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ドラマティックな初恋

師走と関係ないけど^^
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わたしの初恋は案外早い。
三歳か四歳か五歳か、好きになったきっかけは、
あまりにも昔のことで思い出せないけれど、
あなたもきっと経験があるはず。

クラスに一人は、男子にしろ女子にしろ、エース級のスターが一人はいて、
光をはなつ存在の人物が気になったり、好きになったりしたことが。


あっくん(仮)もそのような存在で、
幼稚園の年中さんのスーパースターだった。
地黒で細くてしなやかで、顔立ちが整っていて、
かけっこが早くて、おまけにおしゃれで
(いや、お母さんのセンスが良かったのだろう)
女子はみな、あっくんが好きだった。

わたしも、
いつあっくんのことが好きなったかわからないけれど、
いつもあっくんのことを目で追いかけていた。

確か年長になる頃、
母が別の保育園に入る提案をしてきたが、
わたしは断固して断った記憶がある。

「あっくんと別れたくない!別の保育園になんか行きたくない!」

と、とても素直にカミングアウトできる子供ではなかったので、
いろんな理由をつけて、
母を説得して、
無事残留することができた。

今思えば、なかなかのプレゼン能力だと思う。
四歳の子供が、大人を説得できたのだから。


好きな人がいる場所に毎日通えることはなんて幸せなことだろう。
存続を心から喜んだ。
わたしは幼稚園が大好きだった。

ある昼下がり。
運動場のお片付けの時間になって、
みなそれぞれ出した遊具の片づけをしていた。
スコップとか、じょうろとか、ボールとか、そんなもの。

わたしも片付けながら、ふと前を見るとあっくんがいる。
あっくんをよけて、右に行こうとすると、
あっくんもにやにやしながら右に来る。
なんで?と思い、次は左に行こうとすると、
あっくんも左に来て、まるでわたしを通せんぼするかのように意地悪をする。

「なんでそんなことするん!」

と、うったえたら、
なんとあっくん、素敵な笑顔で、

「だって、おまえのこと好きやもん」

と言った、、、

そして、照れたようにくるっと向きを変え、
立ち尽くすわたしを置き去りにして走ってどこかに行った。

す、す、す、好き
す、す、好きって言ったよな!?


何が起きたのかしばらく理解できなかったけれど、
しばらくして、
停止していた頭はやっと再起動し、
あっくんに好きと言われた事件を、
リプレイし、胸は熱くなり、
もう一人で抱えきれないほど大きな興奮となっていた。


わたしは先にも書いたが、親に誰それ君が好きー!と
素直に言える子供ではなかった。
でも、小さな胸にもてあますほど事件が大きすぎて、
言葉にして外に出さないとどうにかなってしまいそうだった。

だから、つい、母に言ってしまった。

幼稚園から帰って、スーパーに買い物に行った帰り道。
言葉がついぽろりともれてしまった。

「あっくんに、おまえが好きって言われた、、、」

一瞬まをおいて、母はすっとんきょうな声で

「ええ!?ませちゅうねぇ!」

と少しあっくんを責めるようなとがった口調で言った。
わたしは後悔した。
やっぱりあの大切な出来事を人に話してはだめだったんだと。

秘密にするべきだったのに。ごめんなさい。
汚されたような気がして、心の中であっくんに誤ったような気がする。

やっぱり、
大切なことは大切な人にしか言ってはいけない。


さて、あっくん。
いまさらながらあの告白は何だったのかと聞きたい。

次の日から、
何もなかったかのように、
一切忘れたかのような態度。
彼氏彼女にはなれず、日々は流れた。
今思うに、テレビドラマか何かの真似事!?
練習、、、

とはいえ、真似事でもなんでも、
記憶の中で、上位にのぼるドラマティックな告白の風景

四歳児のわたし、きゅんきゅんだったし、
まあいいか。
ドラマティックをありがとう。


その後あっくんは、
小学校中学校、高校と年を重ねるごとに、
エース級の光はにぶくなっていき、
目立たない一市民にポジションを戻し、
多数の女子に追いかけられることはなくなり、
穏やかな平和を取り戻した。







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