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季語が語る、季語で遊ぶ

俳句を知りたくて、俳句にまつわるエッセイを読んでいます。

2冊目は川上弘美さんの『わたしの好きな季語』。
四季と新年、それぞれから川上さんの好きな季語について、まつわるエピソードと季語の入った俳句が紹介されています。

見開き1エピソードというテンポ感、とても読みやすかったです…。川上さんの小説にも手を出したくなる、心地よいウィットがきいた文章でした。

俳句を読み始めて感じるのは、季語というのはとても雄弁なのだということ。そこに映る暮らしの様子や作者の価値観に想像をめぐらせるのは、とても楽しいです。

エッセイ中では筆者作も含め、魅力的な句がたくさん紹介されていましたが、心に残ったものを一つピックアップさせてください。

鬱の日は 鬱を愉しむ かいつむり
鈴木鷹男

かいつむり(かいつぶり)は、もぐり鳥とも呼ばれるそうです。水に潜った鳥がなかなか上がってこない…とヒヤヒヤした経験…多分私が見たあの鳥はかいつむり。

かいつむり、という季語が、ぷりんとお尻を見せて潜り、別の場所からひょこりと顔を出す姿を語るものなのだなあ。

四季を軸にした共通認識で語る、遊ぶ。素朴で優雅だなあと俳句に思いを馳せるのです。

かいつむりを見て鬱も愉しめるように。17音に日々の移ろいを閉じ込めようと心を砕く時間は、私にとっても暮らしのうんともすんともいかないことからふわりと距離を置く時間になりつつあります。

川上さんの暮らしのエッセイを読んでいると、詠むべきことは身近なあちこちにあるんだと思えました。

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