【DESTINATION】プロローグ2 奇跡の星
「太陽系 アマノガワ銀河」
それは宇宙誕生から、数億年のときをかけて形成された太陽系が属する銀河。「銀河系」とも呼ばれている。
とある星から夜空を観測すると、星群の一部が川のように輝いて見える姿から、その名がつけられた。
「アマノガワ銀河」は、小惑星や彗星といった恒星同士のぶつかり合い「天体衝突」が絶えず起こる危険地帯から遠く離れた場所にあり、生命の維持に絶対不可欠な化学元素も存在する、神々が創造したとされる領域(通称:ハビタブルゾーン)。
その「アマノガワ銀河」に、ほかの惑星より一際青く美しい輝きを放つ「ティエラ」という星があった。
この星の起源は「銀河系」に太陽が誕生した46億年前にまでさかのぼる。
「太陽誕生」
──現在より46億年前。
銀河の中心部で漂っていた星間雲(水素ガスの塊)が、突如発生した重力に引き寄せられ円盤状に集まり、渦を巻きながら収縮。
巨大な渦は、まわりの微惑星を取り込みながらゆっくりと膨れあがる。そして、激しい熱と大きな圧力を受けた中心部の密度が上昇し、核融合反応が起こった。
その後、集まっていた水素ガスが発火。まばゆい輝きを放ち始める。
こうして、光り輝く生命の源「太陽」が誕生。「太陽」は暗闇の世界だった宇宙に光と温もりをもたらした。
「太陽の構造」
太陽は水素が全体の約75%占め、残りの約25%はヘリウムガス。
中心部では核融合反応(水素がヘリウムに変わる)が常に起きており、高温と光エネルギーを生み出しつづけている。
「太陽の温度」
表面温度は6000℃。鉄が溶ける1500℃の4倍ともなる超高温。中心部は最も温度が高く1600万℃。(太陽から出てくる光の性質を調べて推測)
表面から約2000km上空には「コロナ」と呼ばれる大気の層があり、そこは表面温度を遥かに超える100万℃。表面から離れた「コロナ」の温度がこれほど高くなる理由は、いまだ解明されていない。
「ティエラ誕生」
太陽誕生後、取り込まれずに残っていた小さな星とガス、チリが結びつき、大きくなって直径数kmの「微惑星」を形成。
「微惑星」は、ほかの惑星と衝突・合体を繰り返しながら徐々に巨大化していき、直径1000kmを超える原始惑星にまで成長。その結果、生まれた星こそが「ティエラ」である。
「ティエラの構造」
ティエラの内部は「地殻」「マントル」「外核」「内核」の4つの層から成り立つ。
「地殻」はティエラの表面を覆う岩石でできた最も薄い層。「大陸地殻」と「海洋地殻」に分かれ、それぞれ異なる物質から構成されている。
「マントル」は「地殻」から2900kmの深さまでの層を指す。重く熱をもった岩石でできており、ティエラの体積の約82%を占める。
深さ約400~700kmを境とし「上部マントル」と「下部マントル」に分かれ、上部は摂氏1000℃、下部では5000℃と温度が変化。
「外核」は鉄を主成分とした、ドロドロの液体からできている一方「内核(核)」は固体で、ほぼ純粋な鉄。
「自転と公転」
ティエラは自転と公転をおこない、これによって昼夜や季節の変化が起きる。
「自転」とは、自身の軸を中心に1日(24時間)で1回転する動き。「公転」は、星が太陽のまわりを1年(約365日)かけて1周する動きのこと。
「ティエラの環境」
誕生したばかりのティエラは、現在の姿とは大きく異なり「水」「酸素」「大地」は存在せず、表面は深さ数百kmにもおよぶマグマの海が果てしなく広がるだけの世界。
生物が生きていける環境ではなかった。
そこに巨大天体が衝突。
大きな衝撃を受けたマグマは、水蒸気となって大気中に拡散。時間の経過とともに冷めていったマグマの海は、しだいに固まりだす。
それと同時に気温も下がり、大気中にあった大量の水蒸気が大雨に変わって降り注ぐ。地表は冷やされ硬い岩石となり、雨が溜まって海ができた。
そして、海中で出現した「ある生物」がティエラの環境を大きく変化させていく。
「環境の変化」
今から約40億年前、深海底にある「熱水噴出孔(熱水が吹き出る穴)」付近で「シアノバクテリア」という微生物(細菌の一種)が誕生。
ほとんど無酸素状態だったティエラは、この「シアノバクテリア」がおこなう光合成により、大気中の酸素濃度が増加。
酸素原子は約10~50km上空の成層圏に集まって「オゾン層」をつくり、太陽から降り注ぐ有害線(紫外線)を遮断した。
しかし、宇宙には紫外線以外にも、生物にとって有害なものがある。それは宇宙空間を飛び交う高エネルギーの放射線(宇宙線)。
主成分は陽子で、ほかにも「アルファ粒子」「リチウム」「ベリリウム」「ホウ素」「鉄」などの原子核が含まれ、これは常時ティエラに飛来している。
この放射線をじかに浴びると、体をつくるタンパク質が破壊され、ほとんどの生物は息絶えてしまう。
生命にとって致命的となる、この大きな問題を解決したのはティエラ自身だった。まるで、わが子を守る母親のように。
「ティエラの盾」
先述のとおり、この星の中心部には、主に鉄でできた個体の部分「内核」と、そのまわりを覆う、ドロドロに溶けて液体になった鉄の部分「外核」がある。
「内核」と「外核」のふたつが「ティエラ」の自転によって回転、対流することにより強力な磁場が発生。そのため「ティエラ」は巨大な磁石となっている。
それは方位磁石が北極をS極、南極をN極と示すことからも明らか。
この巨大な磁石が生んだ「磁場」が、宇宙線や太陽風を避ける「盾」の役割を果たし「ティエラ」は、生命誕生への条件をそろえた。
「位置関係」
太陽系にある惑星は「ティエラ」を含め「メルケル」「ヴェネス」「マルス」「ジュピテル」「サティウス」「ウラネス」「ネプチュール」の8つ。
それ以外にも彗星や小惑星など、さまざまな天体と61個の衛星、約2000億個の恒星が存在する。
無数にある星のなかのひとつにすぎないティエラが「奇跡の星」と呼ばれる由縁。それは、オゾン層と強力な磁場だけではなく、ほかの惑星との位置(距離)が大きく関係。
太陽とティエラの距離は推定1億5000万Km。
この距離のおかげで、星の温度は生命にとって理想的なものに維持されている。
円軌道もほぼ完璧で、今ある軌道から5%太陽寄りだったならば、液体は蒸発し灼熱の星に、20%離れていれば、氷で埋めつくされた極寒の星となっていた。
太陽のみならず、月との距離(約38万Km)も絶妙で、その潮汐力は、ティエラの自転速度を遅くする作用をもつ。
月との距離がわずかでも離れ、その影響を受けられなければ、1日8時間の猛烈なスピードで回転。
地表と海は大荒れの状態となり、万にひとつの確率で生命が誕生できたとしても進化は望めず、海の満潮・干潮以前に「命の惑星」ではなかっただろう。
「最終的なティエラの姿」
表面を約71%の水で覆い、残り29%が陸地。大気は窒素と酸素を主成分とし、強力な磁場のベールによって生命を守り慈しむ「母なる星」。
【DESTINATION】プロローグ2 奇跡の星 END
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