たぶん幸せなおじさんライフ
夜の新橋の居酒屋は、まだ19時過ぎだというのに、すっかり出来上がったサラリーマンのおじさんたちでごった返し彼らの熱気でむんむんとしていた。
それから約4時間後、気づいたら、お店には僕たちだけしかいなかった。
あの喧騒が嘘みたいにしんと静まり返った店内で僕らは速やかに会計を済ませて、なんだか申し訳ないような気持ちになりながらそそくさと退散した。
外に出ると、2月らしい寒風が容赦なく僕らの皮膚を突き刺し、僕はぶるぶると大袈裟に体を揺らしてみる。
そして、駅に向かって歩きながら、
「今度は暖かくなった頃に飲もうか?」
「いいですね。その頃には彼女の愚痴ももっと具体的になっているはずだし」
「そうなんですか?今は全然ピンと来ないけどなあ」
そんな他愛ない話を交わした後、銀座線に降りる階段の前で、会社も違い一回り以上も年の離れたその友人二人に
「じゃあ、またね〜!」
と別れを告げる。
途端にひとり反省会が始まる。
今回は訳あって僕だけシラフだったんだけど、話した内容は相変わらずで、年長者のくせにいわゆる教訓めいた話やためになる話は全く出来なかった。
それでも、そんな僕のアチャラカでドタバタな自分語りを身を乗り出して面白がっていた二人の笑顔が自然と目に思い浮かんだから、今回も反省はほどほどに、また
「ま、いいか!」
と自分を甘やかした。
その瞬間、ラインの通知が来た。
別の年下の友人からの
「お店、予約できました!」
という連絡だった。
「なんだかんだ、割と幸せもんなんだろうな」
と思った。
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