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死後のからだ

どこか深い森で自殺をしようと思う。
崖から飛び降りてもいいし、飢えてのたれ死んでもいいかもしれない。できるだけ苦しみたくないとか痛くない方がいいとか、もうそんなこと言ってられないくらいに人生に絶望している。

部屋を片付けて、私が生きた痕跡を綺麗に消してからがいい。積み上がった未読の本たちをどうするか、ちょっとだけ迷うかもしれない。

そこで考える。
死んだ後のこと。

死後の世界のことではない。天国も地獄も、あってもなくてもどちらでも構わない。どうせそこにも居場所はない。
私が気になるのは、魂のなくなった私のからだについてだ。

死体になった私は、それを人に見つけて欲しいのか、欲しくないのか、わからない。

死体なんて見つけた日にはトラウマ確定だ。おそらく腐っているしひどく臭うだろう。森には野鳥や野犬がいるだろうし、啄ばまれてしまえば人の形を保っているかどうかもあやしい。

醜い自分なら、見つけて欲しくないかもしれない。
身元がわかって、両親に知らされるだけならばまだしも、ニュースになったりしたらすごく恥ずかしい。顔見知り程度の同級生たちが「あ、この人知ってる」とか「あいつ死んだんだ」とか、私を思い出すきっかけになったり話のタネになったりすることを思うと、なんだか死んだ後も報われないかもなぁと思う。

では、誰にも見つけられないままの方がいいのか。

なんだかそれでは寂しい気もするし、死んだあとなんて、もう全部、どうでもいいかもしれない。

自殺したら周りに迷惑がかかることは目に見えているし、森や海や自室でさえ、私の死のせいで汚染されるのは申し訳ない。どうすればいいのか、私はずっと、わからないでいる。

わからないので、考えるのをやめて布団にはいる。死について考えるのは、また今度。今はただ、おやすみ。

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