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ソフトバンクG、繰り返す法人税ゼロ、税制見直し議論も

税負担の軽さについて、現在の税制が妥当なのかなど議論を呼ぶ可能性

ソフトバンクグループ(SBG)に2007年3月期以降の15年間で、法人税が生じたのは4期だったことが日本経済新聞の取材で分かった。「法人税ゼロ」の年が繰り返されたのは、税法で非課税となる配当が多いためとみられる。合法な税務処理だが、税負担の軽さについて、現在の税制が妥当なのかなど議論を呼ぶ可能性もある。

今回のように会計上の利益と実際の法人税額が極端に開いた例が明らかになるのは珍しい

一部の専門家は「税負担が軽すぎるとの不公平感から、税制や納税状況の説明が十分かという議論につながる可能性がある」と話す。

収益の大半が子会社などからの配当金

課税がわずかな理由は、収益の大半が子会社などからの配当金という、純粋持ち株会社として独特の収益構造の影響が大きいとみられる。現行の日本の税法では原則、3分の1超の株式を持つ国内子会社からの配当金には税金がかからず、海外子会社からの配当金も95%が非課税となる。

税務と会計

ソフトバンクグループSBGは非課税収入が多いだけでなく、税務上の赤字(欠損金)が積み上がっているのも特徴的だ。こうした手法には「税制の抜け穴」との指摘も上がった。国税当局や財務省はその後、「ソフトバンク税制」と呼ばれるルール改正に着手。20年度税制改正で子会社からの配当と子会社株式の譲渡を組み合わせた節税策を封じた。現在、税務上の繰越欠損金は10年間有効だ。SBGに今後、課税所得が発生しても当面は欠損金と相殺され、税額が圧縮される。

専門家から違和感

財務省で法人税制の改正に長く携わった朝長英樹税理士は「適法でも兆円単位の利益のある会社が何年も法人税額がゼロなのは違和感がある。制度に問題がないか検討すべきだ」とみる。企業税務に詳しい弁護士も「これほど法人税が少ないと、自社の株主には還元するが日本国には還元しないとも解釈でき、バランスが悪いと感じる」と話す。米国が大企業への課税強化にかじを切るなど、海外でも法人税制の強化が目立つ。業種による税負担の不公平感の解消も課題となっている。

納税情報の開示を巡る課題も浮かぶ

SBGの場合、会計上の利益が多い自社単体の納税情報はほぼ非公開とする一方、傘下で事業会社のソフトバンクや同社の関連30社分などはまとめて開示している。「納税が多い企業分だけ開示している」とみられる可能性もある。

#日経COMEMO #NIKKEI

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