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20.6.14 kindleを買ったら、読むことが「作業」になった

紙が好きだ。紙に印字された縦書きの日本語が好き。

時代に逆行していることは承知しているが、著者が一字一字丁寧にしたためたものは自分で手にとってじっくり眺めたいと思うし、動画と音声が支配権を握りはじめて「活字がなくなる時代が来る」なんて言われるとそんな時代には生きたくないなと思ってしまう(だから正直noteも、読む側としてはとても好きなツールというわけではない)。

そんな私が昨年、kindleを買った。

一人暮らしの狭い部屋には大量の本を置く余裕がないし、数年に一度の転勤に伴う引越しのたびダンボールに箱詰めするのも面倒だと思った。利便性に惹かれて、仕方なく”紙派”をやめることにした。

電子書籍というものはとても便利で、ワンクリックで読みたい書籍を手に入れることができるようになった。性能の進化で目も疲れにくいし、メモ機能もある。

一方でkindleの中だけで読書体験を楽しむことは、本との偶然の出会いを失うことだった。読みたい本はワンクリックで買えるけれど、それは私が知る枠組みの中で見つける本であって、新たな世界との出会いはそうそうない。amazonの人工知能にオススメされる本は、今流行っている本とか、自己啓発本ばかりで、視界に入ってくる情報が心地いいものとはいえない。

そういえば、なんのあてもなく本屋や図書室をぶらぶらして、なんとなく今読みたい雰囲気の本を手にとって、あ、違うな、とかぴったりだったな、とか楽しむのが、時間と心の余裕の象徴だった。

その余裕を、電子書籍の読書体験では感じられなかったことが、読書を作業化させたのだと思う。作業化したことがさらに没入感を減らし、読書が、隙間時間に知識を取り入れ、情報を手に入れるだけのものになっていくような気がして、危惧している。


kindleは便利だ。でも、やっぱり私は紙が好きだった。

結局今もときどき本屋をぶらぶらして、紙の本を買っている。本当に好きなものは、目に見える形で手元に置いておきたいと思う。


※「みんなのフォトギャラリー」から画像をお借りしました。

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