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僕らに欠かせない鉄のお話

<はじめに>
この記事は、ゆうゆうさんの「血液の話」という記事にインスパイアされて書いたものです。彼が血液の話をしてくれたので、じゃあ僕はその原料となる鉄のお話をしてみようかしら、と思い立ったという訳・・・。

じゃあ、始めますね!

1.カラダにおける鉄の役割

「僕の血は鉄の味がする・・・。」

これは、卓球漫画の傑作、松本大洋「ピンポン」の主人公スマイルが放った一言だ。

ちなみに彼は、いつも無表情で感情を表に出せないロボットみたいな自分のことを自嘲する意味合いでこのセリフを呟いていた。

しかし、実は鉄味の血の持ち主は何も彼だけではなくて、僕ら人間はみんな等しくそうなのである。

なぜかというと、それはもちろん

人間の血液の中には鉄が含まれているからだ。

というか、なんなら血が赤いのだって、あれは鉄(ヘム鉄)の色だったりするし。そもそも、鉄がなければ、身体中に酸素が行き渡らなくなって死んでしまうくらい、鉄って実は僕ら人間にとって、とても大切な憎いアンチクショウなのだ。

そう、体の中の鉄はグロビンというたんぱく質とくっついて、ヘモグロビン(ちなみこのヘモは鉄を意味している)となり、そのヘモグロビンは、すぐ酸素とくっつきたがる鉄の性質を活かして酸素を取り込んだ状態で血液中を循環して、酸素を全身に運ぶトラック野郎の役割を果たしているのだ。

という感じなので、いわゆる(鉄欠乏性の)貧血というのは、以下のようなメカニズムで起こる。

(何らかの理由で)体内の鉄分が足りなくなる

酸素を運ぶヘモグロビンが足りなくなる

全身の細胞に酸素が行きわたらなくなる

めまい、頭痛、息切れなどの貧血の症状があらわれる

ちなみに女性の方に貧血の人が多いのは、体内の鉄分が月経血で失われるからである。

このように男性に比べて元々、鉄の損失量が多いのに加えて、日本の食事にはもともと鉄分が少ないという事情もあり、日本の女性は、何も考えずに普通の食事をしていると、結果的に鉄分不足に陥ってしまっているという人が多い(ちなみに、ヘルシー志向が進む米国では、昔に比べて鉄欠乏性貧血の女性が増加しているという皮肉な現象も起きているようである)。

例えば、下表を見れば、30代~50代の女性の鉄分の摂取量は、国(厚生労働省)が定めた鉄分の推奨量に比べておおよそ4mg/日ぐらい足りてないことが分かる。ちなみに、これはあくまで平均値なので、食事制限ダイエットやヴィーガン食を実践しているような女性はさらに不足しているはずである。で、そういう人は、1日分の推奨量である10mg前後を補給したっていいかもしれない。

じゃあ、この4mg(~10mg)を何で補えばいいか、という話を次にしたい。

2. どうやって鉄分を補給すればいいの?

鉄分を補うための一番自然なやり方は、毎日の食事にレバーや小松菜などの鉄分の多い食品を加えることだけど、それって現実的に考えると、レシピの幅や味のバリエーションを制限させるから、やはりなかなか難しいような気がする。

だったら、スーパーやドラックストアやコンビニなどで売られている鉄分を強化した食品やサプリメントを試してみる価値はあると思う。

で、試しに「鉄、サプリメント」等の検索ワードでググってみると、間違いなく、

ヘム鉄、非ヘム鉄

というワードに出くわすだろう(ちなみに、第三の鉄分と話題?のフェリチン鉄についてはあえて触れません。触れない理由については、どうかお察しください(笑))

で、この二種類の鉄を簡単に説明すると、ヘム鉄はレバーなどの動物性食品に含まれている鉄、非ヘム鉄は野菜や大豆などの植物性食品に含まれている鉄のことである。

そして、両者の「栄養素」としての一番重要な違いは、その(小腸での)吸収率の違いである。

なんとなく想像がつくかもしれないけれど、動物由来のヘム鉄の方が植物由来の非ヘム鉄よりも吸収性が高い。吸収率が非ヘム鉄の3倍以上だった、という研究報告もある(ヘム鉄50%、非ヘム鉄15% 出典:Young MF, Griffin I, Pressman E, et al./ J Nutr 2010; 140: 2162─6)。

ヘム鉄には、その他にも、ポルフィリンという成分で鉄の表面がコーティングされているおかげで、冒頭の「ピンポン」のスマイルが感じたようないわゆる鉄特有の味がしにくかったり、胃壁を荒らしにくい=胃がムカムカしにくい等のメリットもある。

じゃあ、ヘム鉄を配合したサプリメントを摂ればいいんだね!

という感想に間違いなくなると思うけど、残念ながら、事はそれほど単純ではない。
というのも、鉄の種類の選択に当たってはちょっとした注意点があるからだ。
そしてこれは意外と知られていない情報だとも思うので、今からその注意点について説明したい。

まずは先ほどの表を再掲するので、こちらを改めて見てほしい。

ここには厚生労働省が算出した「①(1日当たりの鉄の摂取)推奨量(mg)」の値(10.5~11.0mg)が記載されている。
しかし、この推奨している鉄分が果たしてヘム鉄なのか非ヘム鉄なのかどうかは分からない。実際、出典元の資料を見ても鉄の種類については何も触れていなかった。しかし、別の補足資料に目を通したところ、以下のような記載があった。

日本人の鉄の主な給源が植物性食品であり、非ヘム鉄の摂取量が多いことを考慮して、FAO/WHO(国際連合食糧農業機関/世界保健機構)が採用している吸収率である15%を、妊娠女性を除くすべての年齢区分に適用した。

厚生労働省HP添付資料より抜粋

つまり、厚生労働省による鉄分の摂取推奨量は、あくまでヘム鉄ではなく非ヘム鉄の吸収率に基づいて算出されていることが分かる。

さらに、表の右端には、耐用上限量の数値(40mg)を記載した。耐用上限量とは、この量を超えると健康に不具合が生じるリスクがある摂取量のことである。

一方で、これはさっき調べたんだけど、市販されているヘム鉄サプリメントの1日当たりの摂取目安量は、(鉄分として)10mgのものが多い。先ほど説明した通り、ヘム鉄の吸収率は非ヘム鉄の約3倍だから、日常の食事に加えてヘム鉄10㎎のサプリメントを摂取した場合、非ヘム鉄換算した鉄分の総摂取量は37mg/日に達する。これは先ほどの耐用上限量すれすれの量に当たる。

やべえじゃん!

ただし、ヘム鉄は非ヘム鉄のような大量摂取に伴う便秘や胃腸症状などの副作用は起きにくいこと、鉄の大量摂取による疾患(バンツー鉄沈着症)は、実際のところ鉄の摂取量が100mg/日を超えた場合に発生すると考えられていることから、ヘム鉄を毎日10mg摂ったからと言って、直ちに健康への被害が起きるという訳でなさそうだ。
しかし、過剰な鉄の摂取は内臓に負担をかけるのは間違いないので、人並の鉄分不足量の女性が栄養補給の目的で摂るには、ヘム鉄はちとオーバースペックかもしれない。

一方で、貧血など重い自覚症状に悩まされている女性や、鉄分の必要量が増している妊婦の方は、効率的に鉄を補給できるヘム鉄を上手に取り入れるのはアリだと思う(ただし、(実質的な)上限量を超えないように意識しながら、ね。←よく分からなければ相談に乗りますよ)

3.おすすめの非ヘム鉄配合食品について

というわけで、重い自覚症状もない一般の女性が鉄分を補給したい場合は、安価で手に入りやすい非ヘム鉄配合のサプリメントや食品で充分だと思う。

そして、個人的には、鉄分サプリメントよりも鉄分を強化した食品の方をお勧めしたい。

というのも、自分で飲む量を調整できるサプリメントの場合、ついつい量を摂り過ぎになりがちだからだ(これは鉄分に限らず、栄養サプリメント全般でやりがちな現象である)。

まあ、たとえ摂りすぎたとしても、ヘム鉄ほど吸収率が高くはない非ヘム鉄には耐用上限量を超えてしまうリスクは極めて低いけれど、それでも一度にたくさん摂ると胃が荒れてムカムカしてしまう可能性はある。

その点、鉄分強化食品の多くは1商品(もしくは1回)あたりの鉄配合量が3~7mg程度(1日分の半分量、もしくは1日分の量に相当)だから、1日何本も狂ったように飲まなければ、本当に不足分の鉄分だけを美味しく手軽に補うことができる。

ちなみに、スーパーやコンビニに行くと、ジュース、ヨーグルト、チーズ、ゼリー、シリアルバーなどいろんな食品に鉄分が強化されているのが分かるだろう。

正直、鉄分補給食としての栄養価値はどれもほぼ同じだから、あとは本当に自分の好みで選んでもらえればよいかな、と思う。

ちなみに、(あくまで個人的な意見ですが)僕がお勧めなのは、この商品かな(↓)。やっぱりあのプルーン風味が美味しいし、一緒にヨーグルトの健康効果も期待できるしね!

雪印メグミルク㈱HPより

あと、実はプルーンには鉄分は微量しか含まれていないのに、なぜか鉄が多く含まれていると勘違いしている日本人が多いのは、どうやらこの商品の影響らしい。





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