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AIチューナー : ビジネスとAIをつなぐ新たな役割について

はじめに

近年、ChatGPTなどの人工知能(AI)技術は目覚ましい発展を遂げ、様々な業界で活用が広がっています。AIを導入することで、業務の効率化やコスト削減、新たな価値創造が期待できると多くの企業が考えているようです。

しかし、AIを実際のビジネスに適用するには、ビジネス要求とAI技術のマッチングが重要なポイントになります。ビジネスの現場で発生する課題や要望を的確に捉え、それに適したAI技術を選定・適用することが求められます。

こうした中、私が所属する会社では、AIを新たに開発するのではなく、既存のAIを目的に合わせて調整する「AIチューナー」という新しい役割が徐々に定着しつつあります。AI技術の民主化が進み、高性能なAIモデルがAPIやオープンソースとして公開されるようになった現在、AI自体の性能よりも、ビジネス要求とのマッチングやスピーディーな適用が重要になってきているのです。

AIチューナーは、ビジネスサイドとAI技術をつなぐ架け橋となり、両者の間に立って調整を行います。ビジネスサイドの要求をしっかりと理解した上で、最適なAI技術を選定し、ビジネスの現場に合わせてチューニングを行うことがAIチューナーの役割です。先進的なAIを扱う場合にはAIエンジニアと連携することもありますが、基本的にはAIチューナーが主導してAI技術の適用を進めていきます。

この記事では、AIチューナーという新しい役割について詳しく解説していきます。AIチューナーとは一体どのような役割なのか、なぜ今AIチューナーが必要とされているのか、そしてAIチューナーの具体的な業務内容と今後の展望について見ていきましょう。

AIチューナーとは

AIチューナーは、ビジネスサイドとAI技術の間に立ち、両者の橋渡し役を担う新しい役割です。その主なミッションは、ビジネスの課題や要求を深く理解し、それに適したAI技術を選定・適用することで、ビジネスの目標達成を支援することにあります。

AIチューナーには、以下のようなスキルセットが求められます:

  • ビジネス知識:ビジネスの課題や要求を正しく理解するために、ドメイン知識や業務プロセスの理解が必要不可欠です。AIチューナーは、ビジネスの文脈を深く理解した上で、AIの適用可能性を探る必要があります。

  • AI技術の理解:様々なAI技術の特徴や適用可能性を理解し、適切な技術を選定できる能力が求められます。AIチューナーは、機械学習、ディープラーニング、自然言語処理など、幅広いAI技術に関する知識を持つ必要があります。

  • コミュニケーション能力:AIチューナーは、主にビジネスサイドとコミュニケーションを取ることが求められます。ビジネスの課題や要求を正確に理解し、AIを活用した解決策を分かりやすく説明する能力が重要です。また、必要に応じてAIエンジニアとも効果的にコミュニケーションを取る必要があります。

  • データサイエンス・プログラミングスキル:データ分析や基本的なプログラミングができると、AI技術の検証や適用がスムーズに進みます。AIチューナーは、データの前処理、モデルの評価、結果の解釈などを行うために、一定のデータサイエンススキルが必要です。

  • 課題解決力:ビジネス課題をAI技術で解決するために、論理的思考力とクリエイティビティが必要とされます。AIチューナーは、ビジネスの課題を構造化し、AIを活用した解決策を創造的に考え出す能力が求められます。

AIチューナーの主な業務は以下の通りです:

  1. ビジネスサイドからAIで達成したい目標や解決したい課題をヒアリングする:AIチューナーは、ビジネスサイドからの要望を丁寧に聞き出し、AIを活用する上での目的や課題を明確にします。

  2. ヒアリングした内容を基に、使えそうなAIを選定する:ビジネスの要求に適したAI技術を選定します。その際、AIの性能だけでなく、導入コストや運用の容易さなども考慮に入れます。

  3. ビジネスサイドからの要求を整理して、要件を定義する:ビジネスサイドの要求を技術的な観点から整理し、AIシステムの要件を明確に定義します。

  4. 要件が問題ないか検証する検証計画を立てる:定義した要件が適切かどうかを検証するための計画を立案します。データの準備、モデルの評価方法、結果の解釈方法などを決定します。

  5. 自身でコーディングも行い、技術検証を行う:AIチューナーは、自らプログラミングを行い、AIシステムの技術的な検証を行います。

  6. 結果をビジネスサイドにフィードバックし、改めて要求整理・要件定義を行う:検証の結果をビジネスサイドに報告し、要件の修正や追加を行います。

  7. 必要に応じてAIエンジニアへモデルの作成などを依頼する:高度な技術が必要な場合は、AIエンジニアと協力して、モデルの作成や改良を行います。

AIチューナーは、これらのスキルを活かして、ビジネスとAI技術をシームレスに連携させ、AIの価値を最大限に引き出すことが期待されています。AI技術の民主化が進む中、AIチューナーは今後ますます重要な役割を担うようになるでしょう。ビジネスの現場で発生する多種多様な課題に対し、最適なAI技術を選定・適用することで、AIの真の力を引き出すことがAIチューナーの使命なのです。

AIチューナーの今後

AI技術の急速な発展とビジネスへの浸透に伴い、AIチューナーの需要は今後ますます高まっていくことが予測されます。AIを活用したビジネス課題の解決が進むにつれ、ビジネスとAI技術を結びつける専門家としてのAIチューナーの重要性が増していくでしょう。特に、AIの民主化が進み、様々な業界や企業規模でAIの導入が進むことで、AIチューナーの需要は大きく伸びると考えられます。

AIチューナーの需要増加に伴い、組織内でのAIチューナーの位置づけも変化していくと予想されます。現在は、AIチューナーという役割自体が新しく、明確な位置づけがない組織も多いかもしれませんが、AIの戦略的な活用が進むにつれ、AIチューナーは組織内で欠かせない存在になっていくでしょう。そのため、組織内でAIチューナーを育成することが非常に重要になります。ビジネス知識とAI技術の両方を深く理解し、それらを結びつける能力を持った人材を、計画的に育成していく必要があります。

AIチューナーの役割が、ITコンサルタントのスキルセットの一部になるのか独立した専門職として確立するのかについては、議論の余地があります。AIがビジネスに不可欠な要素になっていく中で、ITコンサルタントにもAIについての深い理解が求められるようになり、AIチューナーのスキルがITコンサルタントのスキルセットに組み込まれていく可能性が高いと考えられます。一方で、AIの活用が高度化・複雑化することで、AIチューナーの業務も専門性が高まり、独立した専門職として確立する可能性も十分にあります。

まとめ

AI時代のビジネスにおいて、AIチューナーは様々な業界で変革をもたらす可能性を秘めています。AIチューナーが持つ独自のスキルと視点は、これまでにない新たな価値創造や問題解決のアプローチをもたらすでしょう。組織がAIチューナーをどのように活用し、育成していくかが、AI時代の競争力を大きく左右する要素になると言えます。AIチューナーは、AI技術とビジネスの架け橋として、これからのビジネスの在り方そのものを変えていく存在になるかもしれません。


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