教えてくれるひと
昨日は、家族3人で自転車で近所の植物園までツーリングしたのだった。
でも、近所のつもりが実は片道1時間近い道のりで、そのせいか今、腰を悪くしてなかなか布団から出られない状態だったりする(笑)
まあ、それはともかく、植物園などという、それこそディズニーランドやUSJなどとは比べものにならないくらい地味な場所が思いがけずとても楽しかったのだった。
それは多分出だしがよかったことも大きかったのかもしれない。
その植物園を入ってすぐのところに、この大きな公園に実際に落ちている木ノ実や木の種や葉っぱや松ぼっくりがたくさん陳列されている場所があって、そこでボランティアのおばさまたちが熱心にそれらについて説明してくれたのだ。
どれも初めて聞く話ばかりでとても勉強になったし、何より、たぶんうちの親とたいして年が変わらないロマンスグレーのおばさまがとても元気に、いきいきと自分の知識を惜しげもなく披露する姿が素敵だった。
そして、彼女のおかげで、今回、僕たちに、あるミッションが出来たのも大きい。
それにしても秋なのに日差しが刺すように痛い。たびたび目を細めながら、ダリアの庭やバラ園やらをぶらぶらする。
しかし、キレイな花は、確かにキレイですごいんだけど、なぜかあんまりノリノリにはなれないのはこの家族3人の共通点だよな、と改めて思った(笑)
だから、誰彼ともなく、
「やはり僕らは花より団子だね」
と言い出して、植物園名物のバラ味のソフトクリームを買って、小休止することにした。
そして、ピンク色のソフトクリームをペロペロしながら、その屋根のついたテラスみたいな場所から公園に来ている人たちをぐるっと見渡すと、若いカップルや僕らみたいな子供連れの家族は意外と少なくて、こじんまりとしたおじいさんやおばあさんの姿が多かった。
そして、彼、彼女たちは、きっとこの自然溢れる場所で、今は亡きうさぎおいし鹿の山に思いを馳せてるのだ、なんて勝手に妄想をしてたら、自然と心がポカポカ暖かくなってきた。
それにしても、いつもはゲームばかりのそーゆー意味ではまぎれもなく現代っ子なはずの息子も、本当にさっきから自然とガチで戯れていて楽しくて仕方なさそうだ。
これは動物園のときも感じたことだけど、どうしてこの子は、こんなにも自然、というか、この世に生きとし生けるあらゆるものに対して、こんなにも好奇心旺盛なんだろう。
どうしてこんなにも無邪気に、この世界を愛することができるのだろう。
や、やべえ、ちょっと感傷的になってきたから、お散歩を再開しよう。
だって、今日の僕らはあの素敵なおばさまから託された大事なミッションをコンプリートしなければならないのだから。
枯れ葉や樹の実がところどころに落ちている小道を僕らは目的地を目指して歩く。
それは水辺の近くにある、という唯一のヒントだけを頼りにね。
「えっ?なんか匂わない?」
と妻が最初に気づく。
うん、確かに、ここにきて、急に、なんか匂い立つ感じがしてきたぞ。
すかさず息子が足元に落ちている茶色く乾燥してる葉っぱを手ですくってかぎ始める。
そして、
「これだよ、これっ!」
と興奮気味で話し始める。
僕は確証を得るために、近くの木を見る。
そしたら、僕らが目指していた木の名前の看板がかかっていた。
「よし!ミッションコンプリートた!」
僕ら3人は肩を抱き合って喜び合う。
そして、改めてその落ち葉の絨毯から、激しく匂い立つキャラメルフレーバーを思いっきり鼻の穴から吸い込んだ。
そう、あのボランティアのおばさまから僕らに託されたミッションというのは、
「桂という木の葉っぱはキャラメルの匂いがするからぜひ見つけてみてね」
というものだったのだ。
その後も、帰りたがらない息子に付きあって2時間くらい公園をさまよって(笑)、帰る頃には青にオレンジの差し色が入った秋空の下、自転車で家路を急いだ。
下り坂を、風を切ってとても楽しそうに下る息子の背中を見ていると、
「ああ、自転車で坂道下るのってだけなのに、なんでこんなに楽しいんだろうね」
という考えが頭に浮かんだ。
というか、改めて彼から教わった
自然にそんなふうに思った。
そう、知識がある人もない人も、老いも若きも、みんな本当にいろんな大切なことを僕に教えてくれる。
「ありがとう」
なんとなくそんな言葉を口にして、僕は自転車のハンドルをギュッと握った。
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