見出し画像

雪降る冬のパリで vol.1

 ブログを長期間、ほぼ毎日書いていましたが、その後何年も中断していました。なぜ、フランス・ブルターニュに惹かれ、暮らすことになったのか、改めて振り返ってみたいと思います。

雪の結晶は六角形

 20代前半、ひどく体調を崩した。だんだん食欲が落ち、脂っこいものは喉をとおらない。味噌汁や酢の物でご飯を流し込む。キーボードを叩いていた右手は腱鞘炎が悪化し指の曲げ伸ばしもままならない。お箸も持てなくなり左手でご飯を食べたり文字を書く練習をした。毎日マッサージや鍼治療に通いながら仕事を続けたが、自分の足で階段を登ることさえ辛くなった。

 「いつまで生きられるのだろうか」そう考えながら日々を送った。精神的にももう限界が近かった。そんな時、たまたま紹介されたドクターに命を救われた。だが弱っていた体が回復するには数年が必要だった。

 退職し思い切って短期留学した。選んだのはフランス。夏は費用が高いので出かけたのは真冬。2月の末だった。飛行場からバスに乗って眺めたパリ郊外。派手な落書きだらけで、寂れているというのが第一印象だった。

 その年は記録的な寒波で、パリは冷え込んでいた。どんよりとした空からコートにハラハラと落ちてきたのは大粒の雪。

 しかしコートの袖を見た途端、一瞬、驚きで寒さも忘れた。なぜなら絵本でしか見たことがない雪の結晶が何粒も舞い降りていたからだ。キラキラと輝く六角形の細い枝。

 「ああ。来てよかった」と思った。


 vol.2に続く



 

この記事が参加している募集

自己紹介

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?