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ワクチン接種が超過死亡数増加の原因ではない理由

先日、AbemaPrimeに出演した神谷宗幣氏が「2021年~2022年の日本の超過死亡数増加の要因はワクチン接種の有無しかない」という旨の発言を行い、それに対して共演者の宇佐美典也氏が「それ以外にも多くの変化が世の中にはあった」と反論する一幕がありました。

当該の動画

この件に関して、ネット上の私の可視範囲では圧倒的に神谷氏を擁護する意見の方が多く見受けられました。そこで私は「超過死亡数増加の原因、ワクチン接種説」への反論を試みようと思います。

まずこの説に関して厚生労働省は「2021年の全死亡超過死亡の発生と新型コロナワクチン接種数の関係」という反論を公表しています。

資料のグラフによると超過死亡数増加はワクチン接種数増加に先立って発生しており、かつ第4波の発生と同期しています。またワクチン接種ピーク後の第5波(デルタ株)発生時には超過死亡数はやや増加しているものの、概ね第4波のときほどは増加していません。

青い縦線は超過死亡発生数のピークに合わせて私が入れたものです。
青い縦線は超過死亡発生数のピークに合わせて私が入れたものです。

上記の事実から「超過死亡数増加の原因はワクチン接種ではなくコロナ感染である。また、ワクチン接種は超過死亡数の増加を抑制した」という仮説を導くことができます。

この仮説を補強する根拠はまだあります。2005年のインフルエンザによる死亡者数が1,818人であるのに対して、2004~05年シーズンの超過死亡数は推計15,100人(8.3倍)となっています。また、1999年のインフルエンザ死亡者数が1,382人であるのに対して、1998~99年シーズンの超過死亡数は3,5000人超(25倍)となっています。(出典:社会実情データ図録「インフルエンザによる死亡数の推移」

病死者数と超過死亡数の乖離が起きる原因は、通院せずに亡くなった人や、インフルで持病が悪化するなどして間接的に亡くなった人は直接的なインフル死として認知されないため、病死者数には数えられず超過死亡数にのみ加算されるためです。コロナ禍で同じことが起きているとしても不思議ではありません。

次に日本におけるコロナ死亡者数超過死亡数の乖離率を見てみましょう。
2020年
 コロナ死亡者数3,305人
 超過死亡数(神谷説)-8.000人(-2.4倍)
2021年(デルタ株流行年)
 コロナ死亡者数15,080名
 超過死亡数(神谷説)70,000人(4.6倍)
2022年1月~4月(オミクロン株流行年)
 コロナ死亡者数11,205名
 超過死亡数(神谷説)40,000人(3.5倍)
インフル流行年の乖離率と比較してもあり得る数値です。

このデータの2020年の超過死亡数が減少している点に気付くと思います。その理由は、2020年のコロナ感染者数が他の年に比べてだいぶ少なかったことと、新型コロナウイルス対策で他の感染症が流行せず、コロナ以外の肺炎やインフルエンザの死亡数が大きく減少したことが重なったためと考えられます。

【関連資料】
日本経済新聞Web版
年間死亡数11年ぶり減 コロナ対策で感染症激減

以下のグラフは感染者数、入院患者数、死亡者数の推移を表したものです。超過死亡数の少ない2020年は感染者数、死亡者数ともに少なく、超過死亡数が急増した2021年、2022年は感染者数、死亡者数ともに急増していることが分かると思います。

感染者数の推移
入院患者数の推移
死亡者数の推移

また超過死亡の死因のうち、循環器系疾患と老衰が増加している点についても仮説を立てることができます。一つは、コロナの後遺症である心筋障害を患い、それが原因で亡くなった人が循環器系疾患に分類された可能性です。

【関連資料】
東京八重洲クリニック公式サイト
第4回:新型コロナウイルス感染症患者の65%に心筋障害がみとめられた
北海道循環器病院公式サイト
新型コロナウイルス心臓後遺症専門外来について
NHK公式サイト
コロナ感染 “退院後に心臓の機能低下などの症状も” 専門学会

二つは、コロナ回復後にコロナ感染が原因で持病が悪化するも院内感染を怖れて通院せずに自宅で亡くなった人が老衰に分類された可能性です。コロナ死者の32%は直接の死因がコロナではない事と、感染者数が死亡者数よりもだいぶ多い事を考えれば十分にあり得ます。

また、通院せずに自宅で亡くなった高齢のコロナ患者の場合も、PCR検査をしない限りは病名が付かないので老衰に分類されるはずです。先のグラフでは、第5波と比較した第6波の入院患者数は微増に留まっている一方で、死亡者数は急増しています。これは通院せずに亡くなる人が増えていることを示唆している可能性があります。

【関連資料】
DIAMOND online
コロナ禍でも「老衰死」が増え続ける理由
読売新聞オンライン
第6波の「コロナ死者」、3割の死因がコロナ以外…高齢者の持病悪化や老衰目立つ

インドでもワクチンの普及以前に大規模な乖離が起きていた可能性があります。世界開発センターによると、インドでは新型コロナの流行が始まって以降、2021年6月までの超過死亡数が最大490万人に達している可能性があります。しかし、インドの新型コロナによる死者は、公式統計では41万4000人以上とされています。

6月末日のインドのワクチン接種率は19.7%であるにも関わらず、すでにこの時点で11倍の乖離が起きています。原因は日本とは異なるかもしれませんが、医療逼迫・貧困・情報不足により適切な医療を受けられなかった人々(コロナ以外の疾患を含む)がコロナ死として認知されないまま超過死亡数を押し上げたのであろうと考えられます。

【関連資料】
ロイター
インドの超過死亡、コロナ流行以降で最大490万人=調査

以上の根拠により、超過死亡数増加の原因はワクチン接種ではないと推定できます。

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