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名作4Kリマスター祭り

 そんな祭りはないのだが、毎週のように4Kリマスター・レストアされた映画が劇場に掛かるようになった。それもジョン・フォードや黒沢明のような教養レベルではなく、一癖ある作品が多いのも嬉しい。
 そんなワケで、僕も新作と並行して(恥ずかしながら未見だった)過去作を毎週見ている。その中で、特に記憶に残った作品を紹介したい。


少林寺

 野蛮が過ぎる!「復讐を誓った青年が門を敲き、拳法を学ぶ」という筋立ては、『少林寺三十六房』を始め定番だ。だが、動物の扱いが(現代からすれば)雑過ぎる。ヒロインの飼い犬は戯れた5分後には丸焼きにされ、蛙師匠も粥となり、山羊は横っ腹を蹴られる。
 だが裏を返せば、インパクトは凄まじい。超実写だの、『野生の呼び声』だの作ってる企業には見習って欲しいところだ。首絞められたヤギが「べべエ゛エ゛!!」と泣き叫ぶ迫力…今のディズニー映画にあるだろうか?

 カンフー映画お決まりのギャグ成分は随所にあるが、一番笑えたのは冒頭のモノローグ。

(現代で)日本に渡来した少林寺は、今や門下100万人を越えるに至り…

自衛隊と警察合わせたより多いぞ!そういえば『刃牙』曰く、極真空手も国内100万人居るらしい…。なんだ、日本も野蛮な武闘国家だったのか。

サタデー・ナイト・フィーバー

「あれでしょー?トラボルタがキメポーズ取りながら、夜の帝王になる話でしょ?」…くらいのイメージで観た。全然違った。

 この映画、暗いのである。崩壊家庭、将来への不安、若さゆえの無謀…。アメリカン・ニューシネマが暗く陰を落としている。破滅で終わるのではなく、現実に着地して一握りの希望を残す辺りは、前年の『ロッキー』にも通じる。
 サタデーナイトフィーバー=刹那的な享楽を辞め、日曜の朝を迎える=大人になるというラストは素晴らしいが、引っかかるところもある。ブルックリンでペンキ屋に勤めるのは駄目人間で、学士号を取りマンハッタンでホワイトカラーになるのが人生だ…職業観にヤダみがある。その行きつく先が、80年代レーガノミクスなのだが…。

 先ほど『ロッキー』の名を挙げたが、スタローンは続編『ステイン・アライブ』を監督し史上最低の映画続編として名を残した。1のラストでダンスに見切りをつけた筈なのに、「俺がミュージカルスターだ!」って続編にしたら、そりゃな…。

オールドボーイ

 日本原作が、韓国映画になり、ハリウッドリメイクされた。
 漫画『ルーズ戦記 オールドボーイ』は硬質なハードボイルドだが、映画版はとにかくエンタメに徹している。過剰な暴力、シュールでブラックな笑い、耽美な濡れ場、ドラッギーなモンタージュ、蛸の踊り食い…。どれを取っても楽しいが、一つ挙げるなら廊下での長回しファイトだろう。

 僕は、格闘シーンにおける「小休止」描写が大好きだ。『酔拳2』で酒を補給するシーン、『ジョンウィック3』の中ボス戦…。緩急と共に、喧嘩の潮目が変わっていく。
『オールドボーイ』の廊下バトルも、緩急がキマっている。一度は床に叩きつけられるも、気合で立ち上がり金槌を振り抜く。敵は痛みに懲りて遠巻きになるが、主人公だけは闘志を捨てない。
 周りは「もう勘弁してくれ…」となる中、主人公だけは殺る気MAXな暴力映画と言うと『Mr.ノーバディ』も記憶に新しい。

A「ははがおへは!」
B「何て言った?」
A「鼻が折れた!」
C「俺の歯無事か?」
B「酷いよ」
C「クソッたれ!」

4:50~5:05

この下り、殴り合いそのものより正直好きです。

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