見出し画像

メタルワークに恋して


ここ大事ですよ、僕は、「メタルマスター」になりたいんです!

そう、僕は建築デザインでメタルワークを極めたいと思っています。え?わからないって? 

簡単に言えば、金属部材を組み合わせた建築表現をやりたいってことです。


みなさんも、工場の風景は美しいと思いませんか?

工業製品のおりなす人の営みというか、こう使いたいって意図が複雑に絡んで見えて、とても美しく感じます。そこに華美装飾は皆無なのですが、あるのは「用の美」のみ。使いやすいようにつくったら、(結果)魅力的な景観を生み出した、という具合でしょうか。工場の美しさを語りだしたら、多分1記事分になってしまうので、ここではさらっと「美しいよね!?」と少し押し付け気味に書いておくだけにします。


* * *


建築も人を入れる器であり、語弊があるかもしれませんが広義的には工業製品です。

建築には木造、RC造、鉄骨造とおおむね3種類の構造形式があります。木、鉄筋コンクリートも加工するという意味では自然界に存在しないものかもしれません。でも、鉄材は純粋な工業製品であるイメージが僕の中で強く、ゆえに惹かれるものがあります。

鉄の表現を帯びた建築には、様々な姿で僕たちに強く印象付けます。この記事では、鉄表現の可能性を話しつつ、僕の見てきた建築を紹介していきます。


構造表現としての鉄骨部材

写真は、世界でも高名な構造デザイナー、サンティアゴ・カラトラヴァ設計のスイス・ルツェルン駅舎です。

駅舎といえば「屋根」です。日本でも、内藤さんや隈さんが全国津々浦々で駅舎のデザインをしています。高輪ゲートウェイ駅、高知駅などが有名ですが、どちらも屋根表現に徹しているといえるほど、駅舎で重要なのは「屋根」ではないでしょうか。

駅は人が大量に集まるがゆえに、無柱の大空間の設計が適しています。それを実現するために、色々なデザインが見られる場所でもあります。

写真の梁を見てください、生物の骨のような美しいデザインですね。たとえばサグラダファミリアとか、なぜ生物的なデザインを美しいと感じてしまうのでしょうね。梁の形をじっくりとみていると、中央は膨らんで、端へいくほど小さくなっています。

このような柱梁構造の場合、梁の中央部ほどモーメント(簡単に言えば荷重などからくる回転する力。)が大きいため、大きな部材となり、逆に支点となる柱付近はモーメントが小さいため、部材は小さくて良いのです。


このモーメントの力学を応用して、若い時に僕もこんな建築を設計したことがあります。天井(屋根)にブレードのような梁があります。プレキャストコンクリートの梁ですが、端部はほとんど梁せいがありません。


既存建築の美しさをひきだす

最近訪れた建築の中で随一だなと思いました。弘前れんが倉庫美術館(設計:田根剛 2020年竣工)は、既存の古い倉庫をそれはもう大規模にリノベーションした、田根さんの工夫溢れる意欲作です。

屋根のトラスと、鉄の間におさまった木の対比が美しいですね。年月が経って錆が浮き出てぼこぼこした風合いの鉄材は、世界にひとつとしてない素材感に仕上がっています。新築ではこんなことはできません。設計者はそれをよくわかっていて、いかにこの「時間」をデザインするかに終始しています。

鉄材とは違いますが、この施設は木造の屋根もあります。田根さんがこの建築に施したのは、いかに自然なかたちで設備を配置するか、というところも着目してほしいところです。



建築部位のメタルワーク

建築構造以外の部分(厳密には階段も建築構造の部位ですが、主要な柱や梁意外といった意味で)には、デザイナーのセンスが問われます。

以前紹介したジャンヌーベルのアラブ世界研究所ですが、この繊細な部材構成をみてください。

階段を支えるささらにあたる部材(段の端にある斜め材)と、手すりが同じ丸パイプで作られています。さらに(当然ではありますが)、手すりの傾斜角度とささらの丸パイプの角度は同じになっており、Xをつくるようにささらと直行する補強材も手すりと同じ角度になっているので、正面から見た時に美しい幾何学を描いています。角度や部材が違えば、もっと雑然とした風景になっていたと思われます。


日本にもたくさんメタルワークが光る建築があります。馬頭広重美術館(設計:隈研吾 2000年)は、繊細な木ルーバーがつくる空間が美しい建築です。太陽光を透過するこの天井は、外から順にガラス、母屋(屋根を支える部材)、梁、ルーバーの順でつくられています。ルーバーは割と疎にデザインされているので、梁やルーバーを支える鉄部材が見えます。

天井をつくる場合は構造・設備が隠されるので実は簡単なんです。

天井内を見せるということは、秩序の取れた構造、整理された設備、サッシなどの割付部材は整然と、というたくさんの設計条件で空間づくりに挑む必要があり、普通の施設よりも何倍もの労力を注ぎます。

この写真ではルーバーの吊り部材が良く見えます。この建築のみならず、隈さんのつくる建築には、このような「建築の裏側」が垣間見えることがあります。

ゼネコンや組織設計などがこのような空間をつくる場合、(少なくとも私が在籍したころにルーバーを使う場合は)吊り材を見せないように金物をかぶせる、ルーバーピッチを細かくして天井裏など見せなくするなどなど裏側は徹底して隠します。

が、隈さんはあえて見せているように思えます。こんなふうにちょっと気を抜くとうか、脱力もデザインには必要かなって思います。前者は空間に緊張を生みますが、後者は空間に親しみを感じるので。


* * * * *


ちょっとメタルワークとは関係のないことも話したような気もしますが、僕はRC造よりも鉄骨造や木造の設計のほうが好きでして、部材の納まりやちょうどいい寸法(わかりますかね~?)を探しているとワクワクするんですよ。

わりと鉄部のデザインはブラックボックス的な知識で、案件のなかでたくさん挑戦して、実際に現場を経験しないと分からないことでもあります。だから建築家によってデザインが違うというのがおもしろく、知りたいという興味をそそられる。

本記事では語れない熱い思いがあります 笑

この記事はほんのさわりだと考えていて、この「メタルワーク」に着目して、今後いくつか記事を書きたいと思ってます。


ぱなおとぱなこ

(写真はすべて筆者撮影)



よろしければサポートお願いします!いただいたサポートはリンゴ、、じゃない取材費に使わせていただきます!