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【カフェ】Jazzy'sspeakeasy spicy curry&good coffee
仕事の合間にジャズ喫茶でランチを頂くのが最近のささやかな幸せだ。
営業という仕事柄東京都内をぐるぐると回遊魚のように動き回る。
ランチタイムに外回りをしているときは、決まって「ジャズ ランチ」で検索をかける。
スマートフォンが(より正確に言うとグーグル先生が)、丁寧に現在地付近の人気ジャズ喫茶を紹介してくれる。
この日は電車の乗り換えで表参道にいた。
先生が教えてくれたのは、「Jazzy's speak easy spicy curry&good coffee」という長い名前のお店。
「ジャズ好きにはおすすめできるお店」という見知らぬ誰かのカスタマーレビューを信じることにした。
青山通りを表参道から外苑前へ向かって歩く。
青山三丁目交差点を右に曲がり、外苑西通りのゆるやかな坂を下っていく。
初めて見る景色に高揚感と少しの緊張が入り混ざる。
あいにくの雨に強い風。
悪天候の日にわざわざジャズ喫茶を探さなくてもいいのになと思う。
行方不明の子猫を探しているわけではないのだから。
大通りから少し脇に入ったところにそのお店はあった。
駅からは10分少々で到着。
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エスニックともアールデコとも異なるユニークな外観。
シンプルな外観を好む私が入店するには勇気が必要だったが、時計と相談した結果、入ることに決めた。
それに猫飼いとしては、猫をモチーフにした看板にネガティブな感情を抱けない。
きっと良い店に違いない。
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入るなり、「雨の日なのに、どうも。」と、女性スタッフが温かく迎え入れてくれる。
とても良い接客だ。
内装はロリータ要素が含まれた不思議な空間。
雑多だけど、清潔感は損なわれていない。
絶妙な均衡が妙に心地良い。
「一人です。」と言うと、カウンターに通された。
さて、何を食べようか。
ランチメニューから定番のスパイシーチキンカレーをオーダーする。
店員は案内してくれた若い女性の他にママであろう女性(50代くらいだろうか)と齢80超と思われるマスターの合計3人。
ママは接客とカレー作りを担当しているようだ。
ちゃきちゃきとした機敏で無駄のない接客に好感が持てる。
客が来るたびに「〇〇ちゃん、久しぶりだね。何する?いつもの?」と声を掛ける。
大通りに面していないため、常連客に支えられているのだろう。
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小盛りにする代わりに雑穀米にしてもらった
長老然としたマスターはカウンターの目の前でコーヒーを入れている。
時折レコードを交換して、お店の雰囲気を微調整している。
新しいレコードに針を落とすと、レコードジャケットが客先から見える位置に立てかけてくれる。
マイルス・デイヴィスだ。
身を乗り出すようにジャケットを見ていると、
「ジャズ、お好きですか。」マスターが一言。
古い雑居ビルの裏手で長年働き続けた室外機のようなしわがれた声。
新品のトランペットでは奏でることは到底できない味と癖のある音色だ。
好きでよく聴いています、そう答えると、嬉しそうに奥からCDを手渡してくれた。
「『1958マイルス』、聴いたことはありますか。」
かぶりを振ると、
「これは素晴らしいので、聴いた方がいい。」とヴィンテージトランペットが教えてくれる。
慌ててスマートフォンを取り出し、Apple Musicで検索してみると、見つからない。
サブスクリプションにはないアルバムだ。
メンバーは、
マイルス・デイヴィス(Tp)
ジョン・コルトレーン(T.sax)
キャノンボール・アダレイ(A.sax)
ビル・エヴァンス(Pf)
レッド・ガーランド(Pf)
ポール・チェンバース(B)
ジミー・コブ(Dr)
フィリー・ジョー・ジョーンズ(Dr)
1950〜60年代のジャズを大いに盛り上げたレジェンドばかりだ。
「すごいメンバーですね、これは。」とCDの裏ジャケットを眺めながら呟く。
「えぇ、そうでしょう。」
気を良くしたマスターは、他にもいくつかマイルスのアルバムを教えてくれた。
ひけらかすわけではなく、CDの音質について無邪気に語るマスターを見ていて、気づけばファンになっていた。
長生きしてほしいな。
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ジャズにはコーヒーが合う。
なぜだろう。
副交感神経を刺激して、穏やかな昼下がりを演出してくれる。
良いお店だった。
表参道に来ることがあれば、またマスターの顔を見よう。
スパイスでじんわりと汗が滲んだワイシャツの胸元を右手でパタパタと扇ぎながら、再訪を誓った。
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