いつも見守ってくれて、ありがとう
今回の海釣りは大漁だったけど、その分、クタクタに疲れ果てた息子と僕が、ほうほうの体でようやく家の前の私道まで辿り着くと、アパートの大家さんと妹さんがそんな僕らを見つけて駆けつけてきた。
どうやら来月、僕の転勤でアパートを引っ越すことが彼女たちにも連絡が入ったらしい。
しかし、2人ともこちらが思わず恐縮してしまうくらい、僕たちがいなくなることをとても嘆いていて、ちょっと驚いてしまった。
しかも、その理由が、息子のことが大好きで可愛くて仕方なくて、彼がいなくなるとさみしい、というものだったから尚更だ。
彼女たちは、
「今どきこんな礼儀正しい子いないわ」
とか
「とても優しくて利発で私たちファンだったのよ」
とか
「(アパートの前の)レモンの木に蝶々の幼虫がいることを教えてくれてありがとう」
とか
とにかく彼のことを誉めちぎっていた。
挙句の果てに、
「きっとお父さんとお母さんの育て方がよかったのね」
と言われたときにはさすがに苦笑いしてしまったけど。
でも、僕はその上品なマダムといった風情の2人の話を聴きながら、思わず目頭が熱くなるのを感じた。
なぜなら、アパートの隣に住んでいて、毎日、家の前の素敵な花壇を手入れしている彼女たちが、息子がほとんど学校に行けてない事実を知らないはずはないからだ。
本来なら、
「あの子(家族)、大丈夫かしら?」
と思われても仕方ないはずなのに。
でも、僕が知らないところで、きっと数は少なかったとしても、息子と大家さんたちは交流を重ねていて、そのときの彼の振る舞いだけで、2人は、彼を単なる不登校児としてではなく、ひとりの男の子としてずっと見ていてくれていたのだろう。
それもこんなにも優しいまなざしで…。
そういえば、僕と妻が仕事でひとりでお留守番中に、近所のケーキ屋さんまで自分のバースデーケーキを取りに行ったとき、うっかり鍵を忘れてオートロックのアパートに入れずに彼が泣きそうになっていると、大家さんが現れて、鍵を開けてくれた、というエピソードを思い出して、僕は彼女にお礼を言った。
結局、わずか15ヶ月しかいなかった。
でも、目を瞑ると思わず微笑んでしまうような思い出がたくさん詰まっている
本当に狭いながらも楽しい我が家だったなあ。
でも、それはきっとそんな僕たちのことをこんな風に優しく見守ってくれる人たちがそばにいてくれたおかげでもあるのだろう。
本当に今までお世話になり、
ありがとうございました!
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