物流という基礎インフラを軽視した日本社会

『百貨店協会、納品時間繰り下げへ 24年問題に備え』

 物流業界における2024年問題とは、働き方改革関連法が同年4月1日から適用されることから発生する、深刻なドライバー不足を意味する。2019年に同法案が施行された際、自動車運転業界において急に適用することが、実情と極めて乖離していたため、5年間の猶予が与えられることとなったが、いよいよその起源が来年に迫ることとなった。

 同問題の根源的な原因は、政府による産業政策の失敗であり、業界の責任では断じてない。1990年に行われた物流2法が施行されて以来、トラック業界では過当競争が発生、ドライバーの待遇は徐々に低下することとなった。こうした待遇が改善されないまま、重労働・低賃金を放置してきたのが、日本政府であり、日本社会なのだ。あたりまえが、あたりまえでなくなることに直面しなくてなならなくなった。翌日配送は相応の対価が必要だろうし、ラストワンマイルの配送すら難しくなるかもしれない。

 物流が基礎的なインフラであるという認識を欠いたことで、市場原理で競争させた結果が、このありまさである。金さえ出せば何でも手に入るかのように錯覚している軽佻浮薄な現代日本人には、もはや真に大事にすべきものを見る能力はないのだろう。

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