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ヨウシュヤマゴボウみっけ

 私は病院に勤めている。長期間入院している患者様も多く、気分転換のため、車椅子で一緒に外へと散歩に行くことがある。外といっても、外来用の駐車場周辺をぐるぐるするだけなのだが、いつも天井ばかり見ている患者様にとっては、良い気分転換になるようだ。

 今日は、女性の患者様と外に出た。秋ならば、キンモクセイ、冬ならばサザンカの花が咲く駐車場だが、今の季節に咲いている花はない。何かないかなあと、患者様と2人で植え込みを覗いていた。ブドウのような、黄緑色の実がなった植物を見つけた。茎はきれいなピンク色で、白い小さな花が咲いている部分もある。これは、ヨウシュヤマゴボウだ。まだ実が熟していないが、かわいらしい姿だ。熟すと、ブルーベリーのような色のツヤツヤした実になる。

「ヨウシュヤマゴボウですね。もう少ししたら、実が熟して、黒っぽくなりますよ。小さい頃、色水作って遊びましたか?きれいなピンク色の色水ができますよ。」
患者様に尋ねると、
「遊んだねえ。懐かしい。手とか服につくと、とれないのよねえ。」

 ニコニコとして、ヨウシュヤマゴボウに手を伸ばす患者様に、嬉しくなる。私の倍ほどの年齢の患者様と、同じ話題で話ができることが楽しい。患者様も同じようなことを思ったらしく、
「同じようなことして遊んだのね。」
と、私の顔を見てクスクス笑った。


 ふた枝、ハサミで切って持ち帰り、小さな花瓶にいれ、みんなの目につくところに飾った。実が熟したら、一緒に色水を作って、染め物をしても楽しいかもしれない。和紙小さくを折りたたんで染めると、パターン模様のようになりきれいだ。その頃に、もう一度散歩に誘ってみようと思う。

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