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ショートショート、短編小説 創作集

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メンバーによるとってもステキな作品集をまとめてみました。 不思議な体験談、短編小説、ショートショート、イラストに物語つけてみた! などなど、盛りだくさんです。 ぜひご一読ください。
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#不思議な話

文芸社×TOKYO FMのラジオドラマ賞を受賞作「こまちねず」をラジオドラマ化!

10代から20代に変わる頃の混濁した「あの感じ」をどうぞ(全文掲載) こまちねず 「東京に降る雪はどんなかね」 あれから3年が経ったが、 東京にはまだ雪が降らない。 このままずっと 東京には雪が降らないんじゃないかと思っていた。 雪が降らなければ、 僕は美浜に連絡する用が無い。 美浜も同じだ。 ニュースで東京に大雪が降ったと知れば、 きっと連絡してきてくれるだろう。 今日も僕の隣には知らない女の子が裸で寝ている。 僕の布団は裸で寝られるほど、温かいのに、 外は随分

【これは運命?】学校の給水塔から聞こえる声に恋をした。

これはもう何年も前なんだけど、 俺が体験した不思議な出来事の話だ。 当時俺は入学したばかりの高校に馴染めずにいた。 学校とか人生とか なんかつまんねーなぁ って、退屈とヒマを持て余してたんだ。 クラスの連中とも馴染めないっていうか 陽キャも陰キャもそろって面倒くさいなって。 それでどっか一人になれる場所ないかって探して 屋上はどうかって思ったわけ。 屋上は鍵がかかってて入れないようになってるんだけど、 ネットでピッキングのやり方調べて試してみたら、 案外すんなり

美人のお隣さんと仲良くなったんだけど、なんか様子がおかしい件

これは俺が初めて一人暮らしを始めたころの話。 大学二年になり、ゼミが忙しくなったとか勉強に専念したいとかもっともらしい理由で親を説得し、実家を出た。 そのマンションは「ハッピーハイツ」なんてちょっとハズい名前だったけど、大学には通いやすいし、なにより家賃が手頃だった。 うるせえ親から離れ、自由気ままな新生活が始められると俺は舞い上がっていた。 彼女を呼んで(まだいないけど)あんなことやこんなこと…… 両隣くらい挨拶しときなさいよと母さんから煎餅持たされて、引越し早々

【不思議な体験】地元で有名な底なし沼からあがったものの正体

オレの地元にはちょっと、いや、かなり不気味な沼がある。 赤と黒と緑がめちゃくちゃに混ざったドロドロ沼で、中の様子は見えない。 でもって入ったが最後、二度と上がることはできないらしい。 いわゆる〝底なし沼〟ってやつだ。 「沼に近づくな、〝主〟に引き込まれるぞ」 これはもう一種の合い言葉だった。 両親、祖父母、学校の先生、近所のおじちゃん、おばちゃん・・・・・・ 地元の大人という大人から、耳がタコになるほど聞かされた。 沼の主ったって、昔話みたいに生け贄を差し出せとも言

未来の自分? どこか見覚えのある人の助言で家族の危機を回避した話

この話、怖くはないので安心して聞いてください。 私が幼稚園生の時の出来事です。 三面鏡のあるお家の子だったらやったことがあると思うんですけど、 三面鏡の左右の鏡をいい感じの角度にすると、 無限に鏡の世界が続いていく「あれ」が大好きだったんですよ。 だいたい、お留守番の時のお楽しみが「あれ」で何時間でも鏡の前に座って どこまでも続く鏡の世界を眺めては、どこかに違う人がいたりしないかと本気で探していたんです。 すっかり日が暮れて、薄暗い中、電気もつけずに鏡を見続けていた

セミ嫌いを克服したウソみたいな本当の話

セミの鳴き声を聞くと、15年前に死んだおじいちゃんを思い出します。 お母さんが子どもの頃はきびしかったそうですが、 私にとってはとにかく陽気でやさしいおじいちゃんでした。 おじいちゃんと私は誕生日が同じで、毎年夏になると一緒に祝ってもらったのをよく覚えています。 私もおじいちゃんもすいかとアイスが大好物で、遊びに行くと好きなだけ食べさせてくれました。そのおかげで何度もお腹を壊したことも今となればなつかしい思い出です。 そんな大好きなおじいちゃんですが、おてんばで虫

【泣ける話】ひぃばぁちゃんの形見に命を救われた件

これはまだ、私が小学生ぐらいの時です。 多分、3年生か、4年生。 そのころ、まだひいばあちゃんが生きてて、 ばあちゃんちで、じいちゃんとばあちゃんと一緒に暮らしていました。 そのひいばあちゃんはすごい活発な人というか。 とにかく山登りが大好きな人でした。 毎日朝早くに近所の山に登っては、山菜と、それから枯れ木を拾って来ていました。 お母さんは、ひいばあちゃんが採ってくる山菜が大好きでした。 ばあちゃんは 「山で倒れたって探さんからね」 が口癖で、90を超えて

【時をこえた!?】ひいばあちゃんと過ごした熱く甘い夏

それは小学3年の夏だった。 千葉に親戚の家があり、いとこ姉妹の家族とおばあちゃん、それにひいおばあちゃんが住んでいて、毎年夏休みになると遊びに行っていた。 私は一人っ子だったので、いとこたちと遊んだり、大勢で食事をするのが嬉しかった。 だけど、ひいおばあちゃん=しげ乃ばあちゃんだけは離れに住んでいて、おばさんが食事を届けていた。 「なんでしげ乃ばあちゃんだけ別なの?」 和やかだった食事は、私の一言で張り詰めた空気に変わった。 「しげ乃ばあちゃんは、ほとんど寝たきりな