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「国境の南、太陽の西」消えていく女たち。

この作品は「島本さん」の物語と言っていい。
村上作品では、よく女の人がいなくなってしまう。この作品もそうなのだけど、ここまで恋愛というか、女性との関わりがメインの作品も珍しいような気がする。最終的には島本さんは雪女のように、民話とか、昔話みたいな消え方をしてしまって、うっすらと寒気すら感じる。男と女が夫婦というチームを維持していくことの難しさについても考えてしまう。
島本さんは、結局どういう疾患だったんだろう?と職業柄考えてしまう。おそらく呼吸器系だと思うが、いや、自己免疫疾患か?ほかにも、島本さんの謎だった部分を読み終えた後もふと考えてしまう。結局、島本さんはどこから収入を得ていたんだろう。収入というか、そもそも島本さんは専業主婦で、夫が海外出張の期間だけ会いに来ていたのか?とか。最後どうやって帰ったんだろ。とかイロイロ考えてしまう。

作中で主人公が経営するバーの情景描写は素晴らしい。カクテルとちょっとした料理、ジャズの生演奏が聴ける。村上春樹自身がそんなお店を経営していたので、情景描写がうまいのは当然なのかもしれないが、こんな店があれば行ってみたいと思う。作品全体に流れるBGMは作中に何度も出てくるDuke Ellingtonの「The Star Crossed Lovers」。

そして、この作品でも主人公が毎日毎日プールに行き、ひたすら泳ぐ場面が描かれる。村上春樹自身がよく泳いでいるからだろうが、ほかの作品でも同じようにひたすら泳ぐ場面が度々描かれている。読んでいるとこっちもプールに行きたくなってくる。この作品も村上作品のなかの「読むとプールに行きたくなる作品リスト」に加えておきます。


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