知らぬ男性が入ってきた

 部室には俺しかいないため、面倒だと思いつつ応対する

こんちは~
見学か入部希望?それとも人探し?

 知らない人が部室に来る理由なんて大体こんな所だろう

あの、松尾さんは今日来られますか?

松尾 聡真なら俺だけど…

あっ、そうなんですね
はじめまして松尾さん、僕は草間隼人って言います

 自分で言うのもなんだが、俺は見ず知らずの人間が訪ねてくるような特別な人間ではない

 それに何か問題を起こした覚えもないため、何の用なのか皆目見当もつかない

草間君ね、俺に何の用?

松尾さんに相談したいことがありまして

相談?俺ら初対面だよな?
なのに何で俺なんかに?

 大学生にもなると怪しい勧誘は付き物だ

 相談と言いつつそういった類いのものである可能性を考慮し、警戒する

友人に話したら松尾さんに相談してみたらと言われまして

これまた何で俺の名前が出たんだよ

 この発言でより一層警戒心を強めたが、次の一言で合点がいった

松尾さんがオカルトに精通してるとのことで

 たしかに俺はオカルトが好きで、普段からその手話を聞き回っている

 そのためテンションが上がり、自然と警戒心も薄れた

それならそうと早く言ってくれよ~
でも一つ訂正な?
俺はオカルトが好きなだけで精通はしてないから
一般人よりは詳しいと思うけど、それでもいいか?

えっと…

 そうとう困っているのだろう、俺の言葉に草間は迷っているようだ

俺じゃ解決できない時は知り合いの霊能者に相談するから安心しなよ
ただ、本人はあんまりその事を知られたくないらしいから最終手段だと思って欲しい
まぁそいつが解決できる保証もないけどな

 それならばと草間は了承してくれた

てか俺を紹介したっていう友人は来てないの?

はい、どうせ暇人だから部室に行けば会えると聞いたので一人で来ました

はぁ?暇人なのは認めるけどさぁ…
誰だよ、そんな失礼なこと言うヤツは?

 その問いに対し草間が口にした名前を聞き、俺の頭には疑問符が浮かんだ


2ヶ月前に祖父が亡くなったんですが、多分それが切っ掛けなんです
と言っても亡くなって数日は何もありませんでした
それが起きたのは納骨を済ませた日の夜からでした
突然、天井から祖父の怒声が聞こえてきたんです
「出ていけ」って

 部室では落ち着かないだろうからと駅前のカラオケに移動した俺たちは、歌も歌わずに話をしていた

それからは時間を問わずほぼ毎日一度は聞こえてきて、多いと日に四度も聞こえてくるんです

それは毎回「出ていけ」って言うの?

いえ、僕が知る限り「出ていけ」はその一度きりで、他は大抵「殺すぞ」や「失せろ」、「消えろ」や「去ね」という感じです

なるほど、生前お爺さんと家族は仲悪かったの?

いえ、仲は良かったですよ
なので出ていけと言われる理由が分からないんです

てか、お爺さんと一緒に住んでたん?

そうですよ
なので今も代わらず祖父と住んでた家で生活してます

じゃあその家を出たら解決じゃん

それが出来れば良いんですけど、如何せんそんなお金の余裕はありません

そりゃそうか、金で解決出来れば苦労しないわな
うーん、その声は住民じゃなくても聞こえるんか?

はい、綾人にも聞こえていたので誰でも聞こえると思います

ふーん、そうなんだ…

綾人に話す前に住職にも相談したんですが、その人にも聞こえてましたね

住職が見てんのに解決しなかったんか

えぇ、住職は死後に幽霊になることはないと言ってました
四十九日を迎えれば自然と聞こえなくなるだろうと
今日で死後60日ですが、未だに聞こえ続けていますよ

 そう話す草間の声からは怒りの感情が読み取れる

でも怒鳴り声がそんな頻繁に聞こえるなら近所からクレーム来て大変だよな

あぁ!言われてみればそうですね

何が?

今まで考えもしませんでしたが、クレームが来たことはありません

一度も?
じゃあ録音は?

録音なんて思い付きもしませんでした

じゃあ怒鳴り声が聞こえるようになってから家で写真や動画を撮ったことは?

どちらもありません

じゃあ生前のお爺さんについて気になるところはなかった?

気になるところ?

変な宗教にハマってたとか、急にゴミを集めてくるようになったとか、おかしな死に方をしたとか何でもいいからさ

死因は癌なのでおかしなことはないですが、癌と診断されてから頻繁に出掛けるようになりましたね
しかも一人で

どこに行ってたか知ってる?

えぇ、はじめは教えてくれなかったのですが、しつこく聞くと家の裏にある山だと教えてくれました
流石に何をしてるかまでは教えてくれませんでしたけど

行く時や帰ってきた時の様子に変わったところはなかった?

そういえば帰ってきた時にカチカチと変な音を鳴らしていました

カチカチ?

はい、軽くて固い物がぶつかるような音でした

ふーん、他には?

他は…特に思いつきませんね

そっか、あとは現地に行ってみてだな
いつ家に行ける?

いつでもいいですよ
なんなら今日でも

今日は急すぎるわ
少し準備したいし
早い方がいいなら明日だな

じゃあ明日でお願いします


 翌日訪れた草間家は後ろに山がある少し古い二階建て一軒家だった

 隣接している民家があるため、離れているから怒声が聞こえないということも無さそうだ

昨日聞き忘れたんだけどさ、お爺さんは霊感があったりした?

それは分かりませんが、僕も両親も霊感はないので祖父も同じだと思います

そっか…とりあえず今日は撮影と録音をしながら怒声が聞こえるのまで待とうと思う
庭にも機材を置いていいか?

はい、問題ありません
それにしてもこんなに大量の機材どうしたんですか?

 俺が持ってきた録音機とデジカメを見ながら草間がそんなことを言う

綾人に頼んでサークルの備品を借りてきた

あぁ、映画研究部ですもんね

そゆこと



よし、これで最後だな 

 適当に雑談をしながら機材の設置を終える

じゃあ後は声が聞こえるまで待機だな
予備のバッテリーも少な

 俺の言葉を遮り、まるで準備が終えるのを待っていたかのようにその声は聞こえてきた

去ね!

 突然の怒声に俺と草間の肩が跳ね上がる

 しばらく沈黙しながら周囲を警戒するが、他に異常は見られなかった

松尾さんにも聞こえましたよね?
今のが例の怒声です

 草間は不安げな表情で俺の様子を伺う

あぁ、ちゃんと聞こえたよ
本当にこんなことがあるんだって驚いてる
とりあえず映像と録音を確認しよう

 俺達は手分けして機材をリビングに集め、その内容を確認する

 録音、録画自体は成功していたが、先ほど聞こえた怒声は記録されていなかった

何で…あんなにハッキリ聞こえてるのに…

 わなわなと震える草間に、落ち着けと声をかける

心霊関係なら良くあることだよ
声が入ってないのは単に物理的な音じゃないってだけ

物理的じゃないってどういうことですか?


音ってのは要は振動だ
振動なら物理現象だから専用の機材なら録音できて当然
でも物理的じゃない、霊的な現象としての音だと録音出来ないことがあるんだよ


出来ないことがある?
と言うことは霊的な音でも録音することも可能ということでしょうか?

いくつか条件はあるけど、実際に霊的な音が録音されることもある
まぁ今回は関係ないから説明はしないけど
それより手伝ってくれない?

 録音だけでなく録画にも何も映らなかったため用済みと判断し、機材を片付ける

そう言えば怒声が聞こえる時の条件みたいなのってあるんか?

家族でも話したことがありますが、共通点は見つかりませんでした
今まで怒声が聞こえてきた時の状況を話しましょうか?

 一応聞いてはみたものの、共通点は分からなかった

 もう他にやれることが無いため、最後の提案をすることにした

じゃあそろそろ、声の発生源だって言う天井裏に行きますか

天井裏ですか?
別に構いませんけど、前に確認した時には何も有りませんでしたよ?

 聞いてねぇよと思いつつ、2階へと向かう

そう言えば1階と2階で声の聞こえ方が変わったりするの?

いえ、全く同じです
それどころか階数に限らず家のどこにいても同じ様に聞こえますね

そっか、やっぱり物質的な音じゃないな

 椅子を使ってクローゼットから屋根裏へと入る

 屋根裏特有のモワッとした空気が体に纏わりつく

 不快感を覚えつつ、スマホのライトで探索する

おい、何もないって言ってたけど見るからに怪しいのがあるじゃねぇか

 家の角っこの柱に麻紐で縛り付けられている箱を照らし、呆れながら指摘する

それは棟札が納められている箱なので怪しいものではありませんよ

棟札が?何で箱なんかに入れてんの?

 棟札とは建築や改築の際、誰がいつ何故行ったのかが書かれている木札のことであり、通常それらは箱に入れずに棟木に縛りつけられている

この前父から聞いたんですけど、この地域では棟札を箱に納めるらしいです
理由までは知りませんけど、上棟式の際に使用した盃等を一緒に入れてるんだとか
それと我が家は何度か改築しているので棟札もひとつじゃありません
これ以外にも

 そう言って草間が指し示したのは、三ケ所ある残りの角っこだった

それっておかしくないか?
細かいことは忘れたけど、棟札って確か決まった方角に向けるはずだろ?
でもここのは四方に向けてあるじゃんか

それには父も疑問を持ってましたね
本来は棟木につけるものなので
でも大した理由はないだろうとのことでした

なぁ、ちょっと開けてみてもいいか?

えぇ、構いませんよ

 返事を聞き、箱を押さえながら麻紐を解く

ゴロゴロ

 箱を手に取ると中の物が動く感触と共に、手にずっしりと重さが伝わってくる

やっぱしこれ棟札じゃねぇぞ
そこそこ重いし、中から音がする

 草間にも分かるよう、手に取った箱を振ってみせる

本当ですね
音の感じからして、もしかしたら宝石かもしれませんね

 残りの箱も確認すると同様にゴロゴロと音がする

 箱は全て釘打ちしてあるため、それらを持って屋へに戻る

じゃあ開けるぞ?

 借りた釘抜きで箱から釘を抉り取り、草間に確認する

 返事を聞いた俺は、大袈裟に蓋を開け放った

 そこからの記憶がない

 気がついたら俺と草間は病院にいた

 草間の母が部屋で倒れてる俺達を発見し、救急車を呼んだらしい

 色々と検査したが悪いところは見つからなかった

 しかし様子見のため一晩だけ入院することになった

なぁ、箱を開けた後のこと何か覚えてないか?

 同室になった草間に聞いてみる

ハッキリとは覚えてませんが…祖父の怒鳴り声を聞いた気がします
それも、とてつもない音量の

それが本当なら俺達は運が良かったな

運が良い?

物理的な音だったら鼓膜が破けて、しばらく会話はお預けだからな


 それから数日後、俺は綾人を連れて草間ん家に来ていた

なぁ、本当にこの家から何も感じないのか?

あぁ、やっぱり何も感じなぁ…うん?

なんだよ?

いや、良く見ると少し違和感あるかも
前は気づかなかったけど…やっぱりちょっと変だなぁ

 本人は隠しているが綾人には霊感があり、対処の術も心得ている所謂霊能者だ

やっぱりか!
それで何が変なんだ?

うーん…言語化するのは難しいなぁ…

 先に入ってろと言うのため、草間の部屋でこの前開けた箱を見せてもらう

 蓋の裏には梵字のようなものが書かれており、箱の中には二つに割れた石が敷き詰められていた

全部表面が滑らかだ…
なぁ、この辺に川はあるか?

小川でよければ裏の山に

やっぱりか…
でも何で石が割れてんだ?

僕らを見つけた時には既に割れていたそうです

うーん、出来れば他のも開けたいけど、また倒れても困るしなぁ

そういえば綾人は何してるんですか?

さぁ?
先行ってろとしか聞いてないから

 割れた石に慎重に触れながら答える

断面もかなり綺麗だ
割ってから箱に入れたのか、箱に入れてから割れたのか…
後者なら湿度の関係か?
でも桐箱には調湿機能があるって聞くしなぁ

 箱に入れられていた石を全て取り出すと、一つ残らず二つに割れていた

やっぱり全部となると不自然だよなぁ…
こっちは何か呪いの類いだろうし

 箱の内側には蓋の裏にあるのと同じ、梵字のようなものが書かれていた

石には悪い物もあると聞くし、それを集めて家族に復讐してるのか?

 ぶつぶつと独り言を呟きながら考え事をしていると、例のごとく怒鳴り声が聞こえてきた

失せろ

 それを聞いた俺は、草間と顔を見合わせた

 それと同時にパキッという何かが割れたような音が閉まっている箱から聞こえてきた

今、箱から声が聞こえませんでしたか?

やっぱそうだよな?
しかもその後パキッて…もしかして

聡真、帰るよ

 いつの間にか家に上がっていた綾人から声をかけられる

えっ?何でだよ?

今日外せない用事があったの忘れててさ
すぐ戻らないと

 そう言いながら綾人は俺に目配せする

 草間には綾人が霊能者であることは教えていない

 綾人が今日来たのは、俺がこの前草間家で倒れたのを心配して運転手を買って出たと言うことにしてある

 本当は俺がお願いして再度霊視をしてもらっていたのだが、何か分かったのだろう

足がそう言うならしゃあねぇか
ごめんな草間、また連絡する

 そうして草間家を後にする

 帰りの車内で綾人が見たものと俺の聞いたものを合わせることで、ある仮説を導き出すことが出来た


 再度、草間家を訪れたのはそれから3日後のことだった

今回、隼人さんからご相談いただいていた怒声について、分かったことを基に立てた仮説をお話ししたいと思います

 草間も彼のご両親も緊張しているのか、表情が固い

まず、聞こえてくる怒声はお爺様のもので間違いありません

じゃあ祖父の幽霊がいるってことですか?

 草間の母が焦ったように質問する

いいえ、幸か不幸かお爺様の霊はここにはいません
それは霊能者に確認して頂いてます

えっ?いつの間にそんなことしていたんですか?

 今度は驚いたように草間が声を上げる

前に録画した映像を霊能者に見てもらったんだ

 もちろんこれは綾人が霊能者であることを隠すための嘘だが、それに草間は納得したようだ

既にご存知だと思いますが、怒声は屋根裏で見つけた箱から聞こえてきます
そして箱の中には恐らく石しか入っていません
これらは裏山にある小川から持ってきたものだと思われます

もしや、父はその石に憑いているのでは?

 今度は草間の父が口を挟む

当たらずとも遠からずと言った感じでしょうか
山や川にある石には時として霊的に力があるものが存在します
恐らくお爺様は力のある石を選別し、言葉を吹き込んだ

言葉を…何故そんなことを?
我々は父に恨まれるようなことをしたのでしょうかか?

いえ、お爺様は皆さんを追い出そうなんて考えてませんよ
むしろ守ろうと結果だと思われます

 俺の言葉に全員がきょとんとする

守る?
あんな怒声を上げているのに、いったい何から守ろうというのでしょうか?

それは霊道を通ってやってくる浮遊霊ですね

霊道?この家に霊道が通っているんですか?
そんなの初耳です

霊感がないなら、知らなくて当然
ですが、霊感がなくても霊の影響は受けてしまう
お爺様はそうならないために石に言霊を込めて術を施し、箱に封じたんです

だとしたら怒鳴り声を、脅すような言葉を石に込めたのは何故でしょうか?

それは霊を追い払うのに脅し言葉が有効だからでしょう
怒鳴っているのは効力を高めるためだと思われます

なるほど、しかし何故祖父にそんなことが出来たんでしょうか?

恐らくですが、お爺様には霊能力があったのではないでしょうか?

 俺の言葉を聞き、草間の父があっと声を上げる

そう言えば母が生前そんなことを言ってた気がします
たしか、母と結婚するまでは定職につかず、拝み屋を生業にしていたのだとか

なるほど、合点がいきました
先ほど話した霊道ですが、実はほとんど消滅しているようなんです

霊道が消滅?
そんなことがあるんですか

霊能者曰く、意図的な消滅としか説明できないほどにか細く、よく見てもうっすらとしか分からない状態とのことです
お爺様は癌だと判明した際に霊道を消滅させようとしたが、完全に消すことは出来ずにうっすらと残ってしまった
消えかけのため霊が通る頻度は低いが、このままでは遺された家族が霊の被害に遭いかねない
そのため山にある力のある石に言霊を吹き込み、術を施した箱に入れ、屋根裏の四隅にくくりつけた
遺された家族を守るために
正しいか分かりませんが、以上が僕の立てた仮説になります

 俺の仮説を聞いた両親は顔を見合わせ、困った顔をしながら何かを考えている様子

 そんな両親より早く草間が口を開く

なぜ僕らは箱を開けた後に気を失ったんでしょうか?

病室で大きい怒声を聞いたって言ってよな?
あの箱にどれくらいの石が入ってたか分からないけど、それらが一斉に声を発したとしたら箱を開けた俺らが気絶するくらいの影響があっても何らおかしくない
憑依や除霊のように人と霊は相互に干渉出来るしな

 草間はなるほどと言い、俺の説明に納得したようだ

ちなみに石は一回使いきりだと思います
霊が来たら言霊を発して石が一つ割れるっていう感じですね

あの…

 先ほどまで何かを考えていた草間の父が口を開く

それで我々はどうしたら良いのでしょうか?

どうしたらとは?

 含みのある言い方だったため思わず聞き返す

霊道があるなら出ていった方がいいのかなとか、父がそこまでして守ってくれてるなら残った方がいいのかなとか、色々と考えてしまいまして

なるほど…
ですが、それは僕が決めることではありません
家族で決めるべきことです
霊道があることや、僕のせいで箱が一つ減ったことなどで不安なのは分かりますが、安心してください
霊能者曰く霊道は直に消滅するとのことなので、ここに残ったとしても問題はないはずです


それで結局どうなったの?

爺さんが守ってくれてるからってことで引っ越さなかったみたいだぞ
まぁ金がねぇから引っ越せないって聞いてたし、それが理由かもだけど

なるほどね
まぁ二箱あれば事足りるだろうし、いい判断だったんじゃない?

 草間の相談が解決したため、俺は綾人と二人で焼き肉屋に来ていた

そういえばさ、何で草間の相談を俺に投げたんだよ?
今までは何かあるならこっそり解決、何もなければ放置してたろ?

前にも言ったけどさ、はじめて草間の家を見た時には何も感じなかったし、見えなかったんだよ
それなのに声だけは聞こえたから訳分かんなくてさ
俺って見えて祓えるだけで知識ないじゃん?
だから俺の霊感を知ってて尚且つオカルトに詳しいお前の意見を聞きたかったんだよね

草間にも言ったけど好きってだけで特別詳しいわけじゃねぇぞ?

まぁそこは反省してるよ
倒れたって聞いた時は俺も焦ったし
知識があっても霊感がないと本物かどうか分からないし

そう言うならお前も一緒に来いよな

いや、今後も俺は霊感を公言するつもりはない
だから表だって見たり祓ったりは絶対にしない

はぁ?んじゃ今回の協力料…
いや、慰謝料として今日は奢って貰うからな

あぁ、もともとそのつもりよ
事前に話さなかった俺も悪かったし

よしきたっ
すみませーん、この希少部位食べ比べ3人前くださーい

ちょっと待てよ!
流石に限度があるって!

 焦る綾人をよそに、俺は遠慮なく高い肉を注文し続けた

 それからしばらくは綾人に会うたびに恨み言を吐かれるのだった

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