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『ガンジス河でバタフライ たかのてるこ』


スマホがなかった時代、20歳の女の子、インド一人旅。
本書は2000年刊行なので、スマホの登場以降に当時を振り返っているのではなく、当然ながらスマホがない事が当然の価値観で書かれています。

私自身、今年で38歳なので、物心ついた頃からスマホがありましたという訳でもなく、もちろんスマホがなかった時代を知っている訳ですが、これだけ日常生活で、存在が当たり前になっていると、昔はどうしてたんだっけ?と思い出せなくなりそうになります。
道が分からない時、電車の時刻を調べる時、レストランに行きたい時...

著者は己の勘と口コミ(もちろん、インターネット上のものではなく、隣にいる人に直接聞く)のみで、どんどん旅を進めていきます。

インドでは、街中が神様グッズで溢れているという描写を見て、大学生の時、私が初めて行った海外旅行、タイの事を思い出しました。
タイは街中が黄色の王様グッズで溢れていて、なぜか、人々が当たり前のようにペットボトルにストローをさして飲んでいて、あぁーここは本当に外国なんだ!!と、とても興奮しました。
なぜペットボトルにわざわざストローをさすのか結局分からないままでしたが、タイで訪れた観光名所よりも、そういう人々の文化や習慣が1番心に残っています。

本書は、有名な場所を巡る旅紀行ではなく、そこに暮らす『人々』にスポットを当て、そんな旅を通して、時には死の恐怖すら感じる中で、著者が『生きる』ということを、ありありと実感している事が伝わってきます。

著者が時折、触れる死生観に、この人も大切な人を亡くしたのだろうか?それともインドへの1人旅でこのような思いを抱くようになったのだろうか?と感じていました。
あとがきを読むと、大切な友人を亡くした後に、執筆をした事が書かれていました。

インドの人々の『今日、今この瞬間』を生き切るような暮らし方、著者が『人』と出会う事で感じる『生きる』ことの意味。
20年以上前の作品でありながら、少しも色褪せていないエッセイだと感じました。

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