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善き人のためのソナタ

2007年頃書いた映画感想文。

「善き人のためのソナタ」

1984年、東ドイツでは国家保安省シュタージによる盗聴が行われていた。主人公ヴィースラー大尉の必殺技はその盗聴と反体制派に対する尋問。非人道的な必殺技です。この作品はそんな非人道的な大尉が、人間性を取り戻す物語であるといえます。

反体制派の疑いのある劇作家を監視することになり、さっそく得意の盗聴を開始。しかしその生活を監視する過程で、いつの間にか劇作家達に共感するようになり、虚偽の報告をするようになる。

タイトルの「善き人のためのソナタ」は、
「この曲を本気で聴いた者は、悪人になれない」
と言われる曲のこと。
大尉はその通り悪人になれなくなりました。抑圧された共産圏で芸術は人を変えることができたのでした。たとえエリートから転落してしまったとしても、人間らしく生きる道を大尉は選んだのです。

そして壁が崩壊・・・

ラストシーン、劇作家の本を買うとき店員に、
「ギフト包装はどうしますか?」
と聞かれて首を振り、
「私のための本だ。」
と答えた大尉。
震えましたね。このセリフと大尉の表情。


大尉役のウルリッヒ・ミューエ氏は2007年7月、胃がんのため亡くなったそうです。自身もかつて国家保安省に監視された過去があったそうです。
合掌。

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