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繰り返される一日を描いた「ヒトコト」脚本を全文掲載




【イラストに物語つけてみた!】第二弾


最初の作品は【しょう】が脚本を担当した「ヒトコト」。
完成動画は上記リンクから。


ヒトコト


「もしも明日地球が終わるなら、最後に何が食べたい?」


誰もがきっと、そんな会話を交わしたことがあるだろう。 
最後の晩餐ってやつだ。

じゃあ。もしも明日、地球が終わるなら。
最後に、どんな言葉を遺したいだろう。

 私が、この世に遺す、最後のヒトコト。

 「吾輩の辞書に~」とか、「地球は青かった」とか。
「わが生涯に」とか。

そんな、カッコいい名言を遺すことが出来るだろうか。


私が宇宙飛行士なら。


あるいは、私がどこかの世界の主人公だったら。

そんな一言を、遺せたかもしれない。


でも、私は、私だ。
どこにでもいる。普通のコ―コーセー。

そんな私の言葉が、
名言になるなんてことは、恐らくない。

私のヒトコトなんて、
わたがしのように甘ったるくて軽い言葉なのだ。

―――そんな私のヒトコトが、運命を握ることになるなんて。

彼女は、明日死ぬ。

彼女が最期に言葉を交わしたのは、私になる。

そんな今日を、私はもう何度も繰り返してきた。
彼女にかける言葉が、最期にかける言葉にならないように。

丁寧に、懸命に言葉を選びながら、
何度も言葉をかける。

それで、私は疲れてしまった。
もう、彼女を救うことは出来ない。

ゲームの選択肢を選ぶように、
言葉を選ぶことなんてできない。

何個かの選択肢なんて、
現実にはない。

これで、最後にしよう。
彼女の運命を、私は知らないふりをした。

当たり前の話をして、当たり前に盛り上がって。
彼女が最期に乗るバスが、やってくる。

このバスが、彼女をあの世に連れ去ってしまう。
でももう、どうしようもなかった。

私が泣き叫んでも。
なんとか別のバスに乗らせても、
彼女の運命を変えることは出来ないのだ。

だからせめて。

せめて。

「じゃあ、行くね。バイバイ」

「うん……あ」

「ん?」

「また、ね」

「?」

「またね」

「……うん。またね」

私は、もう来ることのない“また”を願って、
そう言った。

皮肉な話だ。
私はそれでも、最期に『またね』で終わりたかった。

私はその時ふと、
これが私の最期のヒトコトなのかもしれないと思った。

私は、もし明日地球が終わるとしても、
明日地球が終わると知っていても、
誰かと別れるとき

「またね」

と言って別れたい。
そう思った。

明日が来ないことは、
明日に希望を持っちゃいけない理由にはならないのだ。

あるいは、そんな小さな希望が、
何かを変えるのかもしれない。

「またね」は、彼女にかけた、
最期のヒトコトにはならなかった。


〈作者コメント〉

どんな画像組み合わせて作っても良いですよって言いながらめちゃめちゃキャラ入れ込んでくるカエル伯爵夫人を僕はゆるしません

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