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【自伝】生と死を見つめて(14)健やかに暮らす

34歳の夏、たまたま宿泊した旅館で、温泉の素晴らしさに目覚めた。

その頃は、四六時中抑うつと怒りの感情に支配され、ひと時も心休まる暇がなかった。どんなリラクゼーション方法を試しても、効果が表れることはなかった。常に不眠気味で、ぐっすりと眠ることも出来なかった。

ところが、そこの温泉に入ってみると、心の中の雑念が消えて、頭が空っぽになったのだ。心身がすごく楽になり、夜も熟睡することが出来た。あんなにつらかった抑うつや怒りの症状から、解放されたのである。

そこの温泉は「源泉かけ流し」のお湯を使っていて、様々な効能がある温泉だったらしい。それまでは、源泉かけ流しの温泉に入ったことがなかったので、体感に大きな違いが出たのかもしれない。

それからというもの、源泉かけ流しの温泉を探しては、片っ端から足を運んだ。湯治宿にも宿泊し、自炊をしながら数日間湯治を楽しんだ。お出かけ中に良さげな温泉を見つけたらすぐに入れるようにと、車の中にタオルや入浴セットを常備させておいた。他の県にも遠征して色々な温泉を楽しんだ。

こうしてすっかり温泉マニアとなり、自分なりのリラックスタイムを見つけることが出来た。少なくとも温泉に入っている間は、精神的な苦痛から解放されるということが分かったのだ。

私なりの好きな入浴法がある。それは首の後ろのリンパ腺までお湯に浸かることだ。コツは耳たぶからあごの先までお湯に入るようにすること。この入り方をすると頭がポワーンとしてきて、深くリラックスすることが出来る。のぼせるので長時間は出来ないやり方だが、私はこの入浴法を気に入っている。

最近は、あまり遠出は出来ていないけれど、温泉には定期的に通っている。行くのはやはり源泉かけ流しの温泉だ。温泉通いは、これからも一生続ける実益を兼ねた大切な趣味となるだろう。


私は足の病気や精神の病の他にも、持病を抱えている。「甲状腺機能低下症」、「過敏性腸症候群」、「自律神経失調症」の3つである。

甲状腺機能低下症とは、血中の甲状腺ホルモンが少なくなってしまう病気で、症状としては、無気力、疲労感、抑うつ、体重増加、記憶力低下などがあげられる。定期的に通院して血液検査を受け、薬を処方してもらっている。治る病気ではないので、薬は一生飲み続けなければならない。

過敏性腸症候群は、主にストレスが原因で起こる病気で、便秘と下痢を繰り返すのが特徴である。私の場合は特に下痢が酷く、外出もままならない時がある。精神科で薬を出してもらってはいるが、それだけでは治まらない時もあるので、お通じに効くハーブをウォッカに漬け込んで作る、自作のハーブチンキを毎日少しずつ飲んでいる。

自律神経失調症は、自律神経のバランスが乱れると起こる病気で、やはりストレスが原因である。様々な症状が現れるのだが、私の場合は、動悸、息切れ、吐き気、めまい、倦怠感、睡眠障害が当てはまる。特に胸と息が苦しくなることが多く、これも精神科で薬を処方してもらっている。また、夜中に中途覚醒してから朝まで眠れなくなってしまうことも多い。そんな時には薬の他に、リラックス出来るアロマオイルを使ったりしている。

これらの病気と、足の病気と精神の病で、合計3ヶ所の病院に定期的に通っている。どの病院もいつも混雑しているから、待ち時間が長くて、通院だけでクタクタに疲れてしまう。昔から病院通いには慣れているのだけれど、やはり大変なことには違いない。

薬も1日4回、色々な種類のものを飲まなければならない。サプリメントも飲んでいるので、結構な数の薬を飲んでいることになる。薬屋を開けそうなくらいだ。

どれも慢性疾患なので、完治を目指すというよりは、病気と上手く付き合っていくことを心がけている。服薬以外にも自分で出来ることは行なっているので、これで少しでも症状が良くなることを願っている。


現在の私の生きるテーマは「健やかに暮らす」である。

自分の心と体を大切にし、楽しく健康的に生きていけるよう、様々なことに取り組んでいる。

まず、健康のために毎日必ずやっていることは「マインドフルネス」、いわゆる「瞑想」である。「今・ここにいること」に意識を集中し、呼吸法やイメージトレーニング等を行なう。宗教的な要素は排除してある、実用的なツールである。私は毎日1〜1時間半このエクササイズを続けている。瞑想を始めてからは、それ以前と比べて、抑うつや怒り・不安といった負の感情が格段に減った。

あとは「アロマテラピー」も欠かさずやっていることの一つである。その日の気分や体調に合わせて、様々なアロマオイルをブレンドし、芳香浴をしたりマッサージをしたりする。オイルにはリラックス・集中・安眠等、様々な効果がある。外出する時はマスクに一滴オイルを垂らす。私の生活にはいつもアロマテラピーがそばにある。

「ハーブティー」もよく飲んでいる。私は長年、月経前症候群と酷い生理痛に悩まされていたのだが、ハーブティーやチンキを作って毎日飲み続けていたら、つらい症状が劇的に良くなった。また、ハーブチンキやアロマオイルを使って、化粧水やクリームを手作りするのが私の趣味の一つである。夫の肌荒れや花粉症にも効いているので、役に立てて何よりだと思う。

他にも、「規則正しい生活」を心がけている。特に睡眠は非常に大事で、たった一日でも徹夜をすると、それだけで双極性障害の主な症状である「躁転」を起こしてしまうことがある。一度躁転してしまうと、躁でハイになっている間はいいけれど、その後の抑うつがものすごくつらく長く続くので、なるべくなら躁転はしたくない。そのためにも、睡眠リズムには特に気を使って生活している。

もちろん病院に通って薬を処方されている。それがまず一番大事なことだと思う。その上で、健康のために上記のようなことを習慣化している。

最近は、少しずつ自分自身をコントロールできるようになってきた。以前は自分の強い感情に振り回されて、心も体もコントロールすることができなかったのだが、最近は波が穏やかになってきた気がする。今も時々うつになったり、自律神経失調症の症状が現れたりはするが、昔よりはだいぶ良くなってきている。

心身ともに健やかに暮らすための様々な習慣、これからも続けていきたいと思う。


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