見出し画像

LOG2 旅をするたび、固定概念から開放される 中国・成都

中国の四川省にある、成都(せいと)という都市を知っているだろうか。もしかしたらあまり聞き慣れない人が多いかもしれない。
四川というと麻婆豆腐が思いうかぶがまさにそれで、有名な陳(ちん)麻婆豆腐の本店もここ成都にある。花椒がピリリと痺れる、本格麻婆だ。

成都は成田空港から約4時間半から5時間ほどの飛行時間。旅行でこそあまり知られていないが、ビジネスで使われることが多い地なので出張が多いビジネスマンなら行ったことがあるかもしれない。時差も1時間なので移動も仕事もしやすいのだ。

また日本に旅行に来た中国の人たちにもよく利用される。中国の人たちをひとくくりにするのはあまり良くないかもしれないが、他の路線と違って中国路線にはいくつか興味深い特徴がある。

爆買い中国

少し前中国人の爆買いが話題になったのを覚えているだろうか。私が乗務していたときはちょうどそのときで、とにかく中国の方が飛行機に持ち込む荷物の量が半端じゃなかった。

特に日本製の炊飯器はとても人気で炊飯器を持ち込む姿が多くみられた。機内に持ち込めるぎりぎりの大きさの電化製品なのだ。

しかし機内の手荷物スペースには限りがある。私たち乗務員はその手荷物の手伝いを行うのも業務のひとつなのだけれど、なぜか中国籍のお客様はあまり乗務員を頼らない。というのも、中国の人たちはお客さん同士で手伝いあってくれるのだ。特に顔見知りというわけでもないのに、自然と助け合いの精神が機内で生まれている。

私は、その光景を見るのがとても好きだった。困っている人を助ける。そんな当たり前のことなのだけど、その姿が人間味があって優しくて、分け隔てなく関わり合うとても良い国民性だと思った。大きな声で豪快に助け合い、笑い合う姿はなんだか見ていて気持ちよかった。

あとで中国に留学していたことのある人から聞いたのだが、中国の人はそのときの出会いや縁をとても大切にするらしい。

「珍惜缘份」という、「ご縁を大切にする」という言い回しがあり、中国の人が大好きな言葉なんだとか。
出会いとは天のめぐりあわせであり、人の力ではコントロールできないものという考え方から彼らは「缘份」を非常に重視し、感謝するらしい。

なるほど、それが機内でも発揮されていたのだな。

牛乳大好き

機内で頼む飲み物といえば、やはりリンゴジュースや温かいスープ類ではないだろうか。
しかしなぜだか中国路線では牛乳のリクエストが多い。
日本の牛乳は美味しいと評判なのだろう。だが機内の飲み物ももちろん有限なわけで、とりわけ牛乳の搭載は少ない。コーヒーや紅茶とのお好みで使うものとして搭載されているからだ。

中国路線で隣の人が牛乳を頼んでいるのを見たら、次の人も必ず牛乳という。そしてそれを見た後方座席の人も牛乳を頼む。こうして、牛乳の連鎖が止まらなくなる。

中国での口コミの威力は、とんでもなさそうだ。

世界遺産、楽山大仏

成都は三国志の時代から都が置かれていた場所のひとつで古来から栄えた都市だった。だから今も多くの歴史的建造物が多く残り、歴史好きや三国志好きには堪らない場所だ。
成都は冬ダイヤになると1日おきのフライトになるので、たまたま次の日が一日フリーという日があった。
同僚が調べ物が得意だったので「世界遺産の楽山大仏を見にいこうよ」と誘ってくれ、一緒に行くことになった。楽山大仏へは成都市内のバスターミナルからバス一本で行けることも教えてくれた。

楽山大仏とは、ユネスコ世界遺産に登録されている仏像で世界最大、最長の石像だ。高さは71メートル、顔は100畳分、岩山を掘って90年かけて造られた。当時多くの大仏が国家によって造られたのに対して、楽山大仏は民衆の力で作られたらしい。(Wikipediaより一部引用)

仏像は圧巻だった。本当に、本当に大きかった。崖を削って、どうやって昔の人は作ったのだろう。辿り着くまでも石の階段を登っていくのでなかなかの体力が要った。途中途中の小さな石像にも、芸が細かくて、感動した。

この大仏の見応えも十分だったし、道中のバスの中もとてもおもしろかった。
まず、バスがなかなか出発しないのだ。時刻は決まっているようで決まっていないらしい。「いつ出発するんだろうね」なんて話していても出発する気配は一向にない。
しばらくすると、どかどかっと何人か乗り込んできてバスが満席になった。そうしてやっと、出発した。
(満席になってから出発するんだ…)と思った。案の定、帰りのバスもそうだった。時刻より、他の乗客のことより、自分(ドライバー)の売り上げを優先する。まあその方がエコだし、売り上げは少しでも多い方がいいし、たしかに合理的だ。

だけど日本では絶対にありえない文化に、私は衝撃を受けた。

海外に行くと違う価値観に触れられる。私はそれが好きで、興味深くてやめられない。触れるたび自分の視野の狭さ、心の狭さに気付かされる。
旅をするたび、なにかの固定概念から解放されていく感覚がある。きっと同じ感覚を持ったことがある人もいるのではないだろうか。

バスの中では、中国籍の団体の方が鳥の脚のからあげのようなものをボリボリと食べていた。
何という名前で、どこに売っているんだろう。

いろいろと綴ったが、飛行機で5時間あれば行ける成都はかなりおすすめの旅行先だ。特にパンダ研究所は成都一の観光スポットで、運が良ければ保育器に入った赤ちゃんパンダも見ることもできる。パンダ専用の動物園なので上野動物園のように並んで数分見て終わりではなく、自分の心ゆくまでパンダたちの生活ぶりを堪能できる。

赤提灯と路地店が魅力的で食べ歩きも楽しめる錦里古街や、成都春熙路歩行街には大きなショッピングモールもある。雑多なビル内で買い物するのは結構面白い。
街全体にエネルギーと明るさを感じる成都は行ったらきっと好きになるだろう。歴史の深さとエネルギーに、はまる人もいるかもしれない。

現在はコロナによりどんな雰囲気になっているかは分からないけど、またいつか訪れたい都市のひとつだ。

<本日のお土産>

成都のお土産の定番。本格美味しい麻婆豆腐が手軽に楽しめる。

唇がピリリ。ジーンと痺れる感じが堪らない。本格麻婆には絶対的に欠かせない香辛料。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?