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アメリカの大統領選挙、「過半数票」はどうしてたったの270票なの?(パート1)

いよいよ間近に迫ったアメリカの大統領選挙。4年に一度の大イベントですが、2020年は特にすっごいことになっています。コロナ、経済、保守対リベラルの派閥争い、トランプ氏の「拍車かかったトランプぶり」、フェイクニュース、などなど話題がとにかくつきません。私もとても久しぶりに(4年ぶりに!) noteに投稿します。

大統領選挙の話にはつきもののこの地図(出典:270towin.com) 

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アメリカの50の州を「赤チーム」と「青チーム」に分けています。

上の地図は2016年の大統領選挙のものです。赤(ドナルド・トランプ)が青(ヒラリー・クリントン)を制して大統領になりました。

そして今、「トランプ 対 バイデン」 の選挙戦の白熱ぶりは日本でも報じられていると思います。それに加えアメリカのニュースでは

「この州は赤!」
「この州は青!」
「この州は青と赤がまざった紫!」
「この州はまだどっちか判断つかない!」
と、毎日色分け予測の話でいっぱいです。

現状をとってもざっくり言うと、以下の二大政党制です:
赤:Republican Party (共和党)ゾウさんのマークです。
   保守派(南部・中西部・山間部(人口密度が低く、地方色強い)
青:Democratic Party(民主党)ロバさんのマークです。
   リベラル派(沿岸部・都市部)

どうして赤と青の対決になるのか、「過半数は270票」になる仕組みを歴史背景もふくめておさらいしたいと思います。

「Electoral College」(選挙人団)ってなに?

アメリカ大統領の選挙はとてもユニークな「Electoral College」(選挙人団)という間接選挙システムになっています。国民が直接投票するのでなく、「Elector」と呼ばれる「選挙人」に託されます。これは憲法に規定され、200年以上前の建国時からずっと、同じやり方を続けてきました

50州それぞれにElectorチームがいるのですが、そのチームの大きさは憲法第2条の1項で決まっています。

Each State shall appoint, in such Manner as the Legislature thereof may direct, a Number of Electors, equal to the whole Number of Senators and Representatives to which the State may be entitled in the Congress

つまり、上院議員数(一律で各州2人)+ 下院議員数(各州の人口に比例)の合計の数字が各州に割り当てられます。これが大統領選にその州が及ぼす影響力のバロメーターになります。

Electorは現在、合計538人

2020年現在、アメリカ50州それぞれに割り当てられたElectorの数はこうなってます(出典 https://www.usa.gov/election)。

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Electorの総数が538なので、その過半数となる270を勝ち取った候補者が大統領になります。なので「270 to Win」(270で勝ち)という表現がよく使われます。

Electorチームは「その州の意向を反映した投票」を州を代表するかたちで行います。(その投票は儀式的に各州で12月に行われます。)「州の意向」とはその州の過半数の意見です。そしてElectrorチームは(ごく一部の例外をのぞいて)チーム全員による団体投票をします。

つまり、各州の過半数の意見がその州の「色」を決めることになります。
過半数がRepublican(赤)を選んだ場合は「赤い州」。
過半数がDemocrat(青)を選んだ場合は「青い州」。
(実質Democrat対Republicanの二党間の争いなので、結果は赤か青の二択です。)

人口が一番多いCalifornia州は55票、人口が少ない州でも下院議員1人+上院議員2人=3票の力を持ちます。

単純な頭数ベースよりも、各州の間の人口差による力の格差をなくすシステム、というのがもともとの目的だったのですが、人口の推移とともに「Elector一票の格差」の進行も問題になっています。たとえば一番数が多いカリフォルニア州と、一番小さいワイオミング州の違いはこんな感じになると分析されています:(出典:https://act.represent.us/sign/electoral-college/)

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選挙人団方式でも、直接投票の数は集計されるの?

各州や自治体で集計された投票結果は全国レベルで総計され、「直接投票」の結果も発表されます。選挙結果には反映されないですが、新しく就任する大統領の全体的支持率を示す数字になります。

そして選挙人団方式の結果と直接投票の結果が逆のこともあります。「選挙には勝ったけど、直接投票では負けた」ということです。

この状況は歴史的に複数回ありました。前回(2016年)のトランプ 対 ヒラリー・クリントン戦もそうでした。赤・青分布図ではヒラリーが優勢とずっと予測されていて、直接投票結果でもヒラリーが有権者票の50%以上を勝ちとっていました。ところがこのElectoral Collegeの仕組みのおかげで、いくつかの有力州が、しかも僅差で「赤い州」に転換したことで最後はトランプ氏の圧勝という結果になってしまったのです。(冒頭で引用した地図をもう一度ご覧ください。)

2020年選挙はどうなる?

今年の赤青合戦がどのような展開になるか、各メディアや専門家が様々なシミュレーションを行っています。以下はそんな予測の一例(10月19日現在のもの)です:

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確実に青いところ、赤いところ
青よりのところ、赤よりのところ
どっちに転ぶか予想がつかない!ところ

赤と青の入れ替えで大きく結果を左右するところは特に目が離せません。

たとえば「38」と票数がカリフォルニアについで二番目に多いテキサス州(TX)。赤のままでいくか、青に転ぶかで大きく結果に影響がでます。(今はピンクなので、青に行く可能性もある、というところです。)

上で茶色のところは州の過半数が赤か青か予想しにくく、「激戦区」になっています。トランプ氏もバイデン氏も、ここに積極的にキャンペーンの集中砲火をしている最中です。

特にフロリダ州(FL) は票数が「29」と大きいです。最後の最後までもつれこむのが最近のお決まりになってきました。2004年のブッシュ対ゴアの時は選挙後の延長戦にもつれこみ、票の集計プロセスの合憲性が問われ、米国最高裁で争われた結果ブッシュ氏が大統領になった経緯もありました。

(注:上でしましま模様の二箇所は、例外的にElectroal Collegeが州の投票割合を反映するところです。たとえば州の3割がRepublican,7割がDemocratだった場合はその比率に応じたElector投票をします。こういったルール決めは各州に任されています。)

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投票日は11月3日(火)ですが、全国各地で郵送などによる「事前投票」 も進んでいます。コロナ禍の今年は直接投票所に行くよりも郵送の方が感染リスク少ないということで、例年をはるかに上回る郵送投票が予測されています。郵送投票は「ウソの投票の温床になる」との批判の声(とくにトランプ氏から)もあり、そして各州(おおよそ県に相当)、各カウンティー(おおよそ郡に相当)で決める投票ルールが今年新たに(しかも直前に)ルールが変わったところもあり、こちらも話題満載です。選挙日まで2週間を切った10月22日現在、すでに44,000,000人が郵送などで事前投票を済ませたとされています。

なので今年の選挙日は投票の日でなく「開票の日」という方が正確な気がします。

そして11月3日およびその後数日は。仕事も手に付かない、何かと落ち着かない状況が続くことが予想されています。

大統領を選ぶこのユニークなアメリカのシステム、歴史的ルーツもすごく面白いのです。その歴史の振り返りはパート2で行いたいと思います。

久しぶりに読んでいただき、ありがとうございました。

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