深夜高速
「なんかエロいわね」
と彼女は言った。
その一言は、ロングドライブ用に僕が持ってきたカセットテープに対するものだった。
思いがけない感想に肩を落とす僕のことなど誰の眼中にも入ってない様子で、運転席に座る先輩は手慣れた感じで次のカセットテープをカーステレオに挿入した。
EZ to DANCE!
車中の微妙な空気が一瞬で変わった。
初めて工場の若手有志で出かけたスキー旅行。
スキーなんか一度もやったことがなかったけど、一番若手の僕にもちろん拒否権なんかなかった。
そんな時代の話である。
車窓を高速で通り過ぎる深夜の高速道路の街灯をぼんやり眺めながら、
簡単には踊れない自分のこと
「なんだかなあ…」
と思いながら、ずっと悶々としていた。
そして、翌日
「ひゃっほー!」
と叫びながら、まっさらな白銀のゲレンデで華麗なシュプールを描いている自分がいた。
どうやら僕にはスキーの才能があったらしい。
確かに
スベる
ことに関しては自分の専売特許と言っていいくらい
得意な性質(タチ)なのだった。
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