【最終回】"Entrée" behind-the-scenes⑫トゥナイト
1曲ずつ、ストーリーの断片や解説を散りばめながらのコメンタリーを書いてきましたが、今回が最終回です。
2018年1月24日release 1st Album『Entrée』12曲目に収録、「トゥナイト」です。
この曲だけ、かなり前に作った曲なんです。
Entréeはほとんど書き下ろしだったからね。
10歳ぐらいで「秋風に吹かれて」という渋いクラシック曲を作ってから、
歌モノを作りだして、作曲に関しては困ったことや行き詰まったことがない僕が、まったく曲を作れなくなってしまった時期がありました。
それが、2014年1月。Bryan Associates Clubというバンドで、ボーカルとしてライブを月何本もやる日々の中で、その頃「ぼくは、自己内の葛藤や狂気についてしか説得力を伴っていないのか?」という自問にぶつかっていました。
そういう曲の時しか、ライブで伝わっている気がしなかったので、限界を感じていたのです。
でも...もしかしたら、自分に向き合うことを突き詰めて吟味して研磨したら、
いくとこまでいったら、相手のことや世界のことになるのかもしれない。
そう考えて、誰もがシンガロングできて、そして自分が音楽に証したいこと、社会や世情や歴史/戦争に対して思っていること、身近な愛に対して想っていること、「今夜、伝えたいこと」を曲にしてみようと。
3年間、そのバンドでは毎回ライブの最後に演る定番曲でした。
毎回欠かさず演った曲なので、リリースなくとも、B.A.Cといえば「トゥナイト」といった具合でした。
QUEENが必ずWE ARE THE CHAMPIONで締めたり、KISSがGOD GAVE ROCK'N ROLL TO YOUで締めるのが好きだったので、当時は終わりはこの曲、という歌で固定したかったんです。
ブライアン新世界を捨てて、戦ったBryan Associates Club。
そのBryan Associates Clubが終わり、ブライアン新世界に戻りました。
そして、BRIAN SHINSEKAIとしてスタートするとき、僕は一旦過去は置いて、
新しい音楽として、新人としてスタートしたかったので、
すべて書き下ろしの方が良いと思ったのです。
しかし、「トゥナイト」という楽曲だけは、まるで尾のように、
僕の後ろを色々な感情のアクセサリーをつけながらつきまとうような、そんな曲でした。
僕は、「トゥナイト」という楽曲を入れないと、この曲だけは例外として入れないと、前に進めないと気付いて
当初のEntréeのストーリーを壊してでもこの曲で締めくくろうと思いました。
サウンドプロダクションやアレンジや歌などはもちろんすべて新しく録り直しているので、別曲のようにも聴こえるかもしれません。
でも、この曲には、Entréeで唯一泥臭さがあるかもしれません。
人間臭さがあるかもしれません。
それは、狙ったものではありません。良くも悪くも、です。
でもきっと、「トゥナイト」がEntréeのリードとして世に出たことで、
BRIAN SHINSEKAIはスタートします。本当の意味で、スタートできます。
ダメダメだけどかわいがっていた教え子がようやく結果を出した時の、
先生の気持ちに近いのかもしれない(笑)
次回作は、すべての呪縛から解かれて、振り切ります。
リアルなBRIAN SHINSEKAIを、ぜひ楽しみにしていて下さい。
記念碑のような、活動始めて10年かかってリリースできた1st Album『Entrée』。
聴いて下さった皆さん、本当に有り難う。
心から、感謝します。
—最後まで、踊りが下手だったね。ステップも踏めなかったね。でも、今夜だけは、今宵だけは、踊らなくちゃいけないんだ。これが、僕たちのラストダンス。水から生まれて、水に還ろう。アンドロイドじゃない。心を潤せ。
踊ることとは、水になること。僕たちは、シリウスになるんだ。
今、ここが、『Entrée』。
BRIAN SHINSEKAI - トゥナイト Spotify
2018年、ビクターよりメジャーデビュー。シンガーソングライター/トラックメイカー。愛猫カールをこよなく愛す。ベイスターズと北欧料理に励まされるピアノマン。◆新曲「三角形のミュージック」MV→https://youtu.be/hKb500zLQCE