宣伝会議 編集ライター養成講座46期の有志メンバーによるマガジンです。 【出題中のお題】 A. なぜ私はあの時あんなに傷ついたのか B. 今年前半を振り返って(今年後半への抱負) C.フリーテーマ 上記3つから1つ選んで投稿。
私には年の離れた妹、A子がいる。両親にとっても遅くに生まれた子である妹は周囲の大人から甘やかされ、愛されて育った。幼い頃からバレエだのピアノだの演劇だの、本人が「やりたい」と言ったことはすべて習わせるその溺愛ぶりは、端で見ていて心配になることもあった。しかしそんな大人たちに囲まれて育ったにも関わらず、生来まじめな頑張り屋のA子は、一度始めた習い事は一定の成果が出るまですべて続けた。根性の人。それがA子なのだ。 私が東京に上京して数年が経ち、A子が高校三年に上がる頃、母か
※「悲しい/辛い記憶」を取材するというテーマで書いた作品です。 電話を切って、話を聞いたことを後悔した。 私は、母が苦手だ。幼い頃から「何の取り柄もない子」と罵られたことはあれど、褒められた記憶はほとんどない。躾として叩かれたり、家から追い出されたり、車で置き去りにされたりしたことが何度もある。母は私にとって悪い魔女で、その言葉は呪いだった。魔女の苦労話を聞いたからって、彼女が善い魔女になるわけではない。 半生を語る母の語り口は、意外にも軽やかだった。 *
※この話は一部フィクションを含みます。 もうずいぶん昔の話ですが、名刺の肩書が「ライター」「記者」だった頃、歌舞伎町を歩く機会が何度もありました。 あの街で出会った人たちのことを備忘録として書こうと思います。 最近思い出したのは、Nちゃんのことです。 Nちゃんを思い出したのは、あるバウンダリーワークに参加したことがきっかけでした。仕事柄、心理学の勉強をしているため参加したワークでした。 ここで言うバウンダリーとは、自分と他者とを区別する心の境界線を意味する心
※「旅」をテーマに課題として書いた作品です。 結局、あの女性は何者だったんだろう……。今でも時々、街灯に照らされた彼女の横顔を思い出すことがある。 二十三歳の時、京都を旅した。寺社仏閣やカフェをめぐる一泊二日の一人旅だ。二日目の夜、ここで最後と決めた喫茶店に入った。古材風の木を用いたシックな雰囲気の店だ。私はカウンター近くのテーブル席を選んだ。お客さんは女性が一人いるだけ…。 しばらくすると、マスターに話しかけられた。「旅行ですか?」「あ、はい」「一人旅?」「そうで